糖尿病の食事制限とコンビニ弁当

(※)体質や病状の程度によって同様のことにはならないと考えられるので、この話は所詮は一例に過ぎないという前提で読んでください。





 糖尿病食というと、何を想像するでしょうか?



 はい。奇水です。名刺には小説家と書いてますが、考証やライター仕事の経験もあります。ゲームやアニメのシナリオも挑戦してみたいですね。今はとにかくお金がかかるので、色々と手は出してみたいものです。

 

 なんでお金がかかるのかというと――

 普通に生きているだけでもお金はかかるものなのですが、四十代も半ばを超えると体にガタがくるのが当然で、私は特に月々の薬が必要だからです。食事制限もしないといけません。これがまたお金がかかるのです。

 しかし食事制限ということは食べる量を減らすことであり、その分、食材は減り、お金は節約できるのではないか?

 と思ったりしたことはないでしょうか。

 ないかな。

 まあある、ということにしましょう。実際のところ、一日の摂取カロリーを抑えるということは、イコールで食事量を減らさないといけないということには間違いないのですから。

 ですが糖尿病食、なかなかに面倒くさいものです。特に炭水化物。これがいけない。食事についてのレクチャーを受けたのですが、炭水化物はほぼ糖になるのですね。糖尿病のカロリー制限には、炭水化物をまず制限した方がいいのではないかという話もあるくらいです。これが貧乏人には辛い。いわゆる主食ということもありますが、米や粉ものというのは、とにかく安いわりに満腹感が得られる食材ですから、それを選択肢から外すと、必然と食事代が高くなります。

 糖尿病は極論すれば血糖値があがりっぱなしになり、糖が血管や内蔵を傷つけることによって体を壊す病気――ですので、糖は摂らないのに越したことはありません。

 とはいえ、摂らなすぎると血糖値を下げる薬の効果で低血糖になるかもしれないし、それはそれでたいそう危険です。

 だからまあ、ほどほどに糖質を摂りつつもあがりすぎないようにするのが好ましいわけですが。

 そこで重要になるのが、野菜のような繊維質の多い食べ物を先に食べておくことです。ダイエット食でいうところのベジタブルファーストとか言われたりするアレですが、ダイエットのための効果があるのかは私にはわかりかねますが、血糖値が上がりにくいという効果はあるらしいです。そのように説明を受けました。確か。


 そんなわけで、私は最初、食事に必然と野菜を購入し、糖質を減らす食事を心がけるか――と考えたわけですが。

 考えてみると、これがまあ、どうしても割高になるわけです。

 野菜というのはものによりますが、どうしても炭水化物などに比べると割高感がありますし、その上に保存も効かない。漬物にするという手もありますが、それもなかなか面倒くさい。

 あとまあ、糖尿など患っていると腎臓も悪くしていることも多く、私も塩分はできるだけ控えてくれと言われました。具体的にはWHO推奨6グラム(具体的な数字は聞いたのですが、うろ覚えですし、間違ってたら面倒なのでだいたいこれくらいの数度いうことで)程度。

 日本人はただでさえ塩分摂り過ぎだし、漬物、軽く食べる程度はそら問題ないでしょうけども、毎日そうばくばく大量に食べるわけにもいかない。

 そういう色々を考えると、繊維質はできるだけ摂る方向で食事するとして、努力目標として、カロリーコントロールの方向で頑張ろう……ということになりました。

 金があれば解決するんですけどね。

 金がないので仕方ないです。


 そもそも、私はどういう収入で生活をしているのかというと、基本、印税です。

 紙の本がベースですが、電子書籍もなかなか馬鹿にはできません。ここらの内訳は説明しませんが、個人的な感触をいうと、新刊がでた前後は電子書籍で旧作にも動きが生じますね。

 システム的に、新刊を電子で買った時に旧作、他の作品の紹介がされるからではないかと思うのですが、よくわかりません。

 まあそういうメカニズムで本が売れる仮定すると、新刊がでない年は旧作も売れないということになり、現状、それはあたっているのですが……。

 そんなわけで、私は食費にお金をかけられない状態でした。


 入院する前の私はというと、だいたい同居人氏の持ち帰る廃棄弁当で食いつないでいるという現状でしたが、この同居人氏については別に語ります。一応軽くだけ説明すると、二十年来の友人で、元々大阪出身で就職した会社の支社に配属され、その後で本社が廃業し、支社が独立したものの、労働環境は激変し、タコ部屋めいた給料がほぼでない環境でタダ働きさせられていたという状態だったそうです。

 …………到底、現代日本の話とは思えませんね。

 さすがに耐えかねて私に助けを求めてきたので、今の場所に住んでもらっているのでした。

 これが二十代女性とかならライト文芸系の話にできるかもですが、彼は私より二つ年上で、友人関係ではありましたがそんなに格別に親しいというわけでもなかったので、まあとりあえず私の仕事場に住んでもらうことにしたのですが。

 その彼が大家さんに紹介されたのが近所のコンビニのバイトで、ほぼ毎日、何かしらの廃棄弁当を持ち帰って、日々の食費の足しにしていたのでした。


 廃棄弁当については色々とあって、これが違法行為ではないか、あるいは店によって色々とあるのではないか……とか色々と思うのですが、その店では普通にバイトのためにロスになる弁当、菓子パン、サラダ、デザート…が冷蔵庫に入れられることになっており、彼が持ち帰るそれが、彼と私と、あと近所に住むニセ遍路の人の生命線となっていましたが。

 

「さすがにコンビニ弁当で糖尿病の食餌療法は無理だろ」


 と入院中思っていました。

 しかし足が駄目になった以上は車に乗れないですし、車に乗れないといろいろと仕事も限られます。

 コンビニ弁当でも、特にカロリーが少ないものを選んでなんとか食事制限できれば……などと、当初、半ばやけっぱちな気分でいたわけですが。

 そんなわけで、退院したのが五月だったか六月だったか。

 とりあえずはまだ残っていた連載分の原稿料などで、野菜などを購入してサラダなどを作りつつ、コンビニ弁当を食べるという生活に突入しました。

 私は一ヶ月もしないうちに、血糖値コントロールは破綻すると見積もっていたわけですが。


 しかし意外なことに、血糖値のコントロールができているではないですか。


 それは数日、数ヶ月……いや、一年以上も計測のたびに許容値以下を示しています。勿論、薬を服用しつつですが、少なくとも血糖値その他の数字もそんなに悪くないという状態です。

 これはどういうわけなのか――理屈をいえばそれほど意外ではないんですが。

 先に理由を述べると、コンビニ弁当はカロリー表示がされていて、食事制限には最適……とまではいかずとも、簡単に一日の摂取カロリーの計算ができたので、私は無理なく食事制限ができたのでした。

 当然、コンビニ弁当ですから栄養価は偏ったものですし、色々と調味料も入ってるのでそればかりだと不健康だと思います。

 何せカロリーベースでの制限です。同居人氏が持ち帰る廃棄弁当も、選べるものではなくて、あくまでもその時に余ったロスですから、コンビニおにぎりやパスタという、糖質だけということになるのも珍しいことではありません。

 カロリーの辻褄を合せるだけの食事が体によいとは到底思えませんが、血糖値のコントロールができるというのはなかなか心強いことです。

 あとは食塩については……これもまた、案外と少ない。

 ものによっては3グラムを超えるものも当然ありますが、カロリーが500から600前後のものに限定していくと、結構2グラム程度のものもあります。

 最近のコンビニは減塩とか健康志向なのでしょうか?

 それとも、昔から実はこの程度のものだったのでしょうか?

 さすがに今となってはわからないのですが、色々と調べてみると解るそれらのコンビニ弁当の事実と、投薬こみとはいえ、なんだかんだとコントロールできている血糖値が重要です。

 私自身がいい加減に食事を大量に摂らなくても我慢できるようになっている、ありていにいって、年食って食が細くなっているというのも幸いしました。

 おにぎり二個三個、幕の内弁当の一つで満足できる日がくるとは思ってませんでした。

 本当、若いってすごいことだったんだな……などと思います。


 欲を言えば、これに繊維質を増やしたいところですが、そうするとサラダのドレッシングにまた多くの塩分が必要になり……。

 なかなか完璧にはいかないものです。

 まあ、繊維質はとらずとも血闘はコントロールできているので、重要になるのはビタミンなどの方ですが。

 これも一年くらい、サラダ多めに採って、調味料少なめにして試している現状では、数値的には問題ないようでした。

 ちなみに、最初に書いた野菜については、半分くらいは近所のニセ遍路の人がくださることで、なんとか賄うことができるようになりました。種類は偏っていますが、ありがたいことです。

 こういう騙し騙しがいつまで通用するかは解りませんが、今のところはコンビニ弁当ベースの食事は、なんとか上手くいってるようです。

 

 しかしコンビニ弁当、本来は高くつきます。

 安くて500円は軽く超えるものです。

 つくづく、同居人氏がコンビニバイトでよかった。

 あの時、助けたことが、こういう形で返ってくるとは……。


 情けは人のためならずって本当だったんだ……などと思いつつ、今日もコンビニ弁当を食べているわけです。

 

 

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る