片腕の復讐者の記憶

錆びたナイフ

お礼? お礼をされるような事はしてないが…まさかこの前殺した傭兵の報復か?


俺がそう思って男女二人の冒険者を警戒していると、彼らを見てアリシヤが呟く。


「あら、貴方達。この前の…」


「はい、この前は盗賊から助けて頂き、ありがとうございました!」


そう言ったら彼らは俺とアリシヤに頭を下げた。


盗賊? あぁ、そういえば狩りをしに森へ行った時に…その時の事を言っているのか。


それにしては女の方ってこんなに身長高かったっけか?


そう思っていると冒険者の女性が俺とアリシヤに言ってくる。


「あの、何かお礼をしたいのですか、私達に出来ることはありませんか?」


「礼なんていい、それに礼ならとっくにしてもらったじゃないか」


「そうでしたっけ…? けど、改めてちゃんとしたお礼をしたくて、それでマスフェスさんに渡したい物があるんです」


冒険者の女性がそう言ったら、冒険者の男性が腰にぶら下げているバックから布に包まれている何かを取り出す。


「聖なる力が込められたナイフです。お守りに使ってください」


冒険者の男性はそう言いながら布をどけると錆びているナイフが現れ、俺に差し出してくる。


錆びてないか? まぁ、せっかくだしありがたく使わせてもらうか。


そう思いながら俺は男女の冒険者に言う。


「ありがとう、大切にするよ…」


アリシヤはしばらく錆びたナイフを見つめていると、何かに気付いたのか真剣な表情をして俺に言ってくる。


「触っちゃだめ、マスフェス!」


しかし、アリシヤが言う前には既に俺は錆びたナイフを手に取って、手遅れでだった。


すると錆びたナイフから禍々しいオーラや叫び声が聴こえてきて、強い頭痛に襲われながらも俺は呟く。


「なんだこの悲鳴…くっ、体に力が……」


俺は体に力が入らなくなり、倒れ込んでしまう。


するとアリシヤが心配そうに姿勢を低くし、俺に寄り添って言ってくる。


「マスフェス、しっかりして!」

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