なぜつまらない小説の星が増えるのか?

山田

Sherlock vs Watson vs Six Napoleons

「ホームズ、ぜひ君に解いて欲しい謎があるんだがね」


 ベーカー街221Bの下宿の一室にあるソファに腰掛け私はそう切り出した。

 ホームズはパイプを咥えながら椅子に腰掛け今朝届いたばかりの新聞に目を走らせている。


「何だね? ワトスン君」


 ホームズは新聞に目を向けたまま私の声に反応した。


「いや世間を騒がせるような大きな出来事ではないのだがね、僕にとっては大きな出来事があったんだ。しかし、その出来事っていうのがちょっと妙でね。ぜひ君の知恵を借りたいというわけさ」


「構わないさ。ちょうど事件もなく退屈していたところだからね。その妙な出来事ってやらの話を聞こうじゃないか」


「ありがとう、助かるよ。君は僕がカクヨムで執筆をしていることは知っているだろう?」


「むろん、知っているとも」


「そのカクヨムの話なんだが実は最近スランプに陥っていてね。小説を公開しても星が一つも付かないんだ。『緋色の研究A Study in Scarlet』なんて星が八千万も付いたのだがね」


「ふん、まぁ、そんなこともあるだろうさ」


「ところが三日前に上げた小説には星がたくさん付いたのさ」


「結構なことじゃないか」


「結構なことには違いないがちょっと妙でね」


「どう妙だと言うのだね?」


「それが吐きそうなほどつまらない話なのさ。それでもせっかく書いたのだからと公開はしたのだがね。受けがいいはずはないんだよ」


「書き手と読み手で受け取り方が違うなんてよくある話だと思うがね。その小説は一体どんな内容なんだ?」


「『Sherlock vs Watson vs Six Napoleons』というタイトルで、君と僕と六人のナポレオンが戦う話さ」


「おいおい、そこまでひどいスランプとは流石の僕でも思わなかったぜ。誰がそんな話を読みたいと言うんだ?」


「『六つのナポレオンThe Adventure of the Six Napoleons』の話を読み返していて思い付いたのさ」


「それもどうかしているかと思うがね。まぁ、一つその話を読んでみようじゃないか」


 ホームズはそう言ってポケットからスマートフォンを取り出し私の小説を読み始めた。


「確かにこれはつまらないな。吐きそうだよ」


「そうだろ? でも星はたくさん付くんだ」


「むっ、この小説の最後の言葉は何だね?」


「あぁ、それか? メアリーからアドバイスを貰ったのさ。この小説の最後に相応しいってね。意味は分からなかったがお洒落だろ?」


「まったく呆れたな。この小説に星が付く理由が分かったよ」


「何だというのだね?」


「星が付くのはね、小説が面白かったわけじゃない。暗号を解いた結果だよ」

 とホームズは言った。


 小説の最後は次の言葉で締めくくられている。


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ナポレオンはタイトルを拾っていく。

「1、21、20、4、40、42、43、35、50、3」と順番に。

それがナポレオンの願いなのだ。


私はこの願いを叶えたい。

そのためには注意しなければならない。

ナポレオンは6人揃うと溢れ出ることに。

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