死刑執行人
外並由歌
死刑執行人
01-corpse
この国は未だ死刑という刑を執行している数少ない国の一つだ。
執行場所は少し広めのコロシアムにも見える場所で、かつて公開処刑が行われていたらしく、中央に処刑台が設置されている。
死刑の場合の処刑方法は絞め首、つまり首吊り。一番残酷でない死に方として、別の国でもよく使われる方法だ。
死刑執行人は、黒髪長髪の無表情な男らしい。
少し前に法が改正されて、死刑に出来る罪状に幅が出来たため、最近ではほぼ毎週、酷いときには毎日処刑が行われていた。
「おーい、片付けますよ」
死刑後の死体処理と言っても、大人一人であるために派遣されるのは二十人のうち二人。ほぼ交代制になっていて、今日はたまたま同期の代企と一緒だった。
声を掛けられた男——ここの、死刑執行人は、見上げていた首をぐるりとこちらへ向けた。代企と、有機納とも視線を交わすとそれが返事であったかのように、すっとその場を離れた。
代企が処刑台に飛び乗って、首を吊っているロープを下ろす。有機納は下へ回り、その体をゆっくりと地面に寝かせた。
「
死体を下ろしながら代企が言った言葉に、なんとなく分かっていながらも「なにが」と返す。
彼は台から降り、用意していた担架を持ってこちらへ来た。
死刑囚は死んだ後、引き取り手がいなければ共同墓地に埋められることになる。けれど、死刑囚だろうがなんだろうが、運ぶときは皆同じように仰向けにして両手を組ませて運ぶ決まりになっている。
「そのうちあいつ、こっち側になるんじゃねえ?」
代企が乱雑に担架を地面に置きながらそう言った。「こっち側」の意味するものは、有機納の足元の死体だろう。
「……」
「板引いた後、死んでく様をずっと見てんだからさ。殺すのに目覚めてたりして」
「…そういうことは、言っちゃ駄目だと思う」
「皆言ってるぜ? 呼ぶまで人が入って来ても気付かないみてえだし」
死刑執行人である側久の仕事は、簡単に言えば首にロープを掛けられた死刑囚の、足元の板を引き抜くことだ。
けれどそれが終わると、彼は苦しみ喘ぐ犯罪者を眺め続けるらしい。
有機納も、正直なところ彼に危な気なところを感じないでもなかった。あの何も見ていないような瞳で、もしかしたらこの後誰かの首を絞めに行くのかもしれない、なんて思ったこともある。
「俺達も気をつけないと、後ろから縄掛けられたりしてな」
冗談を言うときと同じ笑い方で代企が言うから、軽蔑していると分かるように「やめてよ」と言っておいた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます