4 新しい家族(かたち)
眩しく、騒々しい場所は、控え目に言って苦手だ。
けれど、高校生になり。
ゲームが
(認可されてこそいないものの)部活に所属し、そこでも友達や、優しそうな面々と親しくなれて。
(期限が差し迫ってるとはいえ)出会ったその日にカラオケになんて行けるまでに進展した上、歌わずとも仲間扱いしてくれて、聴いてるだけで満足して。
父の再婚相手、新しい母にも、
バツの悪い過去を知られても、それでも
そんな激動の2日間を経て。
そういったイベントで、
今こうして生みの親、実の母に、
別に、格式張った高級レストランとかではない。
ハンバーガー好きの
それでいて、人酔いする彼女を気遣い、先にメニューを見せオーダーだけ聞いてテイク・アウトし。
部員ではないが、
改めて思うが。
自分達は、中々に纏まりが
確かに、「
その実、「そこまで互いに興味、一緒に行動する大義名分を持てずにいる」というだけなのではないか。
自分達を
あと5日で、またしてもバラバラに、疎遠になってはしまうまいか。
丁度、小学、中学の時みたいに。
「
どうかした?」
バンズを持ったまま固まっていたらしい。
自分を心配する母の声で我に帰り、
まるで、それしか遊び方の
「な……
大丈夫、です……」
「ひょっとして、部活の
あの人から聞いたわ。
かなり大変らしいわね」
それを聞いて、
未だに父と母が、連絡を取り合っていると知れて。
「困った
これでも、あなたの産みの親ですもの。
といっても、今となっては、『元』だけどね。
それでも良かったら」
「っ!!」
そんな悲しい言葉を、そんな冷たい言い方で。
母の口から直接、聞きたくは、聞かされたくはなかった。
「『元』とか、関係無い……。
お母さんは、お母さん……。
マユの……大切な、人っ……」
言葉だけでは足りず、思わず立ち上がり。
けれど、
胸に手を当てたまま、喋ろうとして、口パクするだけ。
まるで、声自体を奪われた人魚姫の
そんな姿が余計、キツかったのかもしれない。
複雑そうな面持ちで、母は紙ナプキンで指を拭い。
同じく立ち上がり、
「ありがとう、
あなたが、こんなにも
ママは、
あなたと違って、ママはこんなにも、不出来なのにねぇ」
いつものだ。
そう、
母は、二言目には言っていた。
ある時は、『
またある時は、『
そんな
いつしか、
それを隠し、
けれど段々、家族間での会話や食事が減り。
そんな矢先に、『脱サラしたい』と父から相談され。
こうして、
母が退院してから、間も
二人を叱責する
けれど、それより強く、二人の復縁を望んでいたのも事実。
が、結果は、見ての通り。
自分の父と母は、道を違えてしまった。
それも、自分が気を許しつつある、友達の母と。
もう、重なる
「それでね、
今日は、大事なお話が
食べかけのバーガーを袋に包み、再び紙ナプキンで手を拭い。
意味も
後ろめたさで一杯という表情で、目を泳がせ。
そんな
言及されずとも、空気と経験で、
父
父に付いて行った身としては、それを祝福する立場にある。
けど、手放しでは、喜び切れない。
父が新しい人と結ばれるのとは、ニュアンスとダメージが異なる。
自分が原因で入院、離婚させてしまった、申し訳無さも
そうじゃなくても、母には何かと迷惑、負担を掛けて来た。
そして、
娘として、両親が大切だったのだ。
泣いて縋って、「戻って来て」と頼みたい。
けど、そう
もう自分は、父に寄り添うと決めた。
その父が、2回目の結婚を整えつつある。
ましてや、母の気持ちを考えれば、了承なんて
父が再婚に漕ぎ着けるまで、それ相応の時間と努力、予算を要した。
それだけ苦労すると分かっていたのに、机上の空論に巻き込まれる未来を、母は拒否した。
だのに、「事業が安定して来たタイミングで言い寄ろう」などと。
そんな、虫の
その程度の相手なら、
とどのつまり。
もう、手遅れなのだ。
自分達はもう、家族には
それを、完膚無きまでに、決定付けられてしまった。
「……こんな
けど、だからこそ。
大切で、大好きだからこそ。
今度こそ、ちゃんと、言わせて
前みたいに、ならない
「……うん……」
「……お母さんね。
その人と近々、結婚する予定よ」
「……うん……」
「これから、
その前に、あなたと話しておきたかったの。
あなたにとって、とても大切かもしれない
「……?」
言いながら、木の枝を取り。
母は、砂の上に、達筆に、『
「あなたの、名前の意味。
あなたには、『真っ
いつか、深く固い繭に閉じ込められようと。
それを破壊して、生きて
そういう願いを、込めたのよ。
あなたは、そういう想いの下、お母さん
「……っ……!!」
そんな資格、
そんな
母は、
「あなたが
あなたが
今まで沢山、苦しめて、追い詰めて、
でも……あなたは、
私達なら、きっと大丈夫。
今だって、こうして、当日、いきなり会えたりもする。
別れても、家族だもの。
これからまた、新しい形を、形成して行けば
だから、もう……自分を責めないで。律しないで。
自分の気持ちに、好きに、飛び立って
「……う、うわぁ…………!!
うわぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁっ!!」
ここまで喚くのは、後にも先にも、今日が最後だろう。
そうであって
「……お母さん」
「なぁに?」
すっかり腫れぼったい目で海と文字を眺め。
母の肩に頭を乗せながら、
「新しい、好きな人って。
もしかして、『
「……いえ。
違うけど?」
「そっかぁ」
「?」
やや残念だった。
もし
それも、公私共に。
ただ、高望みというか
そこまで都合
でも、まぁ。
それならそれで、構わない。
母の言った通り、気分と都合で、いつだって会える。
自分達はまだ、
「お母さん。
マユ……ちゃんとした、お友達が、
今度、会ってくれる?」
「素晴らしいわ。
どんな人?」
「ママで、お姉ちゃんで。
実際には、マユの、妹」
「……
安心したわ」
「あと、男の人。
マユの
「素的ね。
お母さんも是非とも、お会いしたいわ」
「他にも、あと2人。
でも、まだお友達にはなれてない。
だから、なったら……ちゃんと部員に、部活になったら。
「分かったわ。
じゃあ、その
「うん。
マユも、頑張る。
お母さんとお父さんに、負けない
そう遠くない未来に、再会を誓い。
二人は、食事を再開した。
それから
その帰り際。
砂に書かれた自身の名前を、
フォルダ名を、「お母さんとの記念日」にして、保存も掛けて。
「
不意に声を掛けられ、あたふたした拍子に、スマホを落とす
空かさず、素早く
危うく、スナホになる所だった。
防塵対策も
「驚かせて、ごめんなさい。
はい、これ。
多分、壊れたりはしてないと思うけれど。
一応、確認しといて
受け取り、
特に問題は見当たらなかったので、安心した。
「……?」
そこに来て、
彼女が釘付けになっている
「……あー。
「……これ……。
……マユの、分…?」
「当たり前じゃない。
それ目的で、セッティングだって」
つい要らん
少しして、海沿いのベンチを指差しながら、提案する。
「今、大丈夫?
これ、食べながら」
「……マユの、だけ……?」
「
自分だけ食べてたら、確実に気を遣うタイプでしょ、あんた。
まぁ、
「……マユ……そんなに、食べないもんっ……」
軽くポカポカと殴る
そうして
余談だが、色々と本日2回目なのは、
「父さんと、久々に会って来たのよ。
あんたへのご褒美の
自分を優遇してくれたのも、
といっても、ちょっと規格外の気がするが。
「始まるまでは、どうなる
一時の気の迷いとはいえ、そんな誘いをした自分を蹴り飛ばしたくなったわ。
でも、まぁ。終わってみれば、
実にあっさり、
ありがたみの
それこそ、離婚したのが不思議な
周囲から奇異の視線で見られたから、何度も『父さん』って言わされたわよ。
それはそれで、今の時代だとアレだから、悪手だけれどね」
夜空を見上げながら、
「思い返してみれば。
父さんも、
それ
多分もう、月1
お手上げ、みたいなポーズを取り、食べ進めつつ。
「それで?
話を終えた
「
あーあ。
しっかりしてるとも
そのまま、
「しっかしまぁ。
これで、『トッケン』を復活させなきゃならない理由が増えた
目指せ、再建、そして謁見! てね。
……ん? 今のライム、ちょっと
同感だったので、
「さてと。
そろそろ、帰りましょうか。
ん」
言葉と共に、実に自然に、スムーズに左手を差し出す
「……はい、です……」
夜の星、月明かりに照らされ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます