相心流棒術の思い出。(十一)
『柳生神影流』の系譜と、『相心流』の伝系が一部重なることについては、正直、それほど驚きはしませんでした。
この二つの流派が関連がある……ということは以前にも推測していたことですし、それの裏とりができた形です。
素直に考えれば、『木村郷右衛門』の弟子筋の川端家で『柳生神影流』と『相心流』を伝承していた道場があって、ある代で分派したのでしょう。
問題は目録免状前半の、縁起由来です。
前回でも書きましたが、この複数流派の要素をごちゃごちゃに混ぜ込んだキメラみたいな由緒は、そうあるものではありません。
いやま、これ絶対幸若舞(注1)とか太平記(注2)のパロディだよね?みたいなのもあるので、何処かにもっと凄いのがあるかもなのですが……。
より正確には、問題になるのは由緒の適当ではなく、ここに柳生の要素がまったくない――ということです。
『新陰流』の上泉がいますけど、これまでの推測通りに『柳生流』から出たというのなら柳生但馬守などが由来に入ってないのは謎です。
そうして思いかえすと、『書上』には『新陰流』とは別に、すでに『相心流』がありました。
『徳島の剣道』16号の記事を参照するのなら、徳島に伝わった『柳生流』は木村から始まっていて、『書上』に『新陰流』と書かれている師範たちの名前もそこから確認できました。彼らは木村の直弟子くらいになるようです。
そうすると、この『書上』に書かれた頃すでに『相心流』が分離独立していたという可能性も残りますが、元々は『柳生流』とは全然別の流派だったのではないか――ということに思い至りました。
『書上』にも『相心流』とは棒術としかないし、剣術である『貫心流』の師範でもある山本源兵衛が『相心流』の師範も兼ねているようですから、やはり棒術の流派だった『相心流』がまずあって、それが川端家?で併修されていくうちに、一つのものとなったのかも?
その時は確証はなかったのですが、その方が自然に思えました。
とりあえず該当号(注3)での『相心流』の記事からは、このことについてはこれ以上わからないと判断し、別の号も読むことにしました。
その時はとにかく、『徳島の剣道』の古流関係記事を採取が進めるのが最重要の目的となっていましたから。
そうして7号(注4)を読むと――
『天心流兵法 住友治五右衛門吉正』
という記事がありました。
『天心流』!
それどころか『天心流剣術』でもなく、『天心流兵法』!
ここまでくると、偶然にしても出来すぎというか……正直、この記事タイトルを視た時は、本当に私、ギョッとしてしまいましたよ……。
その時は、ただギョッとするだけで済んだのですが、記事を読み進めてから、この住友という人物――通称『川田の一本』を別の記事で読んだことを思い出しました。
それは『柳生流』の記事の号であり、その中で、住友治五右衛門は『柳生流』を学んだ住友嘉七郎の父として書かれていたのです。
(つづく)
注1
「幸若舞は、中世から近世にかけて能と並んで武家達に愛好された芸能であり、武士の華やかにしてかつ哀しい物語を主題にしたものが多くこれが共鳴を得たことから隆盛を誇った」
以上はwikiから。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B9%B8%E8%8B%A5%E8%88%9E
幸若舞『未来記』には、兵法が吉備真備によって本朝に伝えられ、藤原利仁が習い、坂上田村麻呂に伝えられたとあり、それを牛若丸(源義経)が学ぶのだが、藤原→坂上田村麻呂→源義経というルートは、『諸賞流』の藤原(鎌足)から断絶を挟み、坂上田村麻呂に伝わり、それが源頼朝の御前試合で…というものに相似がある。多分、このあたりがネタ元と思う(という私の推測)
注2
「『太平記』(たいへいき)は、日本の古典文学作品の1つである。いわゆる歴史文学に分類され、「日本の歴史文学の中では最長の作品」とされる[1]。ジャンルは軍記物語。成立は室町時代。」
以上はwikiから。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%AA%E5%B9%B3%E8%A8%98
馬庭念流を伝える樋口家の文書(『念流正法兵法未来記目録』)では、相馬四郎義元が念流の開祖、念阿弥慈恩であるとするが、「相馬四郎」は『太平記』で人気の人物で、当時は『太平記』は人気だった。
注3
『徳島の剣道』5号 「相心流十三世井上恰と後見人古谷常太」https://tokuken.sub.jp/tokuken5.pdf
注2
『徳島の剣道』7号 「天心流兵法 住友治五右衛門吉正」
https://tokuken.sub.jp/tokuken7.pdf
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