伊勢海転生してしまったニートの話。

架橋 椋香

見たくもない明日を消耗し続けていつか。

 いつもどおり27時に風呂にはいる。今日はニートです。明日もニートです。明後日もニートです。その次も。ありがちなラブソングの愛より確実性の高い永遠を誇る、オレのニート人生。悪くないだろう?親の家の、風呂の扉を開けて。

「いせかい行きてーなー」

思わず、ホントに思わずなんだけど。そう呟いてしまった。


 その瞬間。


 ぐらぐらりりりりりりりりりりるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるん。


 にしひだりも、きたしたもわからなくなる。ひっくり返るカエル還る先はどこなの。


 信楽焼のタヌキみたいなカエルが、動いている。ビビるわ。まじで。やめてほしいんだけど。(わら)にも縋る思いでオレは言う。

「ここはどこだ」

カエル答える。

「貴方の望んだ場所トコロですよ。そして、あなたの還るべき場所トコロです」

カエルは、「カエルだけにw」と言った。

「それって…」

「ええ。あなたの望んだ場所。つまり異世界ですよ」

「伊勢海ではなく?」

「伊勢海ではなく」


 実験失敗だ。還るべき場所はここじゃない。また生まれ変わって。また悲しくなって。帰れなくなっている。故郷に。さんざん迷惑かけた本当の母はどうしているだろう。ここは竜宮城じゃなかったらいいな。

と、山城の国の浦島は思った。

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伊勢海転生してしまったニートの話。 架橋 椋香 @mukunokinokaori

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