第119話 先へ
「じゃあ、俺は先に進むよ。このダンジョンを攻略したら戻ってくるから。一旦それまではマドラをお願いね」
「分かった。この子のことは任せておいてくれ」
やはり属性的にも相性が良かったのか、数分でハクエルとマドラは仲良くなっていた。これなら2人で居ても大丈夫だろうと思ったので、俺は先に進むことにした。
「マドラも言うことを聞いて、いい子でいるんだぞ」
「グルゥル!」
当たり前だ!というような思考が返事として帰ってきた。俺は2人と別れて次の階層へと向かった。
「いやー…飛ぶとやっぱり楽だね」
飛んでいるとほとんどのモンスターとは遭遇せずにダンジョンを進むことができる。本来はレベル上げのためにモンスターを倒しながら進んだ方がいいのだろうが、今はダンジョンを完全クリアする方が優先度が高い。だから基本的にモンスターは全て無視だ。
「蛇と亀か」
「そのようですね」
相変わらず飛んでモンスターを避けているが、99階層にいるモンスターは蛇と亀のようなもの達のみだった。
「ということは東のダンジョンに誰がいるのかもわかったな」
今までのダンジョンで白虎、朱雀と来ているので、このダンジョンに残り2匹のうちの1匹がここに居るのかが分かった時点で残り1匹も分かってしまう。
「じゃあ開けるよ」
俺は100層のボス戦の扉を前にして、ナービにそう宣言した。
「前回はいきなり魔術を放たれたので、最初から戦闘状態にしておいた方が良いでしょう」
「あ、そうだね」
俺は限界突破、極限突破、身体属性強化・龍魔法、覇気、瘴気を行った。そして、勢いよく扉を開けた。
そして、開けた瞬間に吸い込まれるようにボス部屋に強制的に入れられた。
「もごっ!」
まさかのボス部屋は水で埋まっていた。これは全くの想定外だった。
『落ち着いてください。マスターはスキルを使えば水中でも呼吸ができます。また、呼吸しなくても生きていけます』
『まあ、そうだけど…』
俺には水中高速移動Lv.MAXと水中呼吸Lv.MAXと無呼吸Lv.MAXのスキルがある。だから水中戦でもそこそこ戦う事が可能だ。特に水中戦で敗因の原因になりやすい呼吸問題については全く心配はない。
『ん?』
急に水が流れが生まれた。渦巻くように流れ始めた。
『っ!マスター!今すぐ水から出てください』
『わかっ…うぐ…!』
その水は急に圧力を込められたように小さくなって行った。このままでは水の中に閉じ込められるだけではなく、最悪潰されてしまう。
『転移』
俺は転移で水の中から抜け出した。抜け出した後に見た光景は、俺がさっきまで居た水を豆粒程の大きさにして、黒い巨大な蛇に巻き付かれた黒い巨大な亀が食べたところだった。
「やっぱり玄武か」
『そのようですね』
俺は頭を横にぶんぶんと振って髪に付いている水を飛ばしながら、ナービに確認をした。
「問題は大き過ぎじゃない?」
亀の体高は軽く10mを越えているだろう。そんな亀の甲羅を2重、3重と巻き付いてもまだ身体が余っている蛇も相当でかい。太さだけでも3m以上は軽くあるだろう。
でかいというのはそれだけで強い。なぜなら、その巨体で乗っかられただけで骨ぐらい簡単に折れるからだ。
「まあ、デメリットもあるよな!」
俺は転移で玄武の近くに移動した。そして、大剣にしたカグロを勢いを付けて振り下ろした。
巨大のデメリットは小回りが効かないことだ。後ろに回り込まれたら何もできない。
パシャンッ!
「え?」
しかし、その大剣は突然現れた水の盾に防がれた。いや、弾かれた。
『マスター!』
「やべっ!」
亀の視覚をカバーするかのように蛇の方が俺に向かってきていた。俺は慌てて転移をして、再び下がった。
「あれは魔法だよね?」
『そうでしょう』
あれは絶対感知で魔力が使われているのは確認済みだ。念の為ナービに魔術では無いか確認したが、魔術では無いようだ。
「なら何でカグロで吸収できなかったんだ?」
カグロの暴食は魔法やモンスターなどの魔力があるものを攻撃した時にそれらを喰う能力がある。普通はあんな1m程の大きさしかない盾になんか簡単に突破できるはずだ。
『マスターの魔力が回復していることから魔力を喰うことはできていました。なので、そこから考えられるの理由は2つです。1つ、魔力を奪われない、もしくは奪われにくいようにするスキルを使っている。2つ、魔力を喰われてもまだ盾が存続できるほどの魔力が込められている。マスターの魔力の回復量から考えて理由は1つ目の方でしょう』
ちなみに、ナービの予想では玄武は魔力を奪われないスキルを取得しているだろうとのことだ。
ただ、玄武が取得しているのがユニークスキルだからエクストラスキルの暴食に対して効果が発揮できていないのか、エクストラスキルだが、暴食よりもスキルレベルが低いため効果が弱っているのかは分からないそうだ。
『このまま持久戦で玄武の魔力が無くなるまでやるって選択肢はないよね?』
『ステータスが見えないので、自然回復速度も分かりません。そのため、持久戦になるかどうかすら分からない今の現状では選択肢の案に出ること自体ありえないでしょう』
『だよね』
また、こうしてナービと作戦会議している間も玄武から攻撃してくる様子はない。そのことから、玄武も持久戦は望むところなのだろう。
「次元斬・改!」
俺は玄武に向かって次元斬・改を放った。これで倒されてくれたらなっという願いも少しはあったのだが、それは叶わなかった。
「オート防御みたいだね」
『そうですね』
ほぼ一瞬でやってきた次元ごと斬る斬撃を水の盾で受け止めた。さっきと違ったのは水の盾はパッカンと綺麗に斬れたことだ。しかし、斬撃は盾を割って消えてしまった。
『マスター、次は高威力の魔術をお願いします』
「はいよ!」
俺はナービの言うことを聞いて、空中に直径5m程の魔法陣を作った。
「龍撃!」
俺は龍魔法を魔術として放った。魔法陣から飛び出した黒い龍は一直線に玄武へ向かって行った。そして、水の盾にぶつかって少しして消えた。
『ありがとうございます。これであの水の盾の能力が何となくではありますが、分かりました。
あの盾は割れる代わりにどんな高威力の攻撃でも受け止められるのでしょう』
『なるほど?』
確かにさっきの次元斬・改は俺が解除するまでずっと止まることは無い。ましては盾と相打ちで消えることは無いだろう。そして、今の龍魔法での魔術にしてもあんな簡単に相打ちになるほど魔力を使っていない訳では無い。
「さて、どうしようか…」
相変わらず玄武から動く様子はない。
俺からの攻撃はどれもあの盾に防がれてしまう。また、下手に近づき過ぎると、蛇の頭が来るだろう。どう攻めるがいいのか……。
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