第2話
200個も…ヒトミは気が遠くなるような気がしながらも、終業時間までになんとか200個ひねり出した。
オフィスからの帰り道、ドーナツショップに入ったユカリとヒトミは、それぞれドーナツふたつとコーヒーを買い席についた。
「どう?200個出た?」、
「なんとか…だけど、これって企画の…でしょう?私の好きなものリストアップしても、意味ないんじゃ?」
「じゃあ聞くけどさ。ヒトミが10歳の時に、好きだったものって何だった?」
「え…10歳…なんでまた急に。たぶんマンガとかアニメとかだった気がするけど」
「ほら。まだ10数年しかない経ってない時の記憶もうろ覚え。じゃあ反対に、50歳になる頃には、何に興味を持ってると思う?」
「え~?そんなの想像もつかないよ。50歳かあ。子供とか?でも子供なら結婚してるってことで。じゃあ旦那様とか。でも今現在カレシもいないし。全く想像もできないよ、そんな先のこと」
「でしょ?だから『今のヒトミ』なのよ。今の自分のことなら、わかるでしょ?」
「そりゃ、今の自分のことなら。でも…売れそうなって言われてるよ?私の興味があるもので、売れるにつながりそうな物、ない気がする」
「それは、わからないじゃない?だから、まずはそれを探るためのとっかかりが、『今のヒトミの興味があるもの』なのよ。ヒトミが欲しいものは『日本中でヒトミだけ』が欲しいわけじゃないでしょう?きっと他にも、何人か欲しいと思う人がいて。ヒトミもやってると思うけど、気に入ったものは友達とか家族に勧めちゃう。それで広まっていく…こともあるのよ」
「そうなのかな…でも、そうかも。確かに友達が持ってて、いいなとか欲しいなって思うときもあるし。反対に、私が持っているもので、友達に『どこで買ったの?』って聞かれたものもある」
「ね。ではまずは…リストを見せて」
「はい…これ」
「え~と…アイスにハイヒール、オフショルダーネックのTシャツに…なんだかバラバラなような一貫性があるような」
「えへへ…」
「褒めてないって。でも200個も、ダブりなしで出したのはすごいと思うよ。じゃあ明日は、これをジャンル分けして」
「明日?今、じゃなくていいの?」
「あんたここでやるつもり?別にいいけど、私はつきあわないよ?」
「あ…ゴメン」
「じゃあまた明日ね」
それから毎日のように、終業後の『ユカリさんのアドバイスタイム』が続いた。
ジャンル分けから絞り込み。
関連ワードと発展づけ…初めのうちは、宿題をこなすだけで精一杯だったヒトミだが、徐々に方向が定まり形が見えてきだしてくると、慣れてきたのと面白さが出てきたのとで調子があがり、宿題から半歩、一歩先を読んだような案を、出せるようになった。
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