冒険者登録

俺が呆気に取られていると、隣にいるアリシヤが俺の服を親指と人差し指で引っ張りながら言う。


「マスフェス! 早く冒険者登録しようよ!」


「あ、あぁ、そうだな」


俺はそう返事をしてアリシヤと一緒に冒険者ギルドの受け付けに行き、俺が受付嬢に話しかける。


「嬢ちゃんの冒険者登録を頼む」


「かしこまりました、どのようなお名前で登録しますか?」


名前か、そう言えば考えてなかったな。


そう思いながら俺はアリシヤを見ると、アリシヤは元気な声で言う。


「ベレシアでお願いします!」


「かしこまりました、しばらくお待ちください」


受付嬢はそう言うと奥の部屋へと入っていった。


冒険者登録するのに二分くらいかかったような気がするな。


そう言えば嬢ちゃんが今日は依頼を受けるって言ってたっけ、じゃあ待ってる間に依頼でも決めておくか。


「嬢ちゃん、先に依頼でも決めておこう」


「そうね! じゃあ、これはどうかな?」


アリシヤは依頼の紙が貼ってある掲示板を見て、一枚の依頼の紙を指差しながら言った。


ゴブリン退治か、初めての依頼にしては割りと難易度は高いが、俺もいるから大丈夫だろう。


「わかった、この依頼を受けるか」


冒険者ギルドの奥の部屋から先程の受付嬢が戻ってきて、俺達に言う。


「ベレシアさん、冒険者登録が終わりましたので、受付まで来てください」




「はい、どうぞ。このコインは身分証明になるので失くさないようにしてください」


「ありがとうございます!」


受付嬢はアリシヤに冒険者の証しでもあるコインを渡し、アリシヤは受け取ったコインを嬉しそうに眺めている。


そんなに冒険者になりたかったのか。まぁ、嬢ちゃんが嬉しそうで何よりだな。


そう思いながら俺は受付嬢に依頼のことを言う。


「ゴブリン退治の依頼を受けさせてくれ」


「かしこまりました、ゴブリン退治ですね。お気を付けてくださいね」


受付嬢は笑顔で俺とアリシヤに言い、俺達は冒険者ギルドを後にしようとすると、少年一人と少女二人の冒険者が近寄ってきて俺達に言ってくる。


「君、可愛いね。今から俺達は冒険するんだけど、そんな使えなさそうなおっさんなんて捨てて、俺達と一緒に冒険しない?」


「そうよ、こんな使えなさそうな奴なんて捨てて一緒に冒険しましょ!」


は? いきなりなんだよ、こいつら…それに俺はまだおっさんじゃない!


俺がそう思っているとアリシヤは、先程までの笑顔を止め、冷たい表情で彼らに言う。


「マスフェスも一緒ならいいですよ」


アリシヤの提案に反対して少年がニヤニヤしながらアリシヤに言う。


「は? そんな奴なんてほっといて…」


「マスフェスが一緒じゃないなら嫌です」


「……はぁ、分かったよ、そいつも一緒でいいよ」


少年は諦めたのか俺が付いてくることを承諾した。


はぁ、何様なんだよ、こいつら…。


けど、嬢ちゃんが俺を見捨てなかったのは、ちょっと嬉しかったな…。


そう思いながら俺達は冒険者ギルドを後にしてゴブリン退治へと向かう。

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