相心流棒術の思い出。(九)

 その日は本当に、まったく何の予兆もなく訪れました。

 

 とある相互さんと、地元の町のお祭りの話などをしていました。その時に貫心流(注1)の話などになって、それについての記述が書かれている本を検索して見つけたのでした。


『徳島の剣道』(注2)が全てPDFで閲覧できるようになっていたのです!


 一応、その存在は知っていました。 

 相互さんの一人から、何年も前に質問されたからです。

 その方が言われるには、『徳島の剣道』のどれかに古流の居合などについての記事があるらしいとのことで、結局その時はそれは入手できなかったですし、内容も、その記事に参照されているらしい資料は別に入手したとのことでした。

 

 それもその時点から5年ほど前のことであり、私もぼんやりとしか覚えていなかったのですが。


 ともあれ、2020年の1月から『徳島の剣道』は全てPDFでの閲覧ができるようになっていたようで、それをたまたま私は見つけたというわけです。

 

 それからの細々とした経緯は省きます。


 それから一ヶ月、私は『徳島の剣道』を読み込みました――

 と書けばかっこよいのですが、どうもツイログを読む限りでは、創刊号(注3)をちょっと見て後、取り急ぎ興味がある記事を拾い読み、あとはたまにチェックする感じにぼちぼちと読んでいた感じのようです。

 記事の内容は、大半がその年にあった剣道連盟関係の行事大会などの記録と、関係者の寄稿した剣道関係の随想というかコラム的な文章ですが、時に徳島の剣道史に関係する記事が掲載されています。しかも近代以前の、近世の阿波に伝承していた流派についてのものが多く。近代に入ってからの分の記事もありました。

 この『徳島の剣道』の剣術に関係する諸々の記事は、この数年の私の疑問に答えてくれる内容が多くありました。

 それどころか、期待していなかった他の剣術情報も書かれていたのです。

 阿波伝の『心形刀流』(注4)の最後の伝承者の弟で、剣術と形の蘊奥を極めたという人が平成六年まで関東でご存命だったこと。

 明治後半の工業高校の武道部で『直指流』(注5)の指導がされ、卒業生に免状が発給されていたこと。

『柳生流』(注6)についての記事もありました。

 前回までのこともあるし、この記事についてだけ少し述べることにしますと、『木村郷右衛門』は実在の人物ではありますが、江戸時代中期頃の人物であったようです。

 阿波出身の武士で、大和柳生に赴いて柳生家家臣、柳生市之進に柳生流を学び、持ち帰ったということのようです。

 後に木村の弟子が数名、柳生を訪れてそれぞれが柳生流を学んでいたとのこと。

 ここらだけ読んでいると『柳生神影流』の伝承と違っているようですが、同記事には柳生但馬守宗矩の弟子、佐々木茂左衛門が阿波に派遣されて流派普及をしたという記録があるとのことで、もしかしたらですが、このあたりの話が混同されて生まれた伝承なのか、あるいは佐々木の阿波における弟子筋の一人として、『木村郷右衛門』がいたのかもしれません。

 木村が脱藩して柳生にいった理由などもよく解らないようですし……。

 ここのあたりはもう少し後に詰めることになりますが、私は地方における剣術流派の系譜の適当さというか、伝承の変異にむしろ感心してしまいました。

 そうしてあれこれ読んでましたが、ここまでの私は、『徳島の剣道』の総目次を参考に読んでました。

 ありがたいことに、『徳島の剣道』の何号になんの記事があるのかを抜粋した目録が別に用意してくださっていたのです。

 しかし柳生流の記事などを読んで、色々と思うところあった私は、全ての記事を総チェックすることにしました。

 ここまでにだいたい一ヶ月――


 そして開始して数日で、この調査の発端となる、『相心流』についての記事を見つけたのです。

 

 





注1 

「宍戸司箭家俊が開いた日本の古武道の流派。剣術・居合・長刀(薙刀術)・柔術などが伝わっていた。「司箭流」とも呼ばれ、特に薙刀術は司箭流の流名を用いている場合が多い。


歴史

宍戸司箭以前は、源義経を遠祖とし、義経の家来・由利忠太正之の子孫が室町時代末期に安芸国広島へ伝えたと伝承されている。

安芸の五龍城主・宍戸元家の三男であった家俊は、由利正俊より義経伝とされる武術を学んだ。家俊は薙刀術から槍術を編み出し、元亀元年(1570年)に貫心流を開いた。家俊は伊予の河野通昭に貫心流を伝えた。その後、江戸時代に河野氏出身の築山通護(河野より改姓)が広島藩に仕えたことにより、再び広島で伝承されるようなった。築山家は代々、広島藩で貫心流を伝承した。築山通楞の代から築山家は関口流も伝承している。

元禄年間には溝口甚五右衛門鉄柱無端によって阿波国徳島に伝わった。」

 以上はウィキペディアから


https://www.bing.com/ck/a?!&&p=3e85c220b4ce2e15JmltdHM9MTcwMjQyNTYwMCZpZ3VpZD0xMTUzODg1My0xNWZjLTYyMDgtMDdiNC05OGY5MTQ0YjYzMjImaW5zaWQ9NTIxMQ&ptn=3&ver=2&hsh=3&fclid=11538853-15fc-6208-07b4-98f9144b6322&psq=%e8%b2%ab%e5%bf%83%e6%b5%81&u=a1aHR0cHM6Ly9qYS53aWtpcGVkaWEub3JnL3dpa2kvJUU4JUIyJUFCJUU1JUJGJTgzJUU2JUI1JTgx&ntb=1



注2

 徳島剣道連盟https://www.tokusupo.net/tokushimaken_kendo_renmei/が刊行している機関誌。

 ここですべての号が読める。

 https://tokuken.sub.jp/


注3

『徳島の剣道』創刊号

 https://tokuken.sub.jp/tokuken1.pdf (PDF注意)


注4 

『徳島の剣道』18号 「心形刀流の道統」

https://tokuken.sub.jp/tokuken181.pdf (PDF注意)


注5

『徳島の剣道』21号 「阿波の直指流剣術の系譜と関連資料」

https://tokuken.sub.jp/tokuken211.pdf (PDF注意)


注6

『徳島の剣道』16号 「阿波の柳生新陰流剣術」

https://tokuken.sub.jp/tokuken161.pdf (PDF注意)



 

 

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