第3話 捜査会議
山口が会議室に着いたのは捜査員の中で最も遅くて他の人たちを待たせていた。山口が着席するとすぐに会議が始まった。
「遺体を司法解剖したところ、後頭部損傷による失血死でした。いくつか殴られたような痕があったのですがそのうちの一つ、一番大きい傷が致命傷でした。」
司法解剖の結果と遺体の状況から他殺であることが確実になった。やはり誰かに殴られて亡くなったということである。
「遺体発見現場から数百メートル離れた側溝から見つかった金属製のハンマーに付着していたものは被害者の血液でした。」
昨日の時点で既に見つかっていたものだったが、結果が出たのである。被害者の血液ということは事件との関連は必ずと言って良いほどある。
「それは凶器になるのか。」
管理官から鋭い質問が捜査員にぶつけられた。誰しもが聞きたかった内容でこの情報が何かと今後の捜査に影響を及ぼすのである。
「只今調査中です。分かり次第報告します。」
司法解剖も出たばかりのようだし、傷痕と照合できていないことも納得のいくことではある。ただ、早く結果が出てほしいところである。
「山口君の報告は何だね。」
管理官は山口を直接指名して山口からの報告を促した。
「現場のほぼ目の前に位置するマンションの住人に話を聞いてきたのですが、一部の住人から警察が来る一時間程度前に現場周辺で二人の人物を目撃したという話を聞きました。その人物が内田であるという確証は一切ないですが、有力な情報と思っています。」
山口以外の捜査官の反応はそんな情報がどうなるんだと言わんばかりの顔で左から右に言葉が流れていっているようだった。
しかし管理官だけは違った。山口の役に立つかすら分からない情報でもしっかりとすべてを受け入れて頭の片隅くらいには置いておくように、としていた。それは山口が警視庁でも名を轟かせるような有名な刑事だから、ということではなく一人の捜査員として集めてきた少しの情報でも記録して積み重ねて事件を解決しようという管理官の思いからであった。
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