ここは<人材派遣会社NPCコーポレーション>

この会社は社員たちをNPCとして各ゲームに派遣することが主な業務となっている。

-社員の声

「『サラクエ』がリメイクされるって」

「リメイクかぁ。てことは、ドット絵じゃなくなるってこと⁉」

社員食堂で話す男女。男は“村人”を、女は“宿屋の娘”を担当している。

「それは最悪よ。ダイエットしないと」

「別に大丈夫だろ。太ってないし。そもそも俺らに注目する人なんて、いないぜ」

「わかってないわ。最近はユーザー様たちの間でコスプレが流行ってるんだから。気なんて抜いてらんないわよ」

宿屋の娘の主張に村人はあんぐり口を開けるしかなかった。

「じゃあ、頑張れよ」

「これあげるね」

立ち去る彼女。村人はこの昼、二人前のランチを食べることとなった。

-終業後

「突然ダイエットか。俺なんてもう戻らないよ」

太鼓のような腹を叩きながら大笑いする男は武器屋の“店主”である。村人と商人は飲み屋で飲んでいた。

「そういえばさ。“神父さま”って覚えているか？」

「あのハンマー持ってる神父さまですよね？」

「そうだ。どうやら病みに病んで、退職したらしい」

「良い人だったのに残念っすね」

神父さまは社内でも有名人で、もっぱら仕事熱が凄いが精神が腐ってしまっているとの噂が出ていた。

「どうやら第二の職場（セカンドライフ）として、今度の『サラクエ』に出るらしいんだよな」

「そうなんですか⁉︎正直、そこらへんのユーザー様より強いっすからね」

商人はグビっとビールの飲み切り、

「オンライン化するらしいし、変なことにならなきゃ良いな。ま、俺らには関係ないか。ハハハ！！」

酔いがまわった店主を横目に、村人は苦笑いを浮かべた。

「どうせ俺たちは“サブ”ですからね」

やがて、村人と店主は『サラクエ』に配属されることとなった。もちろん、宿屋の娘も。

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