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「来てしまった…」
あーさに引っ張られること約10分。
ついにあーさの家に到着する。
「ほんとにいいの?」
「いいのいいの。お母さん達にもしょーたの事報告したいし。ね。」
「じゃあ、失礼の無いように頑張るよ。」
ここまで来たら引くにも引けないので意を決してお邪魔することにした。
「ただいまー。」
あーさが玄関を開け、元気のいい声が響く。
「おじゃまします。」
少し控えめな声で俺は言う。
「おかえりなさい。」
キッチンから出てきたのはおばあちゃんだった。
「紹介するね、私のおばあちゃんの葵田雪子。」
「よ、よろしくお願いします。雪子さん。」
ぺこりと頭を下げる。
「おばあちゃんでいいよ。」
ニッコリと微笑みながら「こちらこそ」とおばあちゃんも頭を下げる。
「で、彼が私の彼氏の相川翔太。」
「あなたがしょーたくんかい。話は毎日あさがおから聞いてるよ。さ、お母さん達にも挨拶してきなさい。」
「うん。」
「おじゃまします。」
と、再度言い靴を脱ぎ、用意された来客用のスリッパに履き替え、玄関のすぐ隣にある部屋に入る。
「お母さん、お父さん、悠斗、今日は紹介するする人がいるの。」
あーさが部屋に入ると同時に電気をつけ、暗い部屋が明るくなる。
そして、大きなお仏壇が現れる。
「これは、」
声が不意に漏れてしまう。
ハッとなるがあーさは「大丈夫。」と言い仏壇の前に座る。
「しょーたも。」
隣を手でポンポンと叩き、「座って。」と続ける。
「あ、ああ。」
「お母さん、お父さん、悠斗、紹介するね。こちらが私の彼氏の相川翔太くんだよ。」
「相川翔太です。」
そして、あーさからお線香を手渡され、それを刺し、手を合わせる。
なんとも言えない気持ちが心の中で渦巻いていた。
30秒ほど合唱し、あーさが先に立ち上がる。
「よし、ご飯、食べよ。」
そう言って仏壇を後にする。
さすがに、『なんで?』と聞ける訳もなく、無言で後をついて行った。
「挨拶できたかい?」
「うん。」
リビングに行けば、既に雪子さんが夕飯を並べて待っていた。
野菜炒めに焼き魚、きゅうりの浅漬け、お味噌汁にご飯。
彩りもよく、魚の香ばしい匂いが食欲をそそる。
「食べよ。」
「ああ。」
「「いただきます。」」
まずは、野菜炒めから食べる。
キャベツのシャキッとした食感とスパイシーな味付けがご飯を進める。
「美味しいかい?」
「はい。」
「それはよかった。」
そう、雪子さんは言い、「これもどうだい。」ときゅうりの浅漬けを勧める。
「いただきます。」
箸で浅漬けを掴もうとすると、腕をあーさに掴まれる。
「ん?」
「私が食べさせる。」
「え、」
箸で掴んだ浅漬けを口元まで運ぶ。
「はい、あーん。」
「でも、関節キスに…」
「いいから。」
あーさがさっきまで使っていた箸…ゴクリと喉が鳴る。
「早く〜。」
痺れを切らし、浅漬けを口元に押し付け始める。
「あ、あーん。」
いつまでも押し付けられてるままにも行かないのであーんを受け入れる。
さっぱりとした味わいが口の中に広がり、冷えたきゅうりのシャキシャキ感がたまらない。
「どう?」
「美味しい。」
「じゃあ、明日お昼に持ってくるね。」
「え、本当?」
「うん。任せて。」
「楽しみにしてるね。」
そう、胸を張る。
そんなやり取りニコニコしながら見ている雪子さん。
「じゃあこれも、あーん。」
そう言い、焼き魚を口に持ってくる。
それからというものあーんの味をしめたのかあーさに箸を取り上げられ、あーんで夕飯を頂いた。
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