第8話 「背番号」

タイトル「背番号」 


国体の本戦うの前の東北大会が始まる前に監督の石井に呼び出された一心。そこで石井から告げられたことに一心は驚いていた。

「え、なんでですか?」

「まんつ、いいでば」 

石井から秋田県代表のユニホームを渡された一心は驚いていた。一心が受け取った背番号は5番。本来なら上級生が順番に着ける番号で一心が付ける番号としては8番が今までの一年生が付けていた番号でも最高順位。帝国高校伝説の男である伊集院でさえ、1年生からスタメンで出ていたのに7番だった。

「あの…監督これは?」

「南禅寺が頭下げてきたべしゃ…親父さん優勝すればみずがっぺがな」(南禅寺が頭を下げてきた。親父さん優勝すればみつかるかもな)

「…え、南禅寺さんが?」

 一心が視線を送ると南禅寺が親指を立てている。

「話は流稀亜から聞いてたよ。俺にすぐ言えよ!」

「え…その…ありがとうございます」

「気にするなよ!」

 一心は改めて南禅寺の気使いや優しさがうれしかった。そして優勝して行方知らずに父に届くようにと、国体優勝に対する思いも強くなっていった…

 一心はユニホームを貰ったその日は興奮を抑えきれず、ユニホームの画像を愛梨に送っていた。



 秋田県(帝国高校)はその後、本戦の予選。地方大会(東北大会)を見事に一位、優勝で通過し、国体へ望むことになった。2位は宮城県だった。

 埼玉県で浦和市で行われる「青空国体」は各都道府県の代表、総勢24チームで行われることになった。

 秋田代表のいるブロックのちょうど反対側には北海道代表がいて順調にお互いに勝ち上がれば準決勝でまた対戦する予定だった。そして、大阪代表は逆ブロックにいた。お互いに順調に勝ち上がれば決勝戦で衝突することになる。



 夕食を食べ終えると宿舎の玄関口を通り過ぎようとしていた南禅寺に声をかける一心。

「南禅寺さん、洗濯行ってきますね!」

「ああ、俺も少し経ってから行く」

「あの、ノブと枡谷さん夕食の時間いませんでしたけど…知りませんか?」

「…聞きたいか?」

 南禅寺が一心に意味深に問いかける。

「知ってるんですか?」

「監督とまだ練習してるよ」

「練習って…調整じゃないんですか?試合前ですよ?」

「監督やアイツらなりの考えがあるんじゃないのか?」

 微笑む南禅寺。

「はい…?」(何でだろう?)

「お前は知らなくてもいい。先に言ってろ」

「…僕は知らなくてもいい?」

 ちょうどその時、流稀亜が玄関口に来る。

「シン!行こうか?」

「え、ああ…」

「暁、俺が行く前にランドリーサミットになったら頼むな?」

 インターハイ同様、試合前に各高校が集まりひと騒ぎあるのを南禅寺が予感していた。出来ればいない方がいいんだけど…一心は内心ではそう思っていた。

「南禅寺さんは?」

「枡谷と佐藤が戻ってから追いかける」

「分かりました!」



タイトル「不透明な感情」


 そういうと、一心と流稀亜は宿舎から少し離れた場所にあるとあるコインランドリー。に向かった。通常サイズの人が15人ほど入れば窮屈になるほどの店内。乾燥機を回しながら3人ほどしか、腰かけることのできない椅子に座るとぽつりと一心がつぶやく。

「今度こそ…優勝だね」

 その言葉に流稀亜も当然の様に反応する。

「そうだね」

 どこからともなく聞こえてくるマートンの歌声。相変わらず赤いヘッドホンをつけて大声で演歌を歌うマートン。

「馬鹿な~出会いが利口に化けて~よせばいいのに~一目ぼれ~ナニワ~ブシだよ~あ…歌詞…忘れた…」

 目を閉じて歌っていたマートンが目を開ける。

「なんや、いたんか負け組ブラザーズ!」

 一心と流稀亜が不機嫌そうな顔をしている。

「出たよ。南禅寺さんの超能力が当たったか…あと何人くるのか…」

 マートンが口を開く。

「チビ!なんやねん」

「別に…」

 一心がそういうと流稀亜も口を開く。

「…イケメン耳が潰れるかと…」

「なんや、負け組ブラザーズ。おまんらには、俺様の歌が心に響かんかのう~」

 呆れた顔の一心が口を開く。

「お前、友達いないだろ!」

 マートンが不機嫌な顔で口を開く。

「アホ!おまんらが寂しそうにコインランドリーにいるのが見えたさかい、来たんじゃボケ!なんて言っても俺様の視力は3,0そして耳は2,0だ」

「何だよそれ、どんなUMAだよ!」

「じゃかしいわ!ボケ!誰が馬じゃい!草なんかようくわんで!」

「馬じゃんねえよ!UMAだよ!」(UMAとは謎の未確認動物)

