第118話 称号欄

「………」


「………」


今の話を聞いて、なんて言葉にしていいのか分からずに無言になってしまった。


「そんな気を使わないでもらわなくて大丈夫です。

私があの赤く染り、色々なモノが焦げた匂いが充満しているあの森で殺ったことに何一つ後悔はありません。もしもう一度あの場に戻ったとしても、私は同じ事をするでしょう」


「そっか」


そう自信満々に言うダークハイエルフの顔はどこか悲しげだった。



「よし、決めた」


「何をですか?」


俺は少しだけ考えて決めた。今回はナービに怒られるなんてことがないようにしたい。



「君の名前はハクエルだ」


「ありがとうございます」


ダークハイエルフの名前は今日からハクエルとなった。


『相変わらず安直ですが、今日は許しましょう』


結局、また種族名を少しいじっただけだが、今回は気持ちも込められている。自身が堕ちると分かっていても、同族のために行動したのは誰にでもできることではない。そんな自己犠牲だが、優しいダークハイエルフだから、よく天使の名の最後に着いている「エル」を付けたのだ。

後付けと言われたら否定できない気はするけど…。


「…これが名付けですか。数値がだいぶ上がりましたね。どうぞ」


ハクエルはそう言って名付け後のステータスを名付け前と比較して俺に見せてきた。




【名前】  ハクエル

【種族】  ダークネスハイエルフ

【年齢】  1   

【レベル】 1    

【ランク】 SSS


【HP】   75000/75000 (25000UP)

【MP】   75000/75000  (25000UP)


【攻撃】  10000  (3500UP)

【防御】  8500   (3000UP)

【魔攻】  10000  (3500UP)

【魔防】  8500   (3000UP)

【敏捷】  10000  (3500UP)

【運】   25       


【スキル】

・空歩Lv.MAX(6UP)・威圧Lv.4(New)

・隠密Lv.MAX(3UP)

・火炎魔法Lv.MAX(6UP)

・暴風魔法Lv.MAX(2UP)

・水流魔法Lv.MAX(2UP)

・岩石魔法Lv.MAX(2UP)

・光明魔法Lv.MAX(2UP)

・雷電魔法Lv.MAX(4UP)

・氷結魔法Lv.MAX(4UP)

・陰影魔法Lv.MAX(6UP)

・治癒魔法Lv.MAX(2UP)

・身体属性強化Lv.MAX(2UP)

・気配精密感知Lv.MAX(2UP)

・危険精密察知Lv.MAX(2UP)

・詠唱省略Lv.MAX・無詠唱Lv.MAX

・指揮Lv.MAX(3UP)


【ユニークスキル】

・剣聖Lv.4(進化後)・弓聖Lv.8(3UP)

・闘気Lv.2(New)・縮地Lv.7(5UP)

・常闇魔法Lv.MAX(7UP)

・呪縛魔法Lv.1(New)・時空魔法Lv.5(4UP)

・重力魔法Lv.5(4UP)・黒炎魔法Lv.3(New)

・黒雷魔法Lv.3(New)・全大耐性Lv.1(進化後)


【エクストラスキル】

・嫉妬Lv.4


【称号】

・嫉妬

・堕ちたエルフ

・元王女

・精霊から忌み嫌われた者

・ネームド

・覇王の眷族



「ダークハイエルフが進化すると、ダークネスハイエルフになるのか…」


「私も初めて知りました」


ダークエルフですらかなり珍しいのに、その進化後のさらに進化後なんて、多分過去にも存在していないだろう。



「あ、なんか俺のステータスの数値と似てる」


「そうなのですか」


ハクエルのステータスの数値は攻撃と魔攻と敏捷が高く、防御と魔防がやや低い。スキルを見ても物理攻撃と魔法攻撃の両方を得意としているのがわかる。


「嫉妬……」


上から順にステータスを流し見していると、それに目が止まった。これで七つの大罪の称号が全て出揃った。まず俺が強欲も傲慢と憤怒。そして、カグロが暴食。さらに、ロウが怠惰、イヅナが色欲。最後にハクエルが嫉妬だ。



「…この嫉妬は呪いです」


「呪い?」


「はい。これはその子を殺した時に獲得しました」


「え!?」


これは同族のエルフを殺した時に獲得したのか。しかし、そのタイミングで嫉妬をすることは無いだろう。そうなると考えられるのは1つだ。


「もしかして、その子から引き継いだとか…」


「多分そうでしょう。その子なら嫉妬の称号を持っていても全く違和感がありません」


大罪系スキルは殺した相手に移るのか?



