N6話 序章END

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「お集まりいただき、ありがとうございます」

そう挨拶する神父の前には、店主と村人を含む数十人のNPCの姿がある。

「ところで神父さまは何が目的で、俺らを集めたんですか?」

「単刀直入に言いましょう。

───このゲームを救うためです」

まるで正義のヒーローと言わんばかりのセリフに、みんな口をあんぐり開けたままだった。


「直球すぎましたかね。皆さんも薄々気づいているでしょう」

「あれだ!闘技場のやつだろ」

店主がひらめいたと目を見開いた。神父はふふと笑いながら、

「その通り。流石ですね」

店主はご満悦そうにあご髭をなでた。


「実はあのバグ、闘技場の件が初めてではないのです。私自身、サラクエのベータテストの頃にバグに遭遇してから、原因を探してきました。そして、見つけたのです!」


「ここからは私が説明しよう」

突然の声の主は、創造主ゲームマスターだった。

「バグの発端は、違法ツールによるデータ改ざんだ。レベルを上限まで上げるものやモンスターを一撃で倒すものなどだったのだが」


「結果としてゲームバランスの崩壊を招いたのです」

神父がしみじみ告げる。聞いているNPCたちにも、見当がつくことがあるようで少しざわついた。

「モンスターのパラメータ異常だけなら、私の能力アップデートで済んだのだがな。残念ながら、このゲームはバグに侵され過ぎている。ゆえに、君たちに頼みたいのだ」



「わかったよ、天の声さん!」

「天の声よ、俺も参加するぜ!」

至るところから参加の声があがる。創造主ゲームマスターは“天の声”呼ばわりが気になったが、黙っておくことにした。


「一つだけ注意点がある。私のその上、製作会社からお達しが来ていてな。1ヶ月後に大掃除大型メンテナンスが来るそうだ。」

ここで店主が珍しくビビりながら、

「それってデータを一回消してから作り直すことだろ。そんなことしたら、俺らは」

「はい、消えます」

そう告げた神父はスクリーンを出してきた。スクリーンには、“パッチの適用がゲーム内NPCの消滅を意味していること”、“適用によってユーザーのデータにも影響が出ること”が映されている。


「ユーザー様のために命を捧げる覚悟のある方は協力をお願いします。メンテナンス時に本社に戻っていれば消えることはありませんので」

どよめくNPCたち。


すかさず、創造主ゲームマスターが乱入してきた。

「神父は説明が下手だな。わかりやすく言うとこういうことだ


───ユーザーのデータ保護を目的にバグの除去をする。この時、君たちはゲームに介入するため改造ツールと同じ扱いになってしまう。バグの全除去完了し次第、改造ツールの読みこみで元のNPC扱いに戻す。

しかし、1ヶ月以内に全てを除去出来なければ、大掃除大型メンテナンスが始まり、君たちは消える」


明かさられた現実に参加を取り下げる人がちらほらと出てくる。そんな中、店主と村人は動揺するも、その場に居座る覚悟が出来ているようであった。その場にいるNPCの数が十人弱になってきた頃、店主が口を開く。


「他に協力者はいないのか?」

神父は静かにスクリーンの映像を変えた。

「こちらになります。あくまで候補ですけれど」

5人のユーザー名が上がっている。その中には“タロー”の名があった。



序章END


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