思わぬ伏兵

傭兵を殺し終えた頃には真夜中で辺りは真っ暗になっていた。


服の汚れを叩き落とし終わるとアリシアが言う。


「さてと…戻るわよ、マスフェス」


そう言うとアリシアは来た道を戻って行き、俺もアリシアの後を追って歩き出すとビスマルが俺の肩を掴んで怒った口調で言ってくる。


「おい待てよ、お前! さっき俺を見捨てようとしたよなぁ」


「それがどうした?」


俺がそう答えるとビスマルは微笑みながらアリシアに同情を求める。


「なぁ、君もひどいと思うよな? こんな奴とは別れて俺と…」


そう言いながらビスマルがアリシアの腕を触ろうとした瞬間、アリシアが木の枝でビスマルの手を叩いて言う。


「邪魔」


ビスマルは信じられないという表情をしつつも、苦笑いをしながらアリシア聞く。


「え? 今なんて」


「鬱陶しいのよ」


そんなビスマルにアリシアは呆れたような感じで言った。


ビスマルは目を点にしてその場に立ち止まってしまったが、しばらくして走って俺達の後を追って来た。




野宿をしようとしていた場所に戻り、焚き火をして一人で待っていた冒険者の少女にアリシアが言う。


「戻ったわよ、残念だけどノイスは」


「殺されてたんでしょ? あいつらしくじったようね。まぁ、私一人で十分だけど」


冒険者の少女はアリシアの話を遮って言った。


俺とアリシアは冒険者の少女が言ったことに驚いたが、ビスマルはアホなのか理解できていないようで目を点にしていた。


どうしてノイスが死んだことを知っているんだ? まさか、こいつ!


そう思っていると冒険者の少女がビスマルに近付き、ビスマルは微笑みながら両手を広げて言う。


「ふ、俺を分かってくれるのはお前だけだ‥どういうつもりだ?」


「分からないの? 貴方は人質にされたのよ。どう、マスフェス、貴方の弟子を殺されたくなければ自分の首を斬りなさい」


冒険者の少女はビスマルの首にナイフを突き付けて脅してきて、俺に自殺するように言ってきた。


すると隣にいたアリシアが俺に言ってくる。


「マスフェス、その必要はないわ」


「どういう事かしら? アリシア・ベルレン様♪」


冒険者の少女は知っているはずのないアリシアの本名を言った。


こいつ、どうして嬢ちゃんの名前を…。


そう思っていたらアリシアが俺の剣を鞘から抜いて言う。


「こういうことよ、えい♪」


アリシアは躊躇なくビスマルごと冒険者の少女を剣で突き刺した。


この剣の使い方、素人じゃないな。


「……弟子ごと殺すなんて…さすがは残…」


冒険者の少女が口から血を流しながら何かを言いかけた途端にアリシアはビスマル達に刺さっている剣を抜いて、剣で冒険者の首をはね飛ばす。


ビスマルと冒険者の少女が倒れるとアリシアは剣に付いている血を振り払ってから俺の鞘にしまって言う。


「……マスフェス、帰るわよ」

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