第7話学園に通う少女6

「リーナちゃん!!」

「レオナちゃん?どうしたんですか?」

「サナ先輩が呼んでましたよ!?」

「お、お姉さまがですか!?どうしましょう!?お、怒られてしまいます!?」

「お、落ち着いてください!?た、多分大丈夫ですから!?」

「ぜ、絶対怒られます!?お姉さまはさっきの試合を見ていたんですよね!?あんな無様な姿をさらしてしまったのに怒っていないはずがありません!?何せ勝つことができなかったんですから!?」

「へっ?そっちですか!?てっきし、被害の方かと思ったんですが。」

「そんなわけないです。お姉さまそんなことで怒ったりは…。」


と、そんな時見知った顔が現れた。


「あ、いたわね。もー、あなたって子はなんてことをしてるの?」

「ごめんなさい、許してください。お姉さまの前で次こそは勝って見せますから!?どうか嫌いにならないでください!?」

「もう、何言ってるの?別に私はそんなことで怒ったりしないわよ。」

「ほ、ほんとですか?」

「本当よ。それより私が言いたかったのは、あの剣のことで…。」


私の体のどこかでスイッチが入った。

ここはお姉様に私の作った剣の性能や研究を披露できるチャンス。

さきほどまでは恥ずかしい姿をさらしてしまっていたけれど、この点においてはほめてもらえるチャンスが来た。


「良いところに目を付けてくれました!!あの剣はお姉さま専用に作っていた試作品なんです。魔力を剣先に集め、秒速0.000314 1592653 589793 23846…ほどの速さで、放出されるんです。魔力は、秒速1秒を切ると爆発的に威力が伸びることが分かったんです。確か、魔力質量1モルにつきY=Ⅹx(6.0x10)の23乗に習って比例することが見つかったんです。」

「へー、そんなことが……って、私が聞いてることはそんなことじゃなく。」


私の話に聞いてくれたかと思ったらすぐにツッコミが入ってしまった。

せっかくのアピールタイムが残念。


「私が言いたかったのは、もっと威力を抑えれたでしょ!計算の仕方が分かってるんだから威力ぐらい抑えれたでしょ。なのにどうして?」

「わ、私はただ、もしもの時に全力が出せなかったらけないと思ったのです。」

「だからって、人に向けてやるものじゃないでしょ!?ねえ、私と昔約束をしたこと覚えているわよね?」

「はい。覚えています。でもっ!お姉さまが使うときに万全でなければっ!」

「私は、私を思ってくれる子のことは好きよ。でもね、私との約束を守らない子は嫌いなの。何よりね、私のために約束を破る子はもっと嫌いなの。」

「お、お姉さま、ご、ごめんなさい。ど、どうか嫌いにならないでください。お、お願い、します。いやです。お姉さまに嫌われたら私、私・・。」


目から大粒の涙が流れてきた。

お姉様にに嫌われたらと思うと、心が締め付けられてとても苦しい。

この気持ちを的確に表現したくても出来ないけれど、それでも悲しくてたまらない。


その醜態をさらしているのにも関わらずお姉さまは笑顔のまま、私をを優しく包んでくれた。 


「もう、あなたはいつまでも泣き虫ね?レオナちゃんが見ている前で。」


そう、体を抱えながら、涙を人差し指ですくってくれる。


「わ、私は何も見ていません!?何もです!」

「ありがとう、レオナちゃん。それであなたはいつまで泣いているの?」

「だって、だって、お姉が嫌いっておっしゃったから‥‥。」

「私は、リーナのことを嫌いだって言ってないでしょ。だからもう泣き止んで?」

「お姉さまは、意地悪です。」


お姉様に抱かれて、だんだんと落ち着きを取り戻していく。

そして、涙は止まったものの、目の下が赤くなっていた。


「それでリーナあの剣の事なんだけど、渡してもらえるわよね?」

「でもまだ、完成してないですし。」

「いいの。それに私専用の剣なんでしょ?それに・・。」


お姉さまはまだつぶやいていたけど、私の剣を求めてくれている。

それなら渡すという選択肢しかない。


「分かりました。一応、あの1振りで強度などはわかっています。ですが、まだ試作品段階でしたので気を付けてください。」

「分かってるわ。でも、私用に作ってくれたのはすごくうれしかったのよ?」

「お姉さま、ありがとうございます。」

「でもね、リーナにはあまり危険なものは作ってほしくないの。特に人を傷つけるものは。だから次に作るものは私に似合うものがいいわね?」

「分かりました。今度からはお姉さまに似合うものしか作りません。」

「それじゃあ、本題を話すわね?」

「へ?」


リーナは心の中でとても驚いていた。さっきまでの話が本題ではなかったのかと。

そして、さっきまでの良いシーンがついでだったかと思うと顔が赤くなってしまう。


「それでね、試合が何とか始まる前に防衛フィールドや、バリアを最大出力にしてもらってたけど、さすがにアレは防げなかったみたいなの。だから、競技場の一部壊れて直してほしいの。リーナは得意でしょ?」

「た、確かに得意ですが‥…、まだ涙の跡が‥。」

「大丈夫、ちゃんと直してあげるから。【華に祝福をアロマベール】」


その声とともに、涙の後で真っ赤になった目の下が元の色に戻っていく。


「あ、ありがとうございます。」

「いいのよ?その代わりしっかり頑張るのよ?」

「はい!」


そういうと、元気よく走り出す。

それをお姉さまはしっかりと見ていてくれた。




―――――――――――――――――――――――




「ふふふ、サナちゃんもリーナちゃんには甘いのね?」

「か、会長、いたんですか!?」

「リーナちゃんが泣き始めた所だったかしら?いきなり泣いちゃうからびっくりしたけど、サナちゃんがどうにかしてくれたようでよかったわ。」

「そもそも、会長がこんな提案しなかったら、こんなことにならなかったんですよ?」


怒った顔で会長を問い詰める。

今回の件、もとはといえば会長がおかしなことを言わなければ何もなかった。


「しょうがないじゃない。それに、そこにいたのは私だけじゃないもん。ね?レオナちゃん?」

「へ?わ、私ですか?私はその…。」

「人に押し付けることは会長としてどうなんですか?」

「サナちゃん、今日怒ってばかりだよ?」

「はぁ~。もう良いです。それでどうしたんですか?」

「単刀直入に聞くんだけど、リーナちゃんを生徒会に入れたいのよ?サナちゃんはどう思う?」

「どう思うも何も、それを決めるのはリーナですから。私に聞かれても困ります。」


正直言って、あまりリーナには勧めようとは思わない。

でも、もしもリーナが入りたいと思えば応援はする。


「それは、賛成してくれるってことでいいのかしら?」

「どちらでもないということです。」

「それと、レオナちゃんも、生徒会に入らないかしら?」

「えっ!?わ、わたしですか!?ど、どうしてか聞いても!?」

「簡単に言うと、あなたの魔力量は多いし、それに、魔力の制御もうまくで来ています。今後の生徒会において、私はあなたたちがいてくれれば、助かるの。もちろんまだ、経験も浅いから、みんなの前には出れないかもしれない。けれど、私たちが卒業するまでは、私たちがいろいろ教えることができます。だからどうですか?」

「わ、私は……、ちょっと、考えをまとめる時間が欲しいです。」

「ええ、直ぐに決めるのは難しいと思うからゆっくり考えをまとめてほしいの。」


その言葉を最後に去ってしまった。


「あ、あの、サナ先輩は生徒会に所属しているんですか?」

「私?私は入っていないわよ?」

「えっ!?そうなんですか!?」

「ええ。だって、生徒会に入ると厄介なことが多そうだから。一応、今年と去年会長から誘われてはいたんだけど、全部断ったわ。」

「そ、その、もし断ったら、何かあるとかはあるんですか?」

「特にないわよ。だって、生徒会に入るということは、それなりに覚悟がいると思うし、中途半端な気持ちで入ると逆に迷惑がかかるだけでしょ?」

「は、はい。確かにそうですね。」

「まあ、レオナちゃんも、リーナと一緒に考えたらいいんじゃないかしら。逆にあの子はすぐに断りそうだし。」

「そ、そうですね。確かにそんな会話が目に見えます。」


そして、二人もその場を去っていった。そして場に残ったのは…、


「なんであの子たちなの!?私だってあの子たちより優れているはずなのに!?どうして!?」


一人、憎しみを抱いていたものがいた。

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