第5話 近所の批評と見てはならぬもの
山口はこの事件の動機を持っていそうな内田に恨みを持つ人物を探そう、そう思って内田の身辺調査を今までしていたものよりも厳密に厳しく行うことにした。
内田に本当に近い人からすると恨まれていないように見えても近所の人からすると恨まれているように見えるケースというのはある。そこで山口は内田の自宅の周辺の人に話を聞いた。
「内田さんのお宅から毎日のように喧嘩してる声がするんですよ。その声の主はご主人のようで私たち近所のものは勿論のことながら内田さんの奥さんやお子さんたちは窮屈な思いをされていたでしょうね。」
「内田さんのところのご主人さんが家の前で、同じ会社の人なんでしょうね、スーツ着た男の人とよく言い争いしてました。実際のところ会社での評判は良くなかったんじゃないかな。」
近所の人の口からは内田に対しての相当な批評が止まることを知らないように出てきた。実際のところは色々な人に恨まれていたのかもしれない。その中には家族や会社の人が含まれているのは勿論ながら場合によっては騒音という理由で近所の人というのも含まれているのかもしれない。
山口の中ではさすがに誰かには恨まれているのではないかと思ってはいたものの、自分で想像している以上の人が内田に対して良い思いを持っていなかったと分かり、容疑者絞りという上では厄介なことになってしまったのである。
そろそろ戻るかと山口が思ったところで被害者・内田の家に内田の妻と思われる女性と一緒に入る一人の男性の姿が見えた。山口のいる場所からはその男性の容姿を細かく判断できはしないが、どう見ても年齢的には内田と同じくらいで二人の歩き方とかそういったところから楽しそうにも見える。ただの男性ではないと長年の刑事の勘から山口はそう思った。
山口は捜査のためと割り切って彼らを見ていた。離れていては分からないので内田の家の近くで身が隠せるところに潜んで様子を窺う。
家に入ってから二,三十分して二人は出てきた。遠くからではよく分からなかったが家に入っていった男女は内田の妻と内田の同僚の山上だった。入るときと同様に出てくるときもニコニコしていた。家の中で何が行われていたのか知る由もないがいわゆる“不倫”の関係があるように山口には見えた。
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