3 Fail ー失敗、欠乏、不合格ー

『待ってる。

 ずっと、待ってるから』

 二人で幸せになる未来を誓い合ったヒロの、最後で最期の台詞セリフ

 


『待ってる』が指し示すのは場所? 時間?

『自分が大人になるまで、空の向こうで待ってる』という意味?

 それとも、『小説家として大成するまで』的な?



 いずれにしても。

 この二択なら両方、叶えられそうに無い。

 自分は、向こうになんてず行けないだろう。

 何故なぜなら、それまで自分は幾度と無く、ニーズに応え、器用貧乏なだけの、一過性の名作を生み出し続け、飢えた人々を洗脳し、さも世界は素晴らしいと勘違いさせ、終わらぬ悪夢に挑ませる。

 そんな業の深い自分が、ヒロと同じ場所になど、行ける道理は無い。



「ごめん……ヒロ……」

 一人、部屋の中、ベッドの上でうずくまりながら、掻き消されそうなか細い声で、夜の帳に向け、今日も今日とて眠れぬまま、出夢いずむは懺悔した。

「また……たがえそうだ……。

 やっぱり……君が思ってくれているほど

 強くも格好かっこよくも、優しくも頼もしくもないんだ……」





「言ったはずだ。

で、俺があんたに教えられるのは、一つだけだ』と。

 別に、『他にもる』とは、明言してない。

 あん時のあんたは、まだそれを知れる、受け止められるだけの成長を遂げていなかった。

 出夢いずむの本性も知らなかった。

 だから、意図的に伏せた。

 よって、俺に八つ当たりするんは、お門違いだぜ?」



 テスト開始から、早3日目。

 残り4日の折返し地点で、音飛炉ねひろによって屋上に呼び出された出月いつくは、フェンスに体を預け紙パックのジュースを吸いながら、一切の悪びれもなく返した。



 その姿を見て、静かに音飛炉ねひろは思った。

 この二人は、本当に似ているなぁと。



「別に、それについて問い質すもりなど毛頭、りません。

 あなたや出夢いずむの言う通り私の、配慮や想像力、調査が乏しかったにぎませんから。

 いくつかの確認と、一つのお願いをしたかっただけです」



 飲み終えた紙パックを潰し、袋の中に入れ、何となしに空を見上げながら、出月いつくは告白する。



「推察の通り、今の俺は、あいつの保護者、同居人でもある。

 なんせ、俺だけだったからなぁ。『お前の財布を当てにするほど、俺かて落ちぶれちゃいねぇ』なんて。

 年甲斐も無く、そんな暑苦しいことを、きちんと面と向かって、開口一番にほざけるやつは。

 他の親類れんちゅうは全員、あいつの両親が残した財産や、出夢いずむの収入目当てだったんでな。

 で、一杯な罪悪感で張り裂けそうな以上、出夢いずむを歓迎する旨を伝えていた勇城ゆうき家にもられなかったわけだ。

 向こうも、おくびにも出さなさったが。

 筋違いなのは百も承知で、出夢いずむに対して幾ばくかの邪念は持っていただろうしなぁ。

 たった1人の愛娘を奪われたんだ。

 逆恨みしようと、無理もぇ。

 誰も咎められねぇよ」

 床を見下ろしつつ、出月いつくは続ける。



「死因は、交通事故。

 本命ではなかったものの、最終選考に残ったのを祝うべく。

 出夢いずむの両親、火彩ひいろの4人で、食事に向かう途中だったんだ。

 酒と薬を多量に服用してた、イカれた老いぼれトラック野郎が、信号無視して、正面から突っ込んで来やがった。

 両親は、押しつぶされて即死。

 火彩ひいろも、出夢いずむを庇う態勢を条件反射的に取り、運ばれた先の病院で、笑顔で息を引き取った。

 不幸中のさいわい、出夢いずむ達の乗ってる車の前にも何台かって。

 それが多少、クッションになってくれたおかげで、どうにか出夢いずむだけは助かった。

 しかし、三人が死んでなお、当たり前のごとく代わり映えしない現実と、そこで生かされてること違和感いわかんを覚え。

 結果、今のペシミスト、無気力、人間不信、捻くれ者、絶えず眠ってるよう出夢いずむが形成されてしまった」



 どうしようもないとはいえ、不甲斐ない自分に嫌気が差したのか、出月いつくは露骨に渋面になった。



「あいつも昔は、あんたみたいに、ガンガン行くタイプだった。

 っても人前では、これまたあんたよろしく、大人おとなし目なぼくちゃんだったし。

 テンションやキャラが激変するわけでなく、火彩ひいろの前では多少、ポジるってだけだったがな。

 火彩ひいろは名前の通り、『暖炉に灯る炎みたい』な、穏やかで暖かい、にこやかで芯の強い、ちょっと偉そうな女子でな。

 年の割には、口調も立派に淑女しててよ。

 名サポーターだった。

 あいつは、本当にいコンビだった。

 中学生の時点で熟年夫婦感を惜しみなく醸し、噛ましていたからな」



 ここでようやく、出月いつくの瞳は音飛炉ねひろを映した。

 めつすがめつ、まるで見定めるかのごとく。



出夢いずむが、あんたとだけ遊びたがってたのは。

 誰に対しても物怖じしない、自分の好きを、スタイルを貫く。

 そんなあんたが、火彩ひいろとダブって見えたからだ。

 あんたと話し、笑い、同じ物や時間を共有することで、あいつは贖罪しようとしていた。

 それでいて、あんたと遊び呆けることで、余計なことを考えまいと企んだ。

 最愛の人を失ってなお、呪いのように未だに燻り続けてる残り火。

 すなわち執筆欲を、片時だけでも封印しようとした。

 気休めでしかないのは重々、理解してな。

 あいつが教師陣に何も言われないのは全員、承知の上だからだ。

 出夢いずむが、大切な人を一遍に亡くして1年も経っていない、傷心中かつ取り扱い厳禁の、身寄りもほとんい自殺志願者だって、同情を禁じ得ないからだ。

 言っとくが、『取り扱い注意』じゃなく、『』な。

 言い間違えじゃあ、断じてねぇ。

 今の出夢いずむはなぁ……無数の爆弾を常に抱え、他人からの浅慮な言動によって着火、爆発し、発狂するような。 そんな、危険な状態なんだよ。

 だから、主体性まで喪失したのを逆手に取って、周囲を拒み続けてる。

 さいわい、あんなアンニュイな感じだから、クラスでは浮きまくってて、『トッケン』の面々以外は積極的に絡もうとしなかったんで、今までは限り限りギリギリ、どうにかなっていたがな。

