第35話 ありえないもん

涼也side


るなちゃんには、沢山、沢山言いたい事が渦巻いているはずなんだ


良い意味で謙虚で 。ちょっと直さなきゃいけない遠慮しぃなるなちゃん。 まずは俺から話せば話やすくなるよね?


涼也「るなちゃん。 あの日の事が起きて。明らかに向こうの施設側が悪いのに認めようとしなくて。悔しくて。言い逃れ出来ない確固たる証拠が欲しくて俺は… るなちゃんに俺もだけど。二人で逐一 向こう側の言動とかを録音して残そうって言ってさ。 そんな事より、体調崩しかけて限界に達しそうになっていたるなちゃんを気遣ってやれずに…本当にごめんな」


るな「 そんな…体調管理が出来なかったのは私の責任だもの…」


涼也「体調管理が出来無くなる程追い詰めたのは誰?」


そう言うと、黙りコクったるなちゃん。少しして 、るなちゃんが潤んだ瞳に光を宿して…


るな「 お年寄りは、 人生の先輩なのよ。みんなで畳に寝かせて おむつを替える時だって、何の仕切りも無しに変えるなんてそんな可哀想な事ないもん 」


涼也「うん…」


るな「 食事にお薬を乗せたりとか 、車椅子にベルトで… 紐で手すりに結ぶとか、ベッド柵に紐を…手足をなんてありえないもん」


涼也「うん…」


るな「脳梗塞とかで片側に麻痺が残っても、動く方の手でお年寄りは上手く服のボタンを止めたり、おしぼりだって巻く事が出来るの。出来ない所を介護者が手伝うの」


涼也「出来ない事を『一人でやらせろ』とかありえないよな」


るな「出来ない事をするという事は、時間が掛かるという事なの。なのに『早くしなさいよ』とかお年寄りに 矛盾した事を言うなんてありえないもん」


涼也「るなちゃん、そしてふうちゃんに『 早くさせなさいよ』 『そんな事に時間掛かけてるんじゃないわよ』とかさ。種橋(たねはし)は、二人を目の敵にして…俺が、勤め初めた時から『ありえません』って種橋に言い続けていたからね。るなちゃんと、ふうちゃんの事を庇う言動をした時から感情的になってさ。絶対自分のイライラを二人にぶつけてたんだ…ゴメンね」


るな「リョウくんは悪くないもん!」


涼也「他の職員達も種橋に右ならえで。皆でお年寄りに酷い態度に言動をしてさ赦せねんだよっ!会社の…イヤ、俺達の意見なんて聞く耳を持たないでっ」



こんな矛盾に一番抵抗したかったのは…お年寄りだったんだ

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る