「おなじようなもんじゃい!」

「全然違う!未確認生物と馬は全然違います!」

 コインランドリーの前を通っり過ぎる人々がそんな二人の騒音に対して怪しげな目線を突き刺す。呆れたように流稀亜が口を開く。

「ねえ、狭いしさもう少しボリューム下げようか?」

 すると同時に振り返り声を上げる一心とマートン。

「うるさい!」

「…え?」

 驚く流稀亜に対してマートンが口走る。

「この裏切り者!黙ったろ!」

「本当だよ、ちょっとイケメンだからって!」

 意見が合う一心とマートンが顔を合わせる。

「…君たち仲良し?」

 流稀亜がそういうと同時に一心とマートンが口を開く。

「そんなわけないじゃん!」

「ちゃうわ!」

「…」

 驚く流稀亜。するとマートンが口を開く。

「所で、おまんら、俺様に負けるためにしっかり練習してきたんか?」

 一心が言い返す。

「負ける?馬鹿言うなよ。優勝するのは俺たちだ!」

 すると今度はそこに狙ったように三浦が入って来る。三浦はたこ焼きを片手に、口の中をくちゃくちゃ音をたてながら入って来た。

「おい、どこが優勝を貰うやて?」

 三浦の登場に驚く一心と流稀亜。マートンが口を開く

「…三浦さん、また来はったんですか?」

 マートンが三浦を見る。

「なや、埼玉のたこ焼き結構いけるで!がはっはは…おう、クソ一年生。今回は決勝戦で下痢とかナシやで、ははははは」

マートンも一緒に笑う。すると南禅寺が入って来る。

「今回は下剤も持ってきてるし、抗体が出来てるから優勝はうちが貰う!」

南禅寺が三浦に噛みつく。すると狭い店内に赤井とツインタワー飯田兄弟が入って来る。更に狭くなる店内。

「HEY,俺たちのこと忘れてない?YO、Yo駄目よ。俺、赤井!HEY!優勝するのは当然うちだぜ!HYE」

「赤井さん…」

 飯田兄弟が同時に口を開く。

「なまら、狭いな」

 するともう一人入って来る。目黒諏訪山高校の星野と背が大きい男が入って来る。しかし、星野は髪型が変わって坊主頭にしているために全員キョトンとしている。

 一心が口を開く。

「…誰?」

星野が口を開く。

「…俺や!」

 流稀亜が驚いている。

「…だから誰?」

「目黒諏訪山の星野や!」

 驚いたマートンが口を開く。

「えええーー!何で突然坊主になったん!…なんや、坊さんにでもなるんか?ちゃうか…もしかして、停学でも食らったんか?チカンか?」

「え、チカン?」

「ありえるで、めっちゃスケベで変態な顔しとるで!」

 眉間にしわを寄せて口を開く星野。

「馬鹿一年…アホ!誰がチカンや!頭丸めたのは俺なりのけじめだ!それだけこの大会にかけてるんだよ!」

 たこ焼きを飲み込み、三浦が口を開く。

「…まあ、お前また、あれやで頑張って、勝ってもまず最初に準々決勝でまず本別のやつらがおる北海道代表と当たって、万が一に勝ったとしても次は帝国や、それでボロボロになって最強の俺たちとやってけちょん、けちょんになるんか?」