 名前に性格、髪型……細部に至るまで瓜二つな、フィクション染みたあんたが正式に入部したのを川切りに、本性を隠せなくなって来たんだ。

 自分から両親、許嫁を奪った、この世界への、途方も当て所もい。

 誰かと一緒にないと眠気や食欲さえ起こさせない。

 そんな、沸々とした憤怒ふんぬを、な」



 フェンスに預けていた体を戻し、ポケットに手を突っ込みながら。

 出月いつく音飛炉ねひろを横切る。



「俺から教えられるんは、ここまで。

 今度こそ正真正銘、これで全部だ。

 こんなだが、これでもあんたには最大限、ベッティングしてる。

 精々せいぜい、オッズ上げまくってくれや」



 背中を向け、立ち去ろうとする出月いつく

 それまで意図的に閉口していた音飛炉ねひろは、彼の裾を掴み、訴える。



「だったら……協力、してください」

 涙している。そう振り返らずとも取れる、震えた声で、音飛炉ねひろは続ける。

「あなたにしか、頼めないんです。

 あなたじゃなきゃ、出来できないんです……」





 音飛炉ねひろは2日間、鬼教師のスパルタ指導の下、学校側や両親にも事情を説明し堂々とサボりつつ、猛特訓に明け暮れた。



 たがか2日間。

 されど2日間。

 その短い期間に音飛炉ねひろは持てる労力、時間のすべてを費やした。

 そして、テスト開始から6日目にして晴れて、対出夢いずむ用最終フォームを、見事に勝ち取ったのだった。



「正直に明かすよ。

 ここまでとは、流石さすがに思わんかった。

 度を越して、どうかしてるよ、あんたは」

「あ、あはは……。

 褒め言葉として、受け取っておきます……」



 心身共に疲れ果てた音飛炉ねひろは、そう出月いつくに返し。

 治葉ちよに差し出されたドリンクを一気に含み、屋上で体を大の字にして横たわった。

 ちなみに、彼女の横では既に、自身の目もキブンガーも『✕』になったまま、グロッキーな真由羽まゆはがダウンしていた。



「もう……あといんです。

 今度こそ確実、堅実、誠実に、決めなくては……」

「ええ。

 そうね。

 頼んだわよ、ヒロ」



 背中を叩いたあと、拳を突き合わせようとした治葉ちよに吹き出しながら、音飛炉ねひろも倣った。

 やっぱり自分達には、少女漫画より少年漫画が似合うらしい。



「あー……そのことなんだがな、お嬢ちゃんたち

 和気藹々かついムードが流れる中、ややバツの悪そうな面持ちの出月いつく



出夢いずむは、こう言ったんだよな?

『一週間の内に、解き明かしてみろ』と。

 つまり……『最終日まで大人おとなしく、ここで待つ』だなんて。

 そんなこと、一言も、言ってねぇんだよな?」



 ーーまただ。

 世界や時間、音や色が一斉に壊れたような。

 自分だけが取り残されたような、あの感覚。

 物凄く胸騒ぎがする、いやな感じ。



 出夢いずむによって仕掛けられていたトリックが、作動した音。



「っ!!」

 疲弊した体に鞭を打ち、治葉ちよ出月いつくの呼び止める声すら振り切り、一目散に駆け出す音飛炉ねひろ

 階段で転びそうになり、生徒や先生に衝突しかけ、靴すら履き替えず、無我夢中で、目的地へと足を動かす。



出夢いずむぅぅぅぅぅっ!!」



 鍵すらかけられていなかった出夢いずむの自宅に入り、仲間の名前を叫ぶ音飛炉ねひろ

 その中には、人の気配など欠片かけらく、もぬけの殻となっていた。



 オープンにしている代わりに空洞で、実体がい。

 そんな室内はさながら、今の出夢いずむ心模様もようを呈しているようだった。

 


 絶対に外れてしかった予感、予想が、的中してしまった。



 出夢いずむは、もう、ここには……いや。

 この町にすら、ないのだ。



 音飛炉ねひろ以外に誰もない部屋で、彼女のスマホが通知を知らせる。

 お気に入り登録をしていた小説……出夢いずむもっとも愛し、それに評価が結び付かなかった、『Faiveファイブ』の更新を伝える物だった。



出夢いずむ……!!」

 あるいは、どこかで缶詰めで執筆に励んでいるだけでは?

 そんな音飛炉ねひろの期待、希望はぐに、無残に壊された。

 


 更新はされていた。

 話は進んでいた。

 これは、間違いい。



 ただし。

 それは、お世辞にも『小説』の体は成していなかった。

 単なる言語の羅列によって無機質に紡がれた、物語……粗筋ですらなかったのだ。



「な、に……これ……」



 20万字にも及ぶ文字数で展開された、第1話。

 それに反し残りの4話は、すべてが1万字にすら及ぼない、実に冷め冷めとした雰囲気で語られていた。

 熱量が、気持ちが一切、届いて来ず、どこまでも業務連絡めいた、最低最悪のネタバレ。

 明らかに自暴自棄、愚行でしかなかったのだ。



 消息を絶った出夢いずむ

 自分が続きを切望していた作品の、あまりにもむごく、雑な終わり方。

 テーブルの上に置かれた、彼のスマホ。



 自分が不合格者の烙印を押されたと悟るのに。

 これ以上、他にどんな証拠、条件が必要だというのか。



「……」



 なかあきらめかけていた音飛炉ねひろは、スマホの横に置いてある箱に目を移した。

 なんの変哲もい、クッキーの箱である。



 しかし、綺麗に片付けられた状況下で、単なるお菓子が意味深に置かれるというのは、考えにくい。

 謎の引力に誘われるまま、好奇心に従い、音飛炉ねひろは箱を開け、中身を確認する。



 ホチキスで止められた、何枚かの用紙だった。

 ただ、1枚目には何も書いておらず。

 不思議に思い、音飛炉ねひろは2枚目をめくる。


 

 数秒後。

 出夢いずむの両目みたく濁り、虚ろだった瞳に、やがて赤い光が灯り。

 ポツポツと涙がこぼれ出した。



『主演、ヒーロー/院城いんじょう 音飛炉ねひろ



「なに……これ……」



 まるでさっきと同じ、けれどまったく違う独り言をつぶや音飛炉ねひろ

 そのまま彼女は、衝動的にページをめくり、のめり込んで行く。



 そう……自分達たちが来たるべき文化祭にて行う、舞台の台本。

 自分が夢にまで見た、『ハンパイア』の理想型、あるべき姿を。



 完璧だった。

正に会心の出来できと言う他無い、最高の脚本だった。

Faiveファイブ』の、あの呆気ない終わらせ方はなんだったんだと、出夢いずむに文句を言いたくなるくらいに、熱が、思いが籠もっていた。



 音飛炉ねひろ治葉ちよ真由羽まゆは風凛かりん出月いつく

 みんなに対する、素直な感謝の念が。



 無視され、嘲笑され、忘れられ。

 それでもなお、消えることい、特撮へのく無き情熱が。



 打ちのめされ、便利に使われ、騙し騙しで書き進め。

 依然として変わることい、無邪気な創作意欲が。



 灯路ひろ 出夢いずむすべて。

 過去、現在、未来が全部、言葉になって、そこには詰まっていた。



「ヒロッ!!」

院城いんじょうっ!!」

 自分のあとを追って駆け付けてくれた治葉ちよ出月いつく真由羽まゆは

 音飛炉ねひろは涙を袖で拭い、真顔で仲間達の方へ振り向いた。



「まだ……まだ、終わってない!!

 終わらせやしない!!

 だって、まだ生きてる!!

 出夢いずむも、私も、みんなも全員、間違いく、ここにる!!

 ちゃんと、生きてる!!

 出夢いずむのお父さんも、お母さんも、勇城ゆうきさんも、この中に、この脚本ほんの中に!!

 出夢いずむの心、記憶の中で、今も生きてる!

 彼を、生かし続けている!!

 こんな形で、こんな所で……終わらせたり、しないっ!!」



 本を広げ、キャスト欄に記された一同の名前を見せ、続いて音飛炉ねひろは、胸に大切に抱き締める。

 彼の心を、包み込む。



「全員、ダッシュで俺の車に乗れ!!

 こんなことろうかと、すでに当ての目星はつけてある!

 院城いんじょうの言う通りだ!

 今なら、まだ間に合う!!

 急げ!! 早くっ!!」



 女性陣が頷き合い、命令通り、ぐに出月いつくの車へと向かう。

 そして出月いつくが運転席、真由羽まゆはが助手席、音飛炉ねひろ治葉ちよが後部座席に座り。

 銘々にシートベルトを装着するやいなや、出月いつくの車が、安全かつ最速で走り出した。



月出里すだち!!

 渋滞状況をサーチして、最短コースをナビしろ!!

 刃舞はもう!!

 さっき渡したメモの優先順位に従って、片っ端から電話掛けまくれ!

 それが終わったら、全員の家庭に連絡と、俺の身の潔白をあらかじめ証明しとけ!!

 最後に、院城いんじょう!!

 お前が、この決戦の要だ!!

