2
「……胸騒ぎが当たった」
桃林の
初めは、桃林の中に開けた
しかし、数人ごとに
その多くは、昔、慎一が博物館で見た古墳時代の女性の衣裳のようでもあり、同時に中世以降の白い
ただ、大まかに見ればそうした一定の傾向が感じられるだけで、中には、装束のすべてが
そして――。
見れば女性たちの顔は、ことごとく黒ずみ、じくじくと
すでに目鼻立ちが溶けている者もある。
目鼻立ちは残っているものの、その下が崩れ、白い歯並びや顎の骨が覗いている者もある。
しかし皆がそんな顔でありながら、誰ひとり互いの醜怪さや無惨さを気にするふうでもなく、
「……すまぬ、慎一。俺は、あの方々とは、まともに顔を合わせられぬ」
逆立った
「お前にも恐い物があるんだな。俺には閻魔様より優しそうに見えるけど」
「恐いというより、格が違いすぎるのだよ。きっとあれらは、噂に聞く
「なるほど……じゃあ、おまえはそこに隠れていろ」
慎一は、宴の中を指さして、
「俺は
その
「と、いうことは……
「……おぬしは
「呼ばれたのか、勝手に追いかけてきたのか、よくわからないけどな」
「しかし、あの
慎一は、畏れよりも、底知れぬ民族的記憶の源流に自分が立ってしまったことを実感できず、やはりその名を口にしなかった。
「……誰であれ、俺は
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます