迷子の子供3

この子の姉か…良かったな見つかって。


それに今さらだが、この子の名前はマスフェスって言うのか。


俺がそう思っていると、マスフェスの姉と思われる少女はマスフェスを抱き締めながら言う。


「もう…お姉ちゃん、すっごく心配したんだからね!」


「あのね、ラフィンお姉ちゃん。この人が一緒にラフィンお姉ちゃんを探してくれたんだ」


マスフェスがそう言ったら少女はマスフェスを抱き締めたまま俺の方を見ながら言ってくる。


「弟をありがとうございま…ってあなた、この前私が運んだ!」


運んだ? もしかしてこの人が俺を家まで運んでくれた‥。


そう思った俺は少女に聞いてみる。


「じゃあ、あんたが剣聖ラフィンか?」


すると少女は慌てながら俺に近寄って来て、俺の口の前に人指し指を立てながら言ってくる。


「しっ、声が大きい!」


「そ、そうか、すまなかった」


そう俺が謝ると、ラフィンはマスフェスの頭を撫でながら俺に言ってくる。


「それにしても極度の人見知りであるマスフェスが私達家族以外の人に懐くとはねぇ」


ラフィンがそう言い終えると、こちらへタキシードの様な黒色の服と首から縦長のリボンの様な黒色の布をぶら下げている五人の男性が走って来る。


俺達の元に来るとその内の一人の男性が息切れしながらラフィンに言う。


「ラフィンお嬢様、そろそろお時間です」


「そう…分かったわ」


ラフィンはそう男性に言ったら、マスフェスと手を繋いで立ち去ろうとする。


そうだ、この前の礼を言わないと。


そう思った俺はラフィンに言う。


「ラフィン、この前はありがとう」


「いいのよ」


そうラフィンがこちらを振り向いて言ったら、マスフェスも振り向いて笑顔で俺に言ってくる。


「お兄ちゃん、またね~!」


ラフィンとマスフェスが歩き出すと男性達はラフィンとマスフェスを守るように囲んで歩いていき、一人の男性がラフィンに言う。


「まったく、ラフィンお嬢様とマスフェス様はお忍びで来ているんですよ? もっとアレスタン家としての自覚を持ってください」


「はい、はい。分かってるわよ」


そうラフィンは適当に男性に返事をした。


ラフィンとマスフェス達が立ち去っていった頃は夕方になっていた。


結局依頼を受けれなかったな、帰ったらアユナに謝らないと。


俺はそう思いながら家に帰るために歩き出す。




あれからさらに道に迷ってしまい、家にたどり着く頃には夜になっていた。


もう夜になってしまったな…これではアユナに怒られてしまうかもしれない…。


俺はそう思いながら玄関のドアを開けて言う。


「ただいま。帰ったぞ、アユナ」


そう俺は言ったが、アユナの返事はなかった。


寝たのか? まぁ、こんな夜中だし、寝ていて当たり前か。


そう思い俺は部屋へと入ると、皿は割れて床に散らばり、物が床に転がっており、椅子が倒れていたりと、散乱している部屋を目の当たりにする。


「……これは」


そう俺は驚きながら呟くと、あることに気付く。


アユナ、アユナがいない!


そう思った俺は家中を探し回りながら叫ぶ。


「アユナ? アユナ、どこにいるんだ!」

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