第37話 『思いがけずフェス限定復活だ!!』

 〇早乙女詩生


『思いがけずフェス限定復活だ!!』


 俺がそう言うと、まさかDEEBEEが出るとは思ってなかった客席からは、歓声と悲鳴が上がった。


 …ありがたいよな。

 俺達、解散ライヴもやらなかったし。

 デビュー当時からずっとファンでいてくれた人達にも、何のお返しも出来なかったから…



 あー…何だろ。

 DEEBEEで歌ってて、こんなに楽しいの…

 初めてな気がする。


 みんな、親がミュージシャン。

 それだけで、七光りだの何だの言われて来た。

 始まる前から、プレッシャーを抱えてた気がする。


「……」


 彰のギターソロ。

 明らかに、上手くなった。

 それは客席も気付いてるのか、みんな彰の手元に釘付けになってる。


 それに…希世も。

 DEEBEEでやってた頃より、格段に上達した。

 たぶん、クワフォレが本当にすげーバンドなんだろうな。


 以前の俺だったら、変に妬んだかもしれない。

 だけど今は、彰と希世が世界を目指せるかもしれないほどのバンドにいる事が、心から嬉しい。

 俺にはそれを叶える力がなかったけど…

 きっと、ノン君と学となら。

 目指せるはずだ。



『オイシーモンさん!!観てくれてるかー!?あなたのために歌います!!』


 空を指差して言うと。


『詩生、藤原さん生きてる(笑)』


 映が笑いながらツッコんだ。


『本名出すなって』


『あ、やべー』


『って、みんな知ってんじゃ?』


 今までMCでも喋った事のない彰までが参加して。

 DEEBEEらしからぬステージに、客席は若干戸惑いを

 を見せつつも…


「知ってるー!!オイシーモン藤原ー!!」


『大正解。みんなで藤原さんに元気を!!』


『One!! Two!!』


 希世のカウントで始まった『Let's Go』は、ノリノリのナンバーで。

 客席もみんな飛び跳ねてくれる。


 あー…気持ちいいな。

 今までコーラスなんてした事のない彰が、ガツガツ参加してくるのが笑える。

 それに関しては、映も面白いみたいで。

 彰とすれ違う瞬間に、耳元で何かをつぶやいてた。


 F'sでは京介さんと鉄壁のリズム隊に徹してる映も、今はギターの旋律のようなベースライン。

 ステージの最前に立って、客を煽るサマは…ほんと、いつ身に着けたんだよって。これも笑いが出る。



 俺達、中坊の時から一緒にやってたのにな。

 色んなステージに立って、テレビにも出た。

 それなのに、こんな…自由な事が出来てなかったなんて。


 …ま、最後に最高のステージを見せる事が出来て…良かった。


 大スクリーンには、歌詞とDEEBEEの昔からの映像も流れてて。

 俺達の出演、急に決まったのに…映像班…どれだけ無茶が好きなんだよ。って思った。

 …本当、色んな人に支えられてる。


 歌いながら、会場を見渡した。

 俺は…一生、この景色を忘れない。



『Thank you!!』


 五曲終えて、DEEBEEのステージは終わった。

 四人でフロントに集まって、肩を組んだ。

 客席からは、大きな拍手と声援。

 深くお辞儀をして、顔を上げると…


「お疲れ。サイコーだった。」


 映が、手の平を見せた。


「ほんと。めっちゃ気持ち良かった。」


 みんなで、ハイタッチを交わした。

 ついでに、ハグもした。


 らしくねーって笑い合って、三人が客席に手を振りながらステージ袖に引っ込む。

 それと同時に…俺は一旦置いてたギターを手にする。


『よし、行け』


 イヤモニに、里中さんの声。


 俺は…小さく深呼吸をして、ギターを弾き始めた。



 さあ。

 俺と華月の…新しい夢への第一歩だ。





 〇桐生院華月


「よし、行け。」


「はい。」


 里中さんの声を受けて。

 あたしは…ステージに向かう。



「…え…っ?」


「あれって…」


 客席だけじゃない。

 ステージの下手にいる人達からもざわめきが聞こえた。


 さっきまで詩生とステージにいた、映と希世ちゃんと彰君も、目を丸くして見てる。



「え…ええええ?あれって、モデルの華月ちゃんじゃない!?」


「えーっ!?詩生とユニット!?」



 詩生がギターをかき鳴らして。

 曲が始まった。


『Thanks for coming!!』


『We are MOON SOUL!!』



 アコースティックギターだけなのに、そう思えないほど層の厚い曲。

 て言うのも、あたしと詩生がずっと二人で歌うから。

 キャッチーなサビでは、ほんのりとマサシさんの阿波踊りを思い出して…笑顔になる。


 あたしが笑顔になるたびに、客席も花が開いたような顔ばかりになって。

 あたしは…それが嬉しかった。



 2コーラス目に入ると、ギターが二本になって。

 それに気付いた客席が、少しキョロキョロし始める。

 間もなくして、ベースも加わって、二人がステージに現れる。


「…え?あれ誰…?」


「って…ベースも入ったけど……えっ!!ベース、F'sにいた臼井じゃん!!」


 やがてそれは、ドラムもキーボードも入って…あたしと詩生のMOON SOULはバンドサウンドに変わった。


 会場の至る所に設置されてるスクリーンに、メンバーと名前が映し出される。


『Vo:Kazuki』


『G&Vo:Shio(ex:DEEBEE)』


『G:Shin Asai(ex:FACE/TRUE)』


『Ba:kazuto Usui(ex:FACE/F's)』


『Dr:Tamotsu(ex:TOYS)』


『Key:Masashi(ex:TOYS)』



「え―――!?」


 その驚きの声は、客席からだけじゃなく。

 スタッフや控えてる出演者側からも聞こえた。


 …うん。

 すごいサプライズだよね。

 …あたしだって、驚いた。


 詩生が、父さんに『マサシさんとタモツさんをください』なんて。


 あたし、初めてのステージに…すごい人達と立ってる。

 お客さん達の視線も、すごく忙しそう(笑)


 だけど…


 あたしも、負けない…!!


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 いつもありがとうございます♡

 せっかくフェス始まったのに、雑ですみまめーんm(_ _)mユルシテ

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