第73話 試練

「確かワームだったよね?」


「そうですね」


50階層のボス部屋の前に転移してナービに確認をとった。


「マスター…お話があります」


「なに?」


早速ボス部屋に行こうとしたがナービから話しかけられてしまった。


「これからは戦闘時や戦闘前にもしっかりと助言をしていきたいと思います」


今までは何かあった時にナービに頼ってばっかりにならないように、とっさに自分で判断する練習も兼ねてナービには緊急時以外はあまり助言を貰っていなかった。だが、急に助言をすると言い出した。


「今回のコボルトのようなことがあった時にしっかりと前もって対策を話し合って戦闘時も協力した方が良いと判断しました。それにマスターは緊急時でもしっかりと自分で考えて行動できるようになっているでしょう」


急に助言をすると決めた訳ではなく俺の能力を信頼してのことだったらしい。

急に助言をすると聞いてある理由が思いついたがそうではなかったらしい。その理由を言ったら「何を言っているのですか?」と言われてしまうだろうけどこの重い雰囲気を直すためにもちょっと言ってみよう。


「もしかして由紀の検索のスキルのせいで自分の価値が無くなるのを心配してるの?」


さて、どんな小言が返ってくるのか楽しみに待っていた。


「いえ、えっと…そ、その…ですね……」


「え??」


なんか思っていた反応と違って驚いてしまった。


「今は会話機能があるただの鑑定みたいになっています…けど!私は常にマスターの傍にいれます!検索よりも劣っているところは今はあるかもしれませんが、私は他の誰よりもどのスキルよりもマスターの役に立ちたいのです…」


「1番頼りにしてるからこれからもよろしくね」


これからはナービと戦闘時にも事細かに作戦を立てたりできるとなるととても心強い。


〈ご主人様??私の方が1番頼りになってますよ?〉


「リュキもパパのやくにたつ!」


「2人ともありがとう!」


1人じゃなくて他に3人もいると考えたらもうコボルトにも負ける気がしなくなってきた。


〈カグロさん?確かにマスターの役に立ってはいますが私の次なので1番ではありませんよ?〉


〈ナービは何を言ってるの?ご主人様は戦闘中のナービと違っていつも使ってくれてるよ?〉


どっちも頼りになってるってことで収拾を付けて欲しいのだけど…聞いてくれないね。


「マスター!私の方が頼りになりますよね!」

〈ご主人様?もちろん私だよね?〉


「さあ!50階層のレアボスを倒しに行こうか!」


2人の話を有耶無耶にするためにボス部屋に入っていった。



「「「「ギチュッ!!」」」」



【名前】 

【種族】  多口ジャイアントワーム

【年齢】  0

【レベル】 10

【ランク】 S-


【HP】   5000/5000

【MP】   2500/2500


【攻撃】  910

【防御】  720

【魔攻】  740

【魔防】  620

【敏捷】  520

【運】   18


【スキル】

・腐食Lv.MAX・岩石魔法Lv.7・猛毒魔法Lv.3

・喰いつくLv.MAX・気配精密探知Lv.MAX

【ユニークスキル】

・超再生Lv.4


【称号】

・50階層ボス

・レアボス



「きもっ!!!インフェルノ!!」


「「「「ギチュァァ……」」」」


身体中に口が付いた巨大なワームなんてただただ気持ちが悪いだけなので急いで魔法で燃やし尽くした。あ!でも本来はリュキに倒させた方が良かったかもしれない…



『ピコーン!』

『東のダンジョンの全てのレアボスを討伐しました。これより【東の試練】を開始します』


「え??」


アナウンスを聞いて気が付くと何もないただ黒いだけの空間にいた。


「さっきまであんなに役に立つ役に立つって言ってたくせに早速役に立ってねぇーじゃねぇーか!」


ナービに問いかけても何も反応はなかった。そして、持っていたカグロも首にいたリュキも居なくなっていた。


「待ってたぞ」


声のした方に振り返るとそこに人がいた。それも俺にそっくりと言うよりも以前のダンジョンに潜る前の俺そっくりの人が立っていた。


「…誰だ?」


「俺はお前だ!そしてこの試練は俺を倒せば即終了だ!!」


「なら早速終わらせてもらう!」


そう言ってカグロも無いので殴って終わらせようと向かった。


「話は最後まで聞け!!」


「ぐはっ!!」


殴った拳を躱されてそのまま背負い投げのように思いっきり地面に叩きつけられた。


「俺はお前よりもレベルが10上だ!それに全てのスキルも2レベル上だ!」


急いで俺からやつから距離を取って話に耳を傾けた。


「ということは頭脳で戦えってことか?」


「いや!お前の考えは俺も考えつく!だからどんな策でも不可能だ!」


「ということは……」


「そうだ!今この瞬間に俺よりも強くなるか、どうにか俺を説得すれば試練はクリアだ!」


要するに格上と戦いながら強くなればいいってことなのか。だとすると…


「なら武器は欲しいよな!そう言うと思ってほらっ!」


そう言うと鎌を投げつけてきた。


「それはカグロと性能は同じだ!」


なんか試練というわりに親切な気がする。


「もちろん俺も同じ武器は使うからな?」


そう言うとやつも同じ鎌を構え始めた。


「じゃあ行くぞ!」


「よしっ!来い!」


そう言うと再びやつに向かって行った。




「ちっ!くそっ!」


「おらおら!そんなもんか!!」


やはり考え方や戦闘スタイルが全く同じでスペックが負けているのだから勝つことが難しい。それもまだやつは本気を出してもいなさそうだ。

でも★を使って強いユニークスキルを取ったら状況は一変する!


「おっと!★は使えないぞ?ここはあくまで精神世界だ!だから残念なことに★を使うことは無理だ!」


「ちっ!」


考えがバレながら戦闘するのはめんどくさい!!


「お前が1番お世話になったスキルはなんだと思う?」


「もちろんナービだろっ!」


「嘘は良くないなぁ〜〜」


何を言っている?1番役に立っているのはどう考えてもナービだろ。


「俺はお前の考えがわかる。お前以上に」


「だったらなんだよ!」


こうも戦闘中に余裕そうに話しかけられるとさすがにイラッと来てしまう。


「お前にとって1番のスキルはやっぱり【エクストラスキル】だ!」


確かにエクストラスキルはどれも強力だ。


「今も覇王、魔眼、武眼、龍眼を使って戦闘してそして龍魔法で隙あらば一撃で倒そうとしてるよな?」


やっぱりこちらだけ思考が読まれているのはとても狡い!この試練は全然親切でもなかった!!


「そしてなりより1番は殺した相手からスキルを奪う強欲だ!!これは最強だ!」


まぁ確かに強欲はチート過ぎると思えるほど最強過ぎるスキルだ。


「覇王、魔眼、武眼、龍眼どれも言ってしまえば種族スキルだ。その種族だから取得できたスキルだ」


確かにその4つは覇王と龍族に進化したから取得できたスキルだった。


「お前さ?エクストラスキルの中でも最強クラスに強い強欲を大罪者っていう種族のスキルでも無いのに取得してさ………」


やつはそう言うとニヤッと気味悪く笑って少し間をとった。





「デメリットが無いわけないって気付かない振りいつまでしてんのさ?」



「は……?」



そして現在進行形で鎌で斬りあっていたのを止めて距離を取って会話に集中し始めた。

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