5 ヒーローの使命
「
あれで」
テスト会場となっていた教室を去り一路、部室を目指す中。
前を歩く
それに対し、
「人の命は、地球の未来!!
どんな危険も
世界の平和を心に誓う!!」
美しい髪を靡かせつつ、暑苦しい
かと思えば、やにわに普段のヒロイン状態に戻り、お
「それが、私のヒーロー道、私の
拳だけではなく、時には花も捧げなくては。
当たり前に
「あー……
あんた、もしかしてダイレ◯もイケる口?」
「
一通り、マスターしてますよぉ!
ただ、クロニクルガシャットでの変身は、まだ
変身道とは、実に険しく、奥が深いです……」
「いや、あの……。
誰も
そういうんじゃなくね?」
想像を遥かに絶するガチっ
そんな彼の心境を知らずに、二人はトッケンの部室前に辿り着き。
目の前に広がるご馳走の数々に、息を呑んだ。
フライド・チキンに、フライド・ポテト。
ハンバーグに、唐揚げ。
チキン・ナゲットに、焼き鳥。
そして、ハチミツの乗ったビスケットやケーキ。
そんな豪勢なメニューが所狭しと並べられたテーブルに、
「うぉぉぉぉぉ!!
ニキニキなニクニクだぁぁぁぁぁ!!」
先の件で全員が、満場一致で確信していたが。
このマドンナは、どうやら、どうにも男子力の方が高いらしい。
「あんたねぇ……。
せめて、
見向きもしないなんて、
「はぐっ!?」
驚きの
そんな彼女の背中を擦り、口元をウエット・ティッシュで拭う
胸の前で腕を組み、やや呆れている
現『トッケン』のメンバーが、
「分かり
で、こうして用意してたって
「は……
喜びの
「
「
「ぶー。
次は外しませんからねぇ」
「いや、
で?」
ツッコミつつ、
「結局、5人目はどうするのかしら?
もう1
「あー。それなら、大丈夫です。
そっちの方も、
「は? 誰に?」
クールな顔を崩し、素っ頓狂な表情をする
ペカペカした
つまり……。
「どーもー。
期待の新メンバーこと、
以後、
チャラさ全開で、今更過ぎる自己紹介をする
そんな彼の前に移動し、
「いや……先生は、顧問では?
てか、そもそもスクールカウンセラーって……」
「平気、平気。
校長と教頭と学園主任と教師が所属してる将棋部も
「それ、フィクション……」
「だったら余計、平気です!
何たって、この世界もフィクションですから!」
「ねぇ。
あんた、ちょっと黙っててくれない?
益々、手に負えない……。
かったるい……」
「平気です。
きちんと
昨夜の時点で、
「だったら、それを先に言いなさい。
ヒヤッとしたわ」
「なになになによー。
おじさんじゃ、不満な
「ええ、心底」
やれやれと言う
気にしない
「さて。では、改めまして」
グラスを取り、掲げる
他の部員達も、それに倣う。
「私と、
新入部員3人が加入し、新たに生まれ変わった『トッケン』。
いや……『トッケンZ』に、乾杯!!」
「ちょっと。勝手に改名しないで
「えー?
バトル物のお約束じゃないですかー。
既に、こうして看板も作ったのにー」
言いながら
が、負けじと、春映画感の凄まじい『Z』の部分を剥がす。
「そういう
一部を奪われ涙しながらも早速、部室はドアの看板を交換して来た
「改めて……
これからも
会釈し、頭を下げる
そんな彼女を、
が、ただ一人、
「
「……それよ、それ」
真意が読めないまま、
「いつまで、他人行儀なのよ。
そろそろ、ほら……名前で、呼んで
……『ヒロ』」
「!?
思わぬ展開、そして呼び方に、露骨に反応する
そんな彼女に向け、やや
「
あんた、この呼ばれ方が望ましいんでしょ?
だから、これからは、そう呼ぶわ。
あんたも、ほら……『
その方が、ほら。
正直、
ツン照れりながら言いつつ、やはり羞恥心が勝ったのか、最終的に顔を突き合わせられなくなる
そんないじらしい母の下で、
つまり、これは、激アツ友情爆誕シチュ。
彼女が強く憧れていた夢が一つ、実現したのである。
向こうが許可、提案してくれた以上、断る理由は
が……
自分の頬を滴る感触を覚えた
だって、泣くなんて、失格だから。
ヒーローは、誰にも気付かれず、
自分に言い聞かせ、袖で涙を拭い、心を落ち着かせ。
そして、眩い笑顔を
「……はいっ!!
宜しくお願いしますっ!!
『
『
元気に、爽やかにお辞儀する
そんな彼女に頭ポンポンをした
「さて、と。
そういう
これから、あんたを名字では呼べなくなった
「……別に、最初から不許可だったんでもなし。
任せるよ」
「そ。
じゃあ、『
「……前言ってた
「それはそれ、これはこれよ」
あー、と
それによって、彼との距離を詰め、主体的にさせようとしているのだと。
一匹狼っぽいのに、意外と仲間思い、寂しがり屋なんだなぁと。
ところで、『ニセ彼氏』云々について、後で根掘り葉掘り聞こう。
なんて
そして、
「
改めて
……
養殖され捲った天然発言を。
「あ……。
は……はい……」
想像以上の難易度、
どこからともなく聞こえて来た
おまけに原因、詳細は不明だが、彼に名字で呼ばれるのは、今まで経験した
「ところで、
お願いが
「は、はい。
思ってもみなかった積極的な発言に面食らいつつ、鍛え抜いたスマイル・スタイルで即時対応する。
失礼ながら、色恋沙汰には興味が
そう油断し切っていた
「今度、
もしくは、喫茶店とかでお茶しながらとかでも」
「
……だからといって、内容が頭に入り切る前に二つ返事で即答するのは、女子として失格かもしれない。
「……ヘァ?」
続け
言葉を失い、目が点になり、二人を指差す
ひたすら『!?』『何事!?』『ハルトマン』などとキブンガーを変え、震える
そんな三者三様の状況下で、
「そ、それは、あれですか……?
もしかして、私と……」
やや勿体振った、焦れったい、やきもきさせる調子で引っ張る
瞬く間に、その両目に、輝く銀河が広がり、
「もしかして私と一日中、特撮トークに明け暮れたいって
体が棒になり、そのまま倒れる
やはり
そんな3人を置いて、特撮好き達は、話に花を咲かせる。
「そうです」
「私と一日中、『二人のマイテ◯と超キョウリョクプレー、どちらがよりエモ
「左様」
「
「エギザクトリー」
「最終的には、今まで考え、溜めに溜めた秘蔵の、完全オリジナルのヒーローやフォーム、作品やアイテム、主題歌や挿入歌を教え合ったりしたいと、そう申すのでござりまするか!?」
「それは是が非でも御免被るでござりまする」
テンションによって
桃色なオーラは
「ちょっと待ったぁ!!」
彼女は白目を剥いたまま、
「
あんた、
「うん」
「なのに、でゅぉぉぉして、
「うーん……」
いけしゃあしゃあとしていた
「少し、解釈違い?
ニアミス?
方向性の違い、的な?」
そして相変わらずの、納得させ切れない、言葉足らずなフワッとした発言を
かと思えば、彼女の両目に、不気味な赤い閃光を宿させる。
「この、このっ……!!
かまととサークラ女狐狸がぁっ!!」
「豊富っ!?」
「じゃぁかしぃ!!
よくも
「カマチョが
ていうか、やっぱり寂しがり屋だったんじゃないですかぁ!
孤独決め込んで進むより、繋がる強さを必要としてる方針ですかぁ!?」
「黙るぇぇぇぇぇ!!」
手を怪しく小刻みに動かし、
「どんな
声!? 品作り!? 気品!? 熱意!? 女子力!? ヒロイン力!? 布教!? 重課金!?
秘訣を
「ちょっ……やぁっ……。
そこっ、はんっ……。
「さては、これね!?
この、
少しは、スレンダーな
「ひゃっ……!!
だ、
私、私……イケメンもイケボも大好物ですけど、そっちには目覚めたくないですぅぅぅぅぅ!!
ご遠慮願いたいですぅぅぅぅぅ!!」
即座に、追撃を計る
「やぁやぁ、皆様、お揃いで!
此度の
そして、この
今後とも、より一層のご指導、ご鞭撻の
という
皆で、食すでございますですよぉ!!」
「失礼する。
風紀委員長の、
喜びたまえ、
君達『トッケン』の活動が、認可された。
といっても、『風紀委員の同伴』という条件付きでな。
かくして、本日から私が、代表として『トッケン』に派遣された。
これからも、健全に、学生生活を謳歌してくれたまえ」
「あ、
ありがと」
いきなりドアを開け、高らかに袋を掲げ、出オチ感マックスで提案する
同じく、物凄く大事な、今回のメインを、どさくさに紛れてサラッと
そんな中、
「……『
ですって……?」
「え?
うん。
ちょっとのっぴきならない事情が
「お前までもか、ブルータスゥ!!」
「ひゃっ!?
ちょっ……
そこまで、がっつかんでも!!
でも、
さては、そういう催しでありますか!?
この
「
殿中……いや、校内でござるぅ!
でも楽しそうだから、混ぜてくださ〜い♪
ほら、
「き、君達っ!!
早速、校則を破るんじゃない!!
部室とて、
走る回るなど、言語道断、違反行為だぞぉ!?」
「
そんな5人を、真意の取れない眼差しで、ただ眺める
彼の横に移動した
「お前……
こんな
あいつは、断じて
って、おいっ!!」
無言で立ち去り、まだ話してる途中の
そのまま、体重をかけてドアを開けられない
「……父さん。
……母さん。
……ヒロ……。
……一体、いつまで頑張れば、どう生きたら……。
※
彼が、何を言っているのか。
どういう
「……言ったよね?
『そういうのは、遠慮したい』って。
なのに……どうして君は、てんで分かってくれないのかな。
君なら分かってくれるんじゃないかって、淡い期待してたのに、残念だけど……。
どうやら、当てが外れたみたい」
降り注ぐ雨の中、傘も差さずに立ち尽くす二人。
夜の暗闇の中、車のライトで一瞬、照らされた彼の表情は、言語などでは到底、表せない
深く重く果てしない悲しみ、絶望、儚さに満ちていた。
「もう一度だけ……最後に、言うよ。
勝ってみせてよ、
さもなくば……」
ピシャピシャと水溜りを踏み、
風と雨によって音が聴き取り
まるで、その一瞬だけ、世界が時を、動きを、音を失ったかの
自分達が、自分達だけが、切り抜かれたか、取り残されたかの
「『トッケン』、辞める。
君とも、
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます