02-exectioner
翌日、
掃除を依頼されたとかで、ここ連日働き通しだった有機納が請負人として派遣されたのだ。仕事には変わりないが、死体処理班としては休みということになるので、そういう点では気が楽だ。仕事には変わりないが。
大して時間がかかるものでもないので有機納は昼から入ったのだが、予想外にも中には人がいた。
——
思わずどきりとしてしまう。彼は死刑を行った後と同じように、処刑台を眺めていた。
少し迷って、有機納は声を掛ける。
「今日は、処刑、ありませんよ」
昨日とあまり変わらない動作で、側久はこちらに視線を遣った。やはり何も見ていないような眼。彼が執行人であると知らなくても、背筋に冷たいものが走る、そんな眼。
側久は次に、自分の足元に視線を落とすと「わかっている」と抑揚なく言った。側久の声を聞いたのは、これが初めてかもしれない。
立ち去る様子は無かった。気にせず掃除を始めてしまおうか、とも考えたが、気にならないわけがないので有機納も動かなかった。
気が付くと彼はまた処刑台を見ている。
「…、処刑するとき、いつも何を考えているんですか」
好奇心が口からその言葉を引き出してしまった。言葉にしてから、この質問はまずかった気がして体が強張る。
昨日の
側久はじっとこちらを見つめていた。けれど答えるつもりはないようで、口はしっかり結ばれている。
「…あの、ごめんなさい、なんでもないです」
「……」
有機納がそう言ったことで、交わされていた視線は外れた。
何も言わずに側久は帰っていった。その顔は無表情。怒らせたかどうかも分からないほど。
(………、)
気をつけないと、後ろから縄掛けられたりしてな。
もう一度代企の言葉が頭の中で繰り返された。
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