相心流棒術の思い出。(一)

 皆様は郷土の古武道に興味を持ったりされることはありますか?



   ◆ ◆ ◆



 奇水です。

 ラノベ作家っぽいことしています。

 作中で古武道みたいなのよく出してますが、さほど経験があるわけではありません。

 というか、割と古武道とかの話題をよくツイッターなどでしていますが、今ひとつ、古武道についてよく解っていません。


 そもそも、古武道とはどれほどあるのでしょうかね?


『るろうに剣心』で「剣術五百余流派通じて唯一の徒手空拳技」として、真剣白刃取りを使用して四乃森蒼紫の小太刀を封じているのですが、この「五百余流派」というのは何処から出た言葉なのでしょうか?

 手元にありませんが、藤田西湖先生という方が書いた『どろんろん 最後の忍者』という本がありまして、この本によると、剣術で八百、柔術で五百もの流派があったと書いていたような記憶があります(※注1)

 昔からこの手の流派の数はよく解らなかったようで、テキストによってはてんでバラバラのようです。

 しかし実際、五百や八百より遥かにあったろうことは、綿谷雪先生の『武芸流派大事典』を読むと解ろうかと思います。

 全部の流派を数えたわけではないですが、同名異流、異名同流、様々合わせてもの凄い数の流派が収録されています。

 とはいえ、この大事典、編集に山田忠史先生をつけているとは言え、ほぼほぼ個人の仕事ですから抜けも多いし、誤りもかなりあるというのが現在での古武道界隈での常識です。綿谷先生も作るのにかなり苦労したということをあとがきに書かれています。それでもなお、この本は今持って古武道史研究には欠かせないものだったりするのですからたいしたものです。

 少し話がズレましたが、大事典には多くの流派が記載されていますが、そのすべてに詳細が書かれているわけではありませんし、載ってない流派の方が、もしかしたら多いかもしれません。何せ世の中、どれほどの流派があるか解らないのですから。


 だから、その絵馬武道額に書かれた流派についても、名前だけしか書かれてませんでした。


 武道額というのは、一応私も知っていました。

 馬庭村で起きた、千葉周作と馬庭念流の武道額奉納の際に起きたトラブルは有名です。

 そのような事件を伴っていないのであまり知られてないですが、全国あちらこちらに絵馬武道額が奉納されているというのは、古武道に興味がある者ならば基礎知識の類です。

 その頃の自分は、郷土の武道額の事情をまったく知らず、そこにそういうものがあるというのは知りませんでした。

 四国霊場八十八ヶ所の十番札所、切幡寺の三重の塔に飾られた扁額は、横三六四センチ、縦百六十センチのという大きなもので、後で知りましたが、県内最大規模のものでした。その上半分には木刀、棒、長柄鎌、鎖鎌などが貼り付けられ、下半分には、何やら字が書いてます。

 しかし経年を経て文字は下から見上げただけではよく解りません。

 ただ、こう書かれていたのが見えました。


 相心流


 それが私が人生で最初に見た、絵馬武道額を奉納した流派の名前でした。



(つづく)




※注1 

 この記事に@machida_77さんから

「言及のあった藤田西湖『どろんろん 最後の忍者』(日本週報社, 1958)の剣術柔術の数は、厳密さが意味を持つ話ではないのですが気になって確認したら剣術1247流柔術332流でした。()内は著者が伝書や写しを持っている流派数です。似た名前の流派をどう数えたかが気になりますhttps://dl.ndl.go.jp/pid/2486730/1/133」

 とご指摘いただいた。なんか変な数字の覚え間違いをしていたらしい。

 リンク先は国会図書館デジタル。

 

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