世界中でダンジョンが出現したのでとりあえず最強を目指す

第74話 デメリット

「おいおい…今度はとぼけるのか？」

「デメリットなんてあるのか…？」

頭の中が真っ白になったが何とか言い返す言葉が出てきてくれた。

「しょうがねぇなっ！とぼけているお前にも言い逃れできないように言ってやるよっ」

やつは強欲にデメリットがないと言えないような説明を始めた。

「まず簡単なことからいくぞ？あのキノコ頭くんの獲得経験値2倍のユニークスキルを見てどう思った？」

ひたすらデメリットの証拠を淡々と話すと思ったが急に質問が来て驚いたが、その時に思ったとおり話すことにした

「そのスキルを持っていたのがモンスターなら奪えたなぁ〜って思った」

「あははっ！！！ほらなっ！！」

俺はやつがなんで笑っているのか分からなかった。

「なんで笑う？」

「お前は自分がおかしいことに気が付いてないのがおかしくってな！」

「俺は何に気付いてない？」

「普通はお前は★を持っているんだから先に★で取得しとけば良かったなって思うんだよ！でもお前が真っ先に浮かんだのは『奪う』だ！おかしいだろ？」

「1年近くモンスターからスキルを奪ってきたらそう思っても不思議じゃないだろ！」

今までスキルを取得するのはほとんど奪うことで取得してきたのだから地上に出てもそう思ってしまったのは別に普通のことだろう。

「じゃあ次だ！カグロが暴食を手に入れてからお前が喰っていいという前に武器を喰おうとしたことはないか？」

「そ、それはその頃ちょうど喋れる位の自我が芽生えてより強くなって俺の役に立ちたいって思ったから！」

ここでこいつが何を言いたいのかが分かった。こいつは大罪系スキルにはその取得者の感情がその大罪系スキルの感情に引っ張られるとでも言いたいのだろう。

「ほう…そういう言い訳もするのか…ならこれはどうだ？」

そう言うと今度はまた別のデメリットの事例を出してきた。

「ブラットが薬と魔道具まで使ってお前を堕とそうとしたのも無関係だとぉ？」

「は？」

ブラットの事は出てくるとは思っていたがその話で出てくるとは思わなかった。

「それも初犯じゃない。最初は酔ったみたいな状態だったと言い訳できるが2回目は言い訳できるのかぁ？」

「それは……」

「誘惑が成功しても失敗しても嫌われる可能性が高いということくらいは普通は理解できると思わないかぁ？」

「な、なら！一緒に誘惑しに来たレイカはどうなる！？」

あの時はレイカも一緒に来ていた。こいつの理論が正しいとしたらそこに矛盾ができる。

「同じやつを好きな人同士で片方が強引に誘惑するって言われたら止めるか一緒に誘惑しに行くしかないよなぁ？それも誘惑しようとしているやつは傲慢だから止まらない。そうなったら一緒に誘惑しに行くしかねぇーよなぁ〜。自分1人だけ取り残されるなんてなりたくないもんなぁ〜〜」

「…………」

「言い訳は尽きたかぁ？？」

ニヤニヤしながらそんなことを聞いてくる。

「デメリットがあるって証明もあるけどデメリットがないって根拠もある！」

俺もカグロもブラットもそれぞれ強欲や暴食や傲慢ではないところも多い。だから、大罪系スキルに感情が引っ張られるとは言い切れない。

「あぁ確かにな」

「は？」

ここはそのデメリットがないって証拠も潰してくると思ったが反論が来なかった。

「だがてめぇはデメリットがないって言い切ることはできないよな？」

「…でも俺は確定できる証拠はないかぎりデメリットがあるなんて思わない」

「まぁ俺にとってはデメリットがあるかないかなんて知ったことじゃないんだけどなぁ！」

もうこいつが何をしたいのかが分からない。デメリットがあるって言ったりないかもと言ったり訳が分からない。

「おっ！お前に凶報があるぞ！」

「なんだよ…」

正直俺はデメリットの件でいっぱいいっぱいだったのであまりこいつの話を聞く気がなかった。

「お前の妹からSOSが届いてたぞ」

「は！？おい！？いつだ！？」

「3分くらい前か？」

3分…ん？というよりここは精神世界だ。テレパシーは使えないはずではないか？

「本当に妹からテレパシー来たのか？」

「嘘かもしれないぞぉ〜？」

確かにこいつの言うことは嘘かもしれない。しかし本当かもしれない。

「…ここから出してくれ」

俺は地に頭と手をつけて土下座でお願いした。しかしこんなことをしても意味が無いかもしれない。

「いいぞぉ」

「やっぱりだめ…え！！いいの！？」

絶対だめだと思っていたのでいいと言われてびっくりしてしまった。

「ただし条件がある」

「条件とは？」

やはりそこまで上手い話があるわけなかった。

「ここで俺を殺さずに出た場合はお前の中に俺の意識は残る。そこで1~3階層にいるスライムの分裂のスキルを強欲してお前の分裂に俺の意識を入れろ」

「分裂のスキルをもっと詳しく」

「分裂は自分の分身をステータス半分にして作ることができるというスキルだ」

要するにその説明通りなら俺のステータスも半分になってしまうということなのだろう。

「お前は分裂体を得て何をする？」

「お前の知り合いを片っ端から殺す」

は？こいつは何を言っている？全く何を言っているかが理解できない。

「あ！妹は生かしておいてやるから安心しろ」

「お前は何を言っている？」

「はぁ〜簡単に言うとだな！」

やつはため息を吐いてそう言うと、混乱していて状況が理解できていない俺でも分かるように言ってきた。

「妹以外を切り捨てろ。そしたら妹だけは助けてやる」

「そ、そんなことできるわけないだろうが！」

「じゃあ俺を殺せ！早くしないと妹がどうにかなっちゃうかもよぉ？」

「殺すっ！！」

そう言って武器を手に取ってやつを殺しにかかった。