 三浦がそういって星野の頭を撫でようとするとチェ スホン(201cm)が三浦の腕をがっちりつかむ。お互いに睨み二人。三浦のたこ焼きが床に落ちる。

「なんや、おまんのっぺんな顔しよってドンくさそうやな!」

 腕を振り払おうとするが、三浦の腕ががっちりつかまれて微動だに動かない。

「おい、うちの三浦さんに何してくれてんや!おまん!」

 今度はマートンの腕も掴むスホン。マートンが口を開く。

「離さんかい!なんや、おまん日本語分かるんか!ボケ!」

 スホンが小さい声でつぶやく。

「…韓国人と日本人って何が違う?」

 抵抗するマートン。

「離せって言ってるやろが!」

「…俺、うるさい奴嫌い…星野、悪く言いう…もっと嫌い…」

 マートンが口を開く。

「こら!離さんかい!」

「スホン、離してやれよ」

 星野がそういうと、スホンが小さくうなずき、掴まれていた三浦とマートンの腕を離す。しかし二人の腕はスホンの握力で赤くなっていた。

「こないな、暴力振って運営に言ったるで!ボケ!」

 南禅寺が口を開く。

「お前らが悪いな」

 すると赤井も口を開く。

「HEY、YOU、君らがそうさせたんじゃないのか?」

 すると立ち去ろとする三浦とマートン。

「…まあいい、アホが…力があってもバスケでは通用せんで!おもろいやんけ決勝まで来たら叩きのめしたるわ!」

 三浦が捨て台詞の様にそういってコインランドリーを後にする。マートンも捨て台詞を吐いてから出ていく。

「おい、裏切者にクソチビ!おまんら!分かってるやろな!決勝戦でボコボコにしたるかなら!…まってええな三井浦さん!」

 今度は赤井が口を開く。

「WHY、YO、YO,俺たちも帰ろうぜブラザーHEY」

 飯田兄弟が同時に口を開く。

「なまら、面倒だ…」

 そして赤井と飯田兄弟もコインランドリーを後にする。去り際に赤井が口を開く。

「HEY、帝国…今回はウチのディフェンスに隙は無いぜ!HEY!DON’T TOUCH!優勝はウチだぜ!HEY!」

 一心が負けじと口を開く。

「赤井さんじゃあ、それも越えていきますよ!」

一心がそういうと今度は星野が口を開く。

「おい、お前ら帝国ばっか意識してると痛い目に合うぜ!」

「…WHY?」

 そう言って手を広げるとその場を立ち去る北海道代表。そして、それに続いて立ち去る星野が口を開く。

「秋田代表…いや帝国…インターハイの借りは返すぜ!」

 立ち去る星野とスホン。一心は星野が自慢のリーゼントを止めてまで今大会賭ける意気込みや気迫が本気だと感じていた。星野は外見からの見た目ではなく、明らかに雰囲気が変わっていた。もしかしたらスホンのせいかもしれないが、枯れたと思っていた植物がまた少しの水分で蘇るがごとく、前よりも輝きを増しているように見えた。兎に角侮れない…そんな気が伝わってきた。


十字路をそれぞれの道を進む代表選手達。


東に進む秋田代表   帝国高校


西に進む大阪代表   大阪常翔学園高校


北に進む東京代表   目黒諏訪山高校


南に進む北海道代表  本別国際高校


 十字路を別れると西に向かった大阪代表のマートンと三浦。自分の手についたあざを見る三浦。

「おい、馬鹿」

マートンが口を開く。

「なんですの?三浦さん」

「決勝戦…アイツらじゃないかもな…」

「ははははは、三浦さん、神木と流稀亜が負ける思てはりますの?」

 驚いた顔をしている三浦。

「…?」(こいつ…なんだかんだであいつらを信じているのか…ある意味羨ましいわな…そんなやつ…俺はおらへんで)

「…三浦さん、俺たちは俺たちの準備しとればいいんちゃいます?幸いにも強豪は全部向こうに行ってますし、ワシを裏切った流稀亜と神木を全力でたたけるの楽しみなんですわ!」

「馬鹿だとおもっとったけど少しは味噌がはいってるんやな!」

「…三浦さん…正直、三浦さんが卒業したらあいつら二人相手に勝てるか分からへん。ワシ正直言いうと怖いんや…だから何としても三浦さんいるうちに勝つんや!」

「…そうか…」

「やっぱりそう思います?三浦さんも?」

 少し考える三浦。

「…アホか、おまん」

「いや、アホちゃいます。来年のうちの戦力では正直、現状は難しいでっしゃろ」

「室橋も今は怪我しているが…いるだろ…」

 マートンの同期で同じく200cm台の身長の室橋 良二が入学していたが膝の調子が悪いためインターハイ、国体と出場機会がなかった。

「…そんなん期待してもあきまへんわ…あいつ、どの試合から出しますの?」(室橋は怪我がなくても無理や…あいつはスピリットが足りん…)

