4
なお哄笑する
「……待て、誤解だ」
「何かの間違いだ。俺や
「世迷い言をほざくな!」
その姿を見て、
「いじられていたのは俺の血液型だ! 子供の頃、親に教えられたのはB。
「慎一、
声を潜める必要はないのだが、
「……あとでいいか? 長くなる」
「おう……」
しかし――今ここにいない
「血液型など……
「まだ言うか!」
「その封筒の中を見ろ。まだ何か残っているだろう」
猟銃の先で指示され、
取り出した一枚の写真を見て、青かった兄妹の顔が、さらに色を失う。
実結の父は、くつくつと嘲笑しながら、
「……その
兄は愕然と妹を見つめ、
「お前……なぜ、こんな……」
妹は涙を流しながら兄の胸に顔を伏せ、
「だって……ごめんなさい……忘れたくなかった……」
慎一には、写真の表が見えない。しかし裏面の質感から見て、それは普通の印画紙ではなく、明らかにポラロイド写真である。ならば、どんな被写体であるかは想像できる。ネガや現像を必要としないポラロイド写真の、ある種の需要の典型的な――おそらくは若気の至りの――。
そこは
「……まあ、いいさ」
「どうせ、これで
狙いを定める銃口に、もう迷いはない。
すべてに裏切られた男の覚悟を悟ったのか、
「お願いだ……
人倫を外れた男にも、血を分けた娘への確かな情愛はあるのだろう。
しかし対する狂人は、
「おう。俺だって
そう言って、底なし沼のように濁った笑いを浮かべ、
「あれはさっき、俺が女にしてやったよ。お前らを始末したら、連れて逃げる。どこまで逃げられるかはわからんが、捕まるまでは可愛がってやるから安心しろ」
絶望に目を見開く兄妹に、狂人は発砲した。
兄妹は抱き合ったまま、血潮を散らしながら窓際まで
慎一は、
その耳元で
「忘れろ、慎一。
そこまでの達観した物言いが、妖物らしく
「しかし腐った物ほど俺には
ぶわ、と
「生きながら丸
白い毛色のまま、天井まで届く異形の
「いかに狂うたとて、
牛を呑む大蛇のように上顎と下顎を水平まで開き、狂人を頭から呑もうとしたとき――。
どん、と部屋の空気が、粉々に砕けた居間の扉とともに、横殴りの炎風と化した。
この場を過去の残像と承知している慎一までが、衝撃を感じるような爆風だった。
「……なんだ、これは」
食うはずのすべてが、窓側の壁ごと庭に吹き飛ばされている。
「
呆然とつぶやく慎一の視線を追って、
扉があったはずの大穴の向こうに、
その炎に焼かれながら――いや、炎の中でなぜか
炎に揺らめいて表情は見えないが、引き裂かれた洋服の一端を、わずかに
「なんと……」
「何もかも見てしまったのかよ、あの娘は……」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます