1 圧倒、徹底的ヒロイン
『
通称『ハナコー』。
ここが
それは、
というのは建前で、本当は違う。
自分が今、
……と言っても、おいそれと明かす
今日から新しいクラスとなった教室に入り、黒板を頼りに自分の席を見付ける
前と後ろの中間に位置し、尚かつ窓際。
これは、教師の視線からも逃れ易く、窓から入ってくる風がさぞや心地良いだろう、中々の睡眠スポットだった。
心の中でガッツポーズをしつつ、着席する
ふと横を窺うと、彼の隣には、明らかに異質な女子が座っていた。
綺麗な、緋色のストレート・ロング。
暖炉に灯る炎みたいな、暖かく優しく輝くオレンジ色の
まるでフィクションへと誘うかの
そこに
それでいて、決して嫌な感じが一切しない、フレンドリーかつ柔らかいで、周囲をホッとさせる、ポカポカとしたオーラ。
フニャフニャした笑顔と、眠気を誘う透き通った高い声。
固過ぎてもなく砕け過ぎてもいない、程良い口調や言葉遣い。
読書姿が何とも
他愛の
前線に立って先導するタイプではなく、
そんな、存在感の塊と呼称するしか
「……ん?」
自分を注視する
花柄の可愛らしい栞を挟み、ブックカバーに覆われた文庫本を閉じ、彼女は
「初めまして。
私は、
あなたは?」
「え?
あ……
自己紹介をしているのだ。
そう、やや遅れて
徹頭徹尾、嫌な感じのしない笑い方だった。
「そんなに慌てないで。
これから、
私は、外部生だけど。
仲良くしてくれると、
言い
「こっ……こちらこそっ」
やはり
引かれない
これが、
その
そんな彼女との、最初の会話だった。
握手を解き着席し、本の世界に戻る
それに倣ったタイミングで
童顔ながら主張の激しい胸部や、水色とピンクのオッド・アイに、否が応でも意識を奪われる可愛い系。
桜寄りの白いロング・ヘアを、二つのシニヨン付きで編み込みハーフ・アップにし、フワフワと肩の上に乗せているのが、無性に庇護欲を掻き立てられる。
神秘的、儚げな雰囲気とは正反対に、スチーム・パンクを彷彿とさせる、歯車と羽をモチーフにしたイヤー・カフと、服の上から付けているゴーグル状の腕時計。 ギャップが
極めつけに、ウルトラマ◯Zのマスコットとなっているロボットのお手製ポシェット。
言葉を交わさずとも、
あ。こっち側だ。……と。
そして同時に思った。
あの一際目立つファッションで、よく先生の目を掻い潜れたものだ、と。
確かに、『ハナコー』が自由な校風だとは聞いていたが、ここまで自主性を重んじているとは。
願ってもみなかった、同士獲得の絶好のチャンス。
接触を図ろうとする
ひょっとしたら彼女も、オタバレしたくないのでは……という可能性を視野に入れた
席を立ちかけた
そして、
話すのは、後。
始業式を終え、彼女が一人となり、周囲の目が無くなった頃だと。
そう決めた
あれだけ目を引く装いをしながら、実はシャイらしい。
可愛いなと、
そんな具合に
物憂げな雰囲気を漂わせる黒髪少女である。
長身かつ細身で、腕もシュッとしていてリーチが長く、眼鏡が似合う
長い髪を首元まで伸ばしている右側と、短髪で耳が出ており蝶の髪飾りを付けた左側。
そんなロックでアシメな髪型と、両目の間に位置し
女子制服がスラックス、スカートの二種類なのを
そんな、クールでボーイッシュでパンクな、
パッと見、近寄り
どうやら、顔見知りだったらしい。
「はよー、
高校でも、
外部生同士、仲良くしようねー」
「はよ。
で、それは、何?
宿題とかヤマ当てとか、そういうの?
そろそろ、自分で
いつまでも
「そう言わずにさぁ!」
「この通り!
一生のお願い!」
「はいはい。
そうやって一生、お願いしようって魂胆ね。
仕方無いわね……お世話するわよ」
「やったー♪」
「
「あー、もぉっ!
だから、そっちからはNGなんだってばぁ!」
このやり取りを見る限り、善人の
見た目に反して口調は女性的というのが、意外性が
それでいて、一匹狼っぽい印象に反して存外、親近感が湧くタイプ。
加えてハスキーなボイスで、バンドマンっぽい見た
おまけに、(これは
そんな
刹那、アンニュイ気味だった
「かっ……
それまでの中性的な振る舞いはどこへやら。
強烈なキャラブレっ
「めっちゃ
いや、もう、ドタイプなんですけど、何この
しかも、これ、自作!?
うは〜、何から何まで
「あ……あのっ……。
これは、お父さんが……」
「
声まで、
溺愛したい養いたいお近付きになりたいぃぃぃぃぃっ!!」
既に充分、近付いてはいる。
と、誰もがツッコみながらドン引きする。
「あー、もう、また暴走してる……」
「ごめんねぇ。
この子、
「ほら
いきなり豹変して、困ってるでしょ」
「い、いえっ……。
あ……ありがと、です……」
先程まで
どうやら、かなり多機能らしい。
それにしても一体、どういうギミックなのか(後から聞いたが、袖の下で手動で操作しており、意外とシンプルらしい)。
高校生活初日から繰り広げられるドタバタ騒ぎの中、不意に
彼女は、大声を上げそうになるのを耐えながら、横目で
「1年間、楽しめそうだね。
このクラス」
気立ての
機械で器用に喋る、無口でシャイなハーフ美人。
妙に女子力の高いダウナー系の残念イケジョ。
確かに、と
これだけの逸材が揃っていれば、退屈とは無縁だろうと。
「……だね」
この調子ならきっと、部活も満喫
だからこそ、知る由も
自分の希望する部活が、
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