 三浦が口を開く。

「そやな、200cmを使わないのは勿体ないんやけどな…ダイエットに成功してこれから筋肉を作っていく途中やからな、出し惜しみやないけど、決勝戦とか後は出てもワンポイントちゃうか?」

「そうでっか」

「おまん、元気出せや!…ワシらはインターハイのチャンピョンやで!負けるわけあるかい!」

 三浦がそういうと、落ち込んでいたマートンの表情が変わり子供の様に目を輝かせて歌を歌いだした。

「おおきに!シンチの~酒場通りには~胸のデカい女がいるで~ちょっと、ちょっとだけにして~」

 三浦が口開く。

「なあ」

「はい?」

「えげつない変え歌はやめーや!」

 マートンが驚く。

「そうでっか?ボインじゃなくてペチャパイにかえまっか?」

 あきれ顔の三浦。

「おまんアホか!」

「なんか言い張りました?」

 マートンの頭をどつく三浦。

「イタ!暴力はんたいですわ!」

「アホ、お前の歌の方は迷惑じゃい!」

「まってえな兄さん!」

「恥ずかしいわ!兄さん呼ぶな!」

 その後、颯爽と歩く三浦の後を追いかけるマートンだった。



十字路を南に歩く北海道代表。

「WHAT!どおみるよ!ツインタワー!YO!」

 赤井がツインタワーの飯田兄弟に投げかける。

「なまら問題ないだろ。俺たちは帝国を倒して残りの2大会、国体、ウインターカップを取るために来たんだ。敵はあくまでも帝国。決勝まで行ったら俺たち二人で三浦を抑えればそれでいい。赤井がマートンを抑えるればそれでいい」

「HEY!、そうだよね~YOYO!」

「なまら、問題は帝国をどう倒すかだ…あの一年コンビの成長の具合がどれほどか…」

「HEY、問題ないぜ!YO!」

赤井はそういうと音量を上げて踊りながら歩き出す。しかし、赤井はなにか悔しさや怒りを感じていたのかそれは分からないが拳を強く握っていた。そしいていつもだと大音量で漏れている音楽も漏れていなかった。つまり音楽は切っていたのだ。飯田兄弟の前で平然としている赤井だがインターハイで帝国高校に負けたことの口惜しさがあるのは間違いなかった。

「HEY、ボンバーヘッド!ボンバーヘッド!…」

 そんな赤井の様子を見て、抑えられない感情に蓋をすると飯田は小さくつぶやいた。

「…」(なまら、優勝しような赤井…)



 一方、北に歩いていった東京代表の星野とスホンはゆっくりと空を見上げて歩いている。星野がぽつりとつぶやく。

「また、助けてもらったなスホン…中学の頃もバスケが上達するまではいじめられていた俺をいつも助けてくれたよな…そんな強いスホンに憧れてさ、俺さ髪の毛リーゼントしたんだぜ!」

 スホンが口を開く。

「本当か?」

「ああ、強そうに見えるだろ?」

「星野…感謝してるの俺、韓国人の俺、誰も呼ばない…学校にチームがないのに星野が誘ってくれた…だから」

「スホン…」

 ぎこちない会話がだった。こんな話をする機会はお互いに何度かあったはずなのに見えない壁がそれをさせなかった。一緒に戦う仲間になって心の内側を見せ合う二人だった。

「俺たち在日はお金を稼がないと肩身が狭い。だからみんなやるのは野球かサッカーだ…でも俺はバスケが好きだ…理由は…分からない…星野が声をかけてくれなかったらまたバスケが出来なかった…ありがとう」

「俺たち親友だろ!そんなこと言うなよ!」

星野がスホンの肩をポんと叩く。

「…星野…」

「何だスホン?」

スホンは青汁を飲んだ後の様な陰気な表情をして口を開く。

「お前…いい奴だ…でも俺…日本人嫌い…でもお前は好きだ」

 喜んでいいのか、悪いのか返答に困る言葉に思わず笑いが漏れる星野。

「ははははは、ありがとう」

 スホンの顔つきが変わり、真剣な表情をして話しかける。

「くず鉄回収業を営んでいたハラボジ(おじいさん)は、当時、日本の植民地支配下にあった朝鮮半島から海を渡って日本きた…その時、物凄く苦労した…」

 どこか寂し気なスホン。

「スホン…」

スホンの表情はまるで重い荷物を背負って下山する人の様な顔だった。

「人の意見は様々だ…当時の状況を植民地支配と見るか?自由意思と見るか?そんな中で両国のマスメディアでは一面的で断片的なデマだったり、自国に都合のいい情報を流して洗脳する…そしてそのはざまで歴史の犠牲になる人々…」

