第6話 管理官との話

 二つの情報を携えて管理官のところへと山口は行った。山口の中では近所での批評よりも偶然目撃した不倫らしきところの方が重要な情報であると思っていた。

「まず近所の方からの話によると内田夫妻は四六時中口論をしていたようで周りにも声が聞こえるくらいの騒音となっていたということです。また同じ会社らしき人との口論も良くあったそうです。話を聞く限りでは内田の妻にも同じ会社の人にも動機はありそうです。」

深い溜め息を付いてから管理官はぼそっと呟いた。

「そうか、動機らしいものを持つものがそんなにか……捜査がやりにくくなりそうだ。」

「管理官、それともう一つ事件と関係がないかもしれないんですが聞き込みが終わった後、内田の家に入っていった男女がいてその男女が内田の妻と同僚の山上でした。二人の感じからして二人は男女の関係を持っていると思われます。」

「山上がか、そんなに悪い印象を持っていなかったのだが筋の通る動機を持った人が急に現れたということになるな。」

管理官の顔はいつもよりも輝いているように見えた。長年犯罪と向き合ってきた管理官にとっては動機が明白な事件との巡り合わせもあったが、動機が分からないところから捜査をすることが多くて容疑者を絞れてからの解決までの道が短いことをよく知っているからこそそのときの表情の語るものは大きい。

 管理官は山口の話を聞いてからすぐに一人の捜査員を呼んで山上の動向を交替で見ておいてくれと指示を出した。何か不審な行動があったときにすぐに対応できるようにするためである。

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