「あっ…」


ちょっと待て。殺した相手に移る?なら、魔族のブラッドが獲得していた傲慢を俺が獲得したのはどういうことだ?

俺は最悪な考えが頭の中に過った。そういえば、その時より少し前から魔族達とは会っていない。


『ナービ!あの魔導具で魔族と連絡できる!?』


あの魔導具とは、俺が魔族達と別れた時に渡した魔導具だ。


『…あれは5回の制限がついた片方のみから呼びかけられる通信用魔導具です』


『くそっ…』


もう少しダンジョン内を探して、もっと性能が良い魔導具を見つけた方が良かった。


『マスター、落ち着いてください』


『これが落ち着いていられるか!』


俺の考えが当たってしまっていたら、俺は最初の試練というやつでブラッドを殺して傲慢を獲得してしまったのかもしれない。


『いいから落ち着いてください』


『っ…!』


ナービは同じことをさっきよりも強く言った。


『冷静に考えてください。あの魔導具は「何かあれば連絡して」と言って魔族に渡しました。もし、魔族の長であるブラッドがマスターの考えた通りになったとしたら、必ず連絡が来るでしょう』


『あっ…』


確かにそうだ。ブラッドが居なくなっても、急に死んでしまったとしても、絶対に連絡が来るはずだ。


『今更慌ててもどうしようもありません。どの道、このダンジョンを完全クリアした次は東のダンジョンに行きます。その時にブラッドのことは確認すればいいです』


『…そうだね』


ナービに諭されて一気に落ち着くことができた。



「覇王様、大丈夫ですか?」


「あ、ごめん。ちょっと気になったことがあって考えてた。大丈夫だよ」


ハクエルに心配されてしまった。まあ、目の前の相手が急に顔を強張らせて黙ったら誰でも心配するよな。

俺はハクエルのステータスの続きを見ることにした。



「精霊に忌み嫌われた者??」


嫉妬の次にその称号が目に行った。改めてスキルを見てみると、精霊魔法が取得されていなかった。


「それは元々ダークハイエルフに堕ちた時は「精霊に嫌われた者」でした。しかし、人間を何人も殺していると、その称号名に変わりました。

効果は精霊関係のスキルが使えなくなるのと、精霊が多い属性の魔法の威力が下がり、精霊が少ない属性の魔法を使うと威力が上がることですね。

この効果は「精霊に嫌われた者」から同じです。ただ、称号が変化してからはその倍率が上がりました」


「なるほど…」


つまり、ダークエルフになってしまうと、精霊魔法が使えなくなってしまうということか。

しかし、もう1つの効果は使いようによっては役立つ。ただ、精霊に詳しくない俺が使うとなると、どの精霊がここに多いか少ないかなんて分からないので、ナービにかなり頼ることになってしまう。



「あ、そうだ」


ステータスを見終わると、突然ある良い案が思い付いた。


「もし良かったらマドラと一緒に居てくれない?」


俺はマドラに触れながらハクエルにそう言った。マドラだけだと、少しダンジョンに置いておくには不安だった。さっきの言いつけを破ってハクエルを襲ったように、誰かが来た時に攻撃されたやり返してしまいそうだ。逆に言いつけを守って無抵抗で殺されてしまいそうでもある。

そこでハクエルだ。ハクエルが居れば、その辺の分別をマドラに教えてくれるだろう。

また、ハクエルとマドラはスキルが似ているところが多い。相性はかなりいいはずだ。



「私はずっとこの階層にいる訳では無いですよ」


「この階層に居る時だけでいいよ。まあ、用がなければできるだけこの階層に居て欲しいけど」


マドラも何をするにも誰かの教えが必要というわけでは無いだろう。不祥事以外なら自分で対応は可能だろう。それぐらいマドラは強い。


「そういう事なら分かりました」


「ありがとう」


これでマドラを置いていくことへの不安要素を無くすことができた。



『マドラはハクエルの言うことを聞くのですか?』


『あっ…』


そこを考えていなかった。俺はテイム主だから言うことを聞くが、ハクエルということは聞くのか?


「マドラ、これからはこのお姉さんの言うことも聞くんだぞ?」


「グオッ!」


マドラは俺が言ったことを理解したのか、1度鳴いてから、ハクエルに顔を擦り付けた。仲良くできそうで良かった。

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