「スホンは日本が嫌いか?」

「…日本は綺麗でいい所だ…そう思う…」

「そうか、じゃあ…」

 星野が言いかけるがスホンが先に口を開く。

「…星野…でも俺には何故か日本の空が狭く感じる…こんなに青くて、きれいで、そして広いのに…心が感じるんだ。狭いと…苦しい…」

スホンの永遠に晴れない雨空のような表情に胸が痛い星野。

「…スホン」

「どうしてなんだ?一部の人間が行った悪さで、他の人間も自由を失い、罪を認めて謝罪をしたとしても排除される…目に見えない差別はなくならない…」

 少し目に涙をためるスホン。胸が痛む星野。星野は話をあえて逸らす。

「スホン…スホンはさ実力があるんだから、国体が終わってもまたやりたくもないのに野球をやったりしなくていいよ!きっと実力が認められて、日本のプロとか、大学から声もかかるかもしれないし、韓国でやってもいいじゃないか!」

「バスケが何かを変えるのか?」

 真剣なまなざしで星野を見るスホン。星野もその瞳から逃げない。

「ああ変わるよ!そのためにも優勝しようぜ!」

「優勝か…いいかもな」

「ああ、きっといいぞ!」

 星野には確約できる事など正直なかった。でも一生懸命やっていれば何かが変わるはずだ…そう思っていた。




 一方、東に歩く一心、流稀亜、南禅寺が歩いていると折茂、関口、枡谷、佐藤が近寄って来る。最初に口を開いたのは折茂だった。

「ちっちっち、どこのランドリーに行ってるかと思えば…こっちかよ!こっちはデミタスコーヒーが売ってる自販機のほうじゃねえぞ!」

 すかさず関口も口を開く。

「おーっち、から揚げもうってねえでば!」

 すると一心が口を開く。

「…そんなの知りませんよ!」

枡谷と佐藤が同時に口を開く。

「コインランドリーサミットは終わったんですか?」

 南禅寺が笑いながら口を開く。

「ははは、コインランドリーサミットか?ああ、波乱が起きそうな雰囲気で終わったよ!」

 関口が口を開く。

「おーっち神木、おまえのせいだいば!から揚げ買ってこいよ!」

 折茂が口を開く。

「ちっちっち、デミタスコーヒーもな!」

 首を振りながら一心が口を開く。

「知りませんよ!」

 南禅寺が真剣な表情で口を開く。

「この大会は、優勝しないといけない」

 流稀亜が口を開く。

「しないといけないですか?」

 南禅寺が直ぐに返答する。

「ああ、絶対に…監督はな…」

 枡谷が口を開く。

「何ですか?そこまで言いかけて」

 南禅寺が口を開く

「小耳にはさんだんだ情報だと、自分の進退と国体の優勝を賭けているらしいんだ…」

 驚く一心。しかし敢えてその話には触れずに逸らした。

「…明日の初戦、千葉とでしたっけ?自分達がどれだけ強くなったのか楽しみですね」

 折茂もその方がいいと判断して一心の話の流れに乗る。

「おーっち神木、パワーアップしてるのはお前だけじゃねえぞ!」

 関口が続く。

「ちっちっち、そうだ!」

 流稀亜も口を開く。

「俺は最強と得点王に!」

 枡谷も続く。

「俺だって、いつまでも控え選手じゃない!」

 佐藤も口を開く。

「ワシも、いつでも出れますよ!」

 南禅寺が口を開く。

「優勝…しような!」

 全員が返事をした。

「はい!」

正面にある雲がさっきまで月をかくまっていたが出てきてそんな一心達を照らした。全員の目がこれから始まる花火大会を待ち遠しくするような表情で空を見ていた。そしてそれぞれが自分自身に「優勝するぞ!」という思いを胸に秘めていた。













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