記憶の欠片

意識が戻ると叫び声や怒鳴り声や何かを斬る音などで辺りは騒がしく、俺は目を開く。


「うぅ、ここは…」


目を開けるとそこは戦場で人同士で殺しあっていた。


ここは戦場なのか?


俺はどうしてここにいるんだ…そもそも俺は誰なんだ?


そう思い俺は必死に自分の名前や家などを思い出そうとするが中々思い出せない。


ダメだ、何も思い出せない…。


俺がそう思った直後に目の前で戦っていた兵士が大男に大剣で足を切断されて倒れた、弱った声で呟く。


「誰か…助けて、くれ」


「ふん、次は貴様だ!」


大男はその兵士を踏み潰してとどめを刺し、俺に気付くとニヤニヤしながら近付いてきて言ってきた。


次は俺が殺されるのか? 嫌だ死にたくない、怖い怖い怖い!


俺は大男に恐怖して大きな声で叫んで言う。


「く、来るな! 俺に近寄るなぁ」


「ひっひひ、良い鳴き声をするじゃないか」


そう大男は笑いながら言ったら大剣を俺に振ってくる。


俺は避けようとしたが間に合わずに右腕が切り落とされてしまい、落ちた自分の右腕を見ながら叫ぶ。


「うわぁぁぁぁ! 腕が、俺の腕が」


「もっとだ、もっと泣き叫んでみろよ!」


そんな俺を見て大男は興奮しながら言って、ゆっくりと俺に近付いて来たので、俺は後退りしながら泣き叫ぶ。


「死にたくない、死にたくない、死にたくない!」


「なんだ? 壊れちまったかのか、つまらねぇの」


大男は不機嫌そうに言ったら俺に大剣でとどめを刺そうとしてきた。


俺は自分が誰か分からないまま死ぬのか…そんなのは嫌だ!


そう思っていたら、ふと近くに落ちているナイフに気付く。


そうだ、せめてこいつを道連れに!


そう思うと俺は大男の攻撃を避けながら落ちているナイフを拾う。


「な…こいつ、急に動きが素早く」


大男は困惑しながら呟いたと同時に俺のナイフが大男の胸を突き刺す。


すると大男は口から血を吐いて倒れ、俺も意識が薄れてきて倒れてしまった。


しばらくすると戦場は静まり返り、俺は物凄い眠気に襲われながらも呟く。


「死に、たくな、い…」


俺が呟いた途端に誰かが走る足音が聞こえ、足音は徐々に近付いてきて俺の視界に姿を見せる。


足音の正体は金髪でポニーテールの少女だった。


「この人、生きてる…ここに生存者がいるわ、早く来てちょうだい!」


金髪でポニーテールの少女がそう叫ぶと、俺は何故か安堵し目を閉じた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る