第4話 目撃情報

 捜査会議終了後、山口は管理官に呼ばれ直々に指示が出た。

「他殺であると断定された。マンションの住人から誰かは分からないが二人の人物の目撃情報が出ていることからその情報を広げてもらいたい。」

 管理官としては山口が持ってきたマンション住人の目撃情報を有益な情報として捉えていてそれを広げることで犯人を特定できるのではないかと思っているようだった。

「マンションを中心に周辺の聞き込みを徹底的にしてきます。何か分かったらすぐに連絡します。」

 山口は再びマンションに行き、マンション入口に設置されている防犯カメラの映像をチェックした。マンション住人の証言を基にした映像での立証が目的だった。

 山口は目撃情報がある警察到着一時間前程度よりも少し前から映像を見始めた。さすがにすべてを一倍速にして映像を見るわけではなく、早送りしつつ映っている人物を見ていくというやり方をする。

 そして目撃情報があった時間帯になった。ここからは特に目を凝らして映像を見なくてはならない。山口自身は自分で得てきた情報の信憑性がここで確かめられるということで管理官から期待されているということで緊張感が一気に高くなっていた。

 再生されている映像に映る人物の顔を凝視して目的の人物の顔を探した。あっ、この人だという人物を発見したのは目撃情報のあった警察の来る一時間前より少し遅いくらいだった。

 目的の人物の内田が一人で現れ、一度画角から出てその後五分程度してから再び画面に現れたときには不審者と言っても過言ではないような出で立ちをした一人の人物が内田の後ろに着いていっていた。

 その内田の後ろに着いていっていた人物はフードを被っており、マスクに眼鏡と顔も分かりにくくなっていた。外が暗いというのもあって昼間よりもカメラで人の判断が難しいにも関わらず顔が全体的に覆われていたら人の判断はもちろんのことながら男女の判断すら難しかった。

 ただ、情報として掴んでいた二人の人物の目撃情報自体の真が証明されたわけで隣に映る人物の特定を達成すれば何の文句もなくこの映像が犯人特定の鍵であったことは誰しも認めなくてはならないものになる。

 内田と犯人と思われる人物はその後、事件現場の方へ歩いていき画面から消えた。画面に二人はいないものの何やら喋っていてどちらも少し怒り気味の口調で話しているのが分かる。喋り込んで五分くらいして彼らの怒りは絶頂に達したようで喋っているというよりは怒鳴り合っている、叫び合っているようになった。そしてドンッという鈍い音が鳴ってバタッという音が鳴った。

 そういう音がしてから少しして犯人らしき人物のみが再びカメラのところへ現れてすたすたと来た道を歩いていった。服には暗い中で確実な判断をつけられないものの血液と思われるものが付着しているのは否定しようがない事実だった。

 やはりこの人物が殺害した犯人と見て間違いない。ただ、カメラが捕らえていた音声からして咄嗟トッサの犯行とも思えた。この人物の特定の必要があるということで山口はその人物が出てきているところ周辺の動画をコピーさせてもらって解析することとした。

 コピーした動画は山口と親交のある科捜研の研究員に渡して解析を依頼した。画像や動画の解析には定評のある人である。

「このフードを被った人物の顔を明細にしてほしいです。出来るようだったら事件の関係者の顔と照合までしてくれるとありがたいです。」

「分かりました。山口さんが持ってきたということは事件に大きな影響を及ぼすんですよね。早めに済ませて連絡します。」

「お願いします。」

 山口は防犯カメラの映像を見て得た結果と科捜研に動画の解析を依頼したということを管理官に報告しにいった。

「やはりそういう人がいたか。解析の結果が出たら教えてくれ。期待が膨らむな。」

「はい、他に出来ることを少しずつ詰めていきます。」

「ああ、任せた。」

 管理官は山口に対して一定の評価をしててその評価から来る捜査に対して特に大きな指示を出さなくてもやってくれるという期待感があった。

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