第2話
その夜、美冬ちゃんは全然眠れなかったみたいです。なんで知ってるのかって? だって美冬ちゃん、僕を抱えてベッドでごろんごろんするんですもの。おかげで僕も寝てません。
もうそろそろ酔っちゃいそうだな、と思った頃に、灰色だったシーツの色が白に変わり始めました。床も明るくなってきたみたいです。
もう寝付けないと思ったのでしょう。美冬ちゃんはぴょこんと起き上がると、カーテンをしゃっ。
窓は真っ白。向こうは明るいけれど、曇ってしまって何も見えません……
ちゅべたっ!!
僕の頭がじゃっと濡れます。美冬ちゃん、僕で結露拭くなんて
「テト! あれ、あそこソリ!」
うう美冬ちゃん、僕がしろくまだから冷たいの平気だと思ってるんでしょう。へ、平気ですよ? かのコリオラヌスのように強いからね? ってソリ?
ああ、窓の外はこんもり生クリームを乗せたエンジェルケーキみたいに一面、真っ白。そして向こうに見えるはモンブラン……じゃなくて……なんの山だっけ。まぁいいです。その斜面はどこもかしこもモンテビアンコなのに、小さな茶色い点が動いています。
本当です。ソリです。僕も美冬ちゃんも、目がいいんです。
「ああっきっと雪の女王様のソリだ……!」
そうだね、可能性はあります。だって明らかに針葉樹の上を走ってますからね。山の斜面でも地上走ってたら、スキー場とかじゃないと見えるところ少ないですから、雪の女王様みたいに魔法とか使えそうな人でないと無理だと思います。
「秋くん、本当に連れてかれちゃった……うえっ……あきく……」
うきゃっ。
結露で濡れてぺたりと倒れた僕の頭の毛に、今度はぬるっこい水が落ちてきます。美冬ちゃん、泣いてるの?
そうですよね、大事な仲良しの幼馴染みですものね。
「うぐっ……きっとっ……秋くん意地悪になっちゃったからっ……えっ……ゆ、雪の女王様にもっ……何か、し、したんだっ」
僕の頭はうしろの方まで濡れてきました。よしよし、美冬ちゃん、今日はいいよ、タオルになっても。秋人くんがいなくなるのは嫌だものね。
そうして僕がソリのいく方を見守っているうちに、美冬ちゃんはしゃくり上げ、鼻をすんすん言わせて、そしてしばらくすると、すーはーし始めました。美冬ちゃん、泣きやみかたも知ってるんですよ。お姉さんでしょ。
「……許さない」
え? うわっ!
今度は着地はベッドにしてえぇぇーーーー!!
ぼすっ。
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