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「ねぇ、RAIN交換しよ。」

校門を抜け、しばらく歩くと腕をクイクイとしながらスマホ片手に持ったあーさが言う。

「うん、いいよ。」

それを承諾して左腕はあーさが占領しているので左手でポケットからスマホを取り出す。

そして、メッセージ交換や電話が出来るRAINを開く。

「QRコードでいい?」

「うん。」

あーさがQRコードを差し出し、それをかざす。

ピロンと鳴り、友達登録しますか?と猫のアイコンのあーさのアカウントが表示される。

「登録したよ。」

そして、家族しかいなかった友だち欄にあーさが追加される。

「ありがと。」

トーク画面によろしくと共に可愛いスタンプが送られてくる。

それを、こちらこそと打ち、スタンプを送り返す。

「これで、いつでも話せるね。」

「そうだね。」

「あ、そうそう、明日からしょーたお弁当持ってこなくていいよ。」

「え?」

「私が作ってくるから。」

「いや、そんなの悪いよ。」

「そんなことないよ。私がしたくてやってるんだから。あ、それと、何か嫌いなものあるそれと、アレルギーとか?」

「んー、特にないかな。」

少し考えるが嫌いな食べ物もアレルギーも特に無い。

「わかった。じゃあ、好きな食べ物は?」

「唐揚げかな。」

「じゃあ、唐揚げ弁当とかどう?」

「いいね。」

「よし、気合い入れて作るね。」

「楽しみにしてる。」

「楽しみにしててね。」

そう言ってがんばるぞーと力こぶしを作るあーさ。

「あ、俺はここ左なんだけどあーさはどっち?」

そんな事を話していると、道は二手に分かれる所に差し掛かる。

「私は右。」

「じゃあ、ここでお別れだな。」

「え、ヤダ。」

そう言い、離すどころか余計に強く腕に抱きつく。

「そんなこと言われても…」

「んー。」

あーさを見るが駄々っ子のように唇をとんがらせてこちらを見ていた。

目は少し潤み、『離れたくない…』と語っていた。

「困ったなぁ…」

小さくつぶやく。

自分も離れたくないがここにずっとこうしている訳にも行かない。

「じゃあ、私んち行こ。」

とんがらせた口を開くあーさ。

「え?」

聞き間違えかもしれない、と聞き返す。

「だから、私んちに行こ。」

聞き間違えではなかった。

「でも、そんな突然、」

「大丈夫だから。ほら、ね。」

と言いながらあーさの家があるので右の方へグイグイと引っ張る。

「えぇ。」

と、困惑しながらも断ることも出来ずに着いていくことにした。


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