Epilog
「こんばんは。うちの秋人、邪魔してませんか?」
「冬樹、お仕事帰りにごめんね。秋人くん、送って行こうと思っていたのに」
玄関先でピンポン、音がしたと思ったら、秋人くんのお父さんでした。美冬ちゃんの秋菜ママとお話ししています。二人もママパパ同士の仲良しさんなんです。
「今ね、秋人くんと美冬、ぐっすり眠っちゃって。雪の中で遊んでいたみたいだから疲れたのかしら」
「それは申し訳ない……秋人、起こすから」
「ああいいのよ。ふふ、二人ともお手て繋いでばたんきゅうで、かっわいいの」
はい。秋人くんも美冬ちゃんも、向かい合って寝っ転がって、すーすー寝息を立てて眠ってるんです。二人とも、眠りながらもにっこりです。おんなじ夢を見ているのかな?
「目が覚めるまでお茶でも飲んでいったら? 秋人くんのママもここに呼んで」
冬樹さんをダイニングに案内しながら、ちらりと秋菜ママが美冬ちゃんの部屋を覗きました。
「あら、二人とも今日はテトが一緒じゃなくても寝れたのかしら」
そう言うと、秋菜ママも冬樹さんも、また話しながら部屋の入り口から離れて行きました。
電気を消した部屋には、積もった雪に反射した月の白い光が窓から入っています。もう吹雪は止んで、空には満点のお星様です。
え? 雪の女王様はどうせ夢だったんだろうって?
そんなことはありませんよ。
なんて言ったって、今、僕は女王様のご招待で、雪のお城の中から氷の鏡を通して二人の寝顔を見てるんですから。
美冬ちゃんと秋人くんを送り届けて、僕はもう一度このお城にお邪魔しています。女王様も話し相手が欲しかったんですって。
なんと春子さんが外国仕込みの腕を振るって、ケーキを焼いてくれました。夏男くん、こっぴどく叱られたあとですけれどね。
僕には黄金色のはちみつ味。女王様が作ったアイスクリームを添えて。
あ、あの花びらですか? きちんとありますよ。この周りに悪鬼がはびこらないように、美冬ちゃんが女王様にあげました。
氷の冷たいテーブルの上で、水を貼ったガラスに浮かんだ桃色の花びらは、いまも優しく光っています。
夢みたいで非現実じみたファンタジーも、たまにはいいものですね。
❄️おしまい❄️
あ、次のおまけも、良かったらのぞいてみてくださいね。
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