 この2日間に叩き込んだすべてを、改めてお浚いし、イメトレしてろ!!

 残りの二人も各自、役割もこなしつつ、復習しろ!!」



「せ、先生?」

なんだか、キャラが……」

「気にすんな!!

 実名と顔は出しちゃいねぇが、これでも多少、名の知れた心理学者でな!

 じゃなきゃ、あいつを養えるはずぇ!

 で、あいつの保護者でもある俺に、向こうの編集から接触して来たんだよっ!

 あいつは今、九分九厘、東京のどっかのホテルにる!

 小説家として働きやすい環境で、都内の学校に通いつつ、ルックスと、現役高校生作家って肩書きを武器に、本格的に売り出すんだとよ!

 で、その答えを出すまでの猶予が、明日までの一週間だったってわけだ!!

 あっちは、良くも悪くも、出夢いずむ自身の意思のみを尊重するタイプで、俺の言葉には実現性がともなわねぇ!!

 あいつを連れ戻すには、あいつの口から直接、『戻りたい』って言わせるしかんだっ!!

 だから俺は、この日に備え、お前を育てつつ、最終決戦のための準備も怠らなかった!

 今日は一睡もしねぇよう、寝溜めも済ませといた!!

 保護者の、顧問の威信にかけ、かならずお前を、一人残らず、無傷かつ最速で、あいつの元に送り届けてやらぁ!!」

 


 普段とはかけ離れた熱い台詞セリフが、3人は非常に心強かった。

 それに報いるべく、治葉ちよ真由羽まゆはは、各々おのおのに与えられた職務を全うし始める。



 と、その時、治葉ちよのスマホに通知が入る。

 この場には不在の、もう最後の部員、風凛かりんからである。



「『滞在中のホテルで、出夢いずむを見掛けた』!!

 要約した結果、そんな感じのRAINレインが、風凛かりんから届いたわ!!」

「はぁ!?

 なんだ、そりゃ!?

 話、出来できぎだろ!

 なにもんだ!? あの姉ちゃん!」

「別に、普通の人間です!

 ちょっと、都合くラッキー引き起こせるだけの!

 摩訶不思議な理由で、家系の因縁を断ち切れる程度の!」

「益々、分からん!

 だが、出来でかした!

 そのまま、見張らせとけ!」

「無理です!

 既読が付かない所から察するに、もう落ちてます!

 あの子、かなりのロング・スリーパーで、半日は寝てないと真面まともに動けないんです!

 しかも、一度寝たら最後、きっかり時間になるまでは、梃子てこでも起きないんです!」

「有能なのか残念なのか、分かんねぇ!!

 まぁ、構わん、礼だけ言っとけ!

 あと念のため、掻い摘んで状況、説明しとけ!

 まかり間違って、途中で起きて気付いて、協力してくれるかもしれん!

 それが終わったら、家族への報告だ!」

「はいっ!!

 代わりに、火斬かざん先輩に密着してもらってます!!」



 ここにはない、この件についてあずかり知らない風凛かりん火斬かざんすら、引き寄せる。

 ひょっとしたら、本当に強運なのは、ある意味、出夢いずむの方かもしれない。

 あるいは、彼の人徳による所か。



 真実は、さておき。

 これで、行く先は分かった。

 あとは、それぞれの別任務をこなしつつ、演技を磨くのみ。



出夢いずむ……。

 あなたは、本当にズルいです。

 意地悪で、捻くれてて、気紛れで、計算高くて、不器用。

 けれど、それを補ってあまる優しさで、私達をいつも親身に思い、助けてくれる。

 そんな、いつまで経っても、どれだけ断とうとしても、消息を絶っても決して嫌いにさせてはくれない、卑怯者です。

 だから……今から、迎えに行きます。

 私達がかならず、全員で。

 風凛かりん火斬かざんさんも、連れて」



 それぞれの願いと決意を胸に秘め。

 一行を乗せた車は、寝ずの夜をひた走る。

 その果てに待つゴール……出夢いずむの元へと向かうべく。

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