第7話

 裁判所をイメージしてもらえれば、理解しやすいかもしれない。裁判官席に久慈さんが座り、弁護側と検察側の席に岸渡さんと鎌谷さんがそれぞれ座っている。この場合は、どちらも弁護席――と、言うのかもしれないが、僕は久慈さんの隣の席に座っていた。


 突然こんな場所に召集されて、困惑している二人に、久慈さんは口を開きます。


 「突然の召集に驚かれていると思いますが、最初に説明させていただきます。お二人の内どちらかには、本日亡くなっていただきます。そこで、今からお二人には、それぞれ生きたいと思う気持ちをアピールしていただきたいと思います」

 「な、何だって!」

 「どういう事なの?」

 「申し遅れました。私、死神の久慈城クリード・ステラスミスと申します」


 当然、死神と言われても、納得出来ないのは当たり前で、久慈さんは淡々と説明していきました。

 二人が悩んでいる事や、本人しか知り得ない情報。

 次第に、二人も久慈さんが死神である事を理解した様でした。


 「それじゃあ、私は自殺をするの?」

 「左様でございます」

 「俺は、どうなるんだ!」


 「岸渡様は、この後警察の突入の際に撃たれて死にます。それと、ここでの事は記憶が消去されますので、未来を変える事出来ませんので、悪しからず」

 「……」


 自分が死ぬ事を告げられて、呆然としてしまうのは、当然の反応。僕も、同じ立場にいたら、同じ様な反応をしていただろう。


 重い空気が場を支配する中、久慈さんが口を開く。


 「最初に説明しましたが、どちらかお一人には亡くなってもらいますが、どちらかお一人には生きていただきます。これは、その為の命のオーディション。その最終審査でございます。お二人とも、何もアピールする事がないようでしたら、このまま審判を下したいと思いますが……」

 「……わ、私は生きたいです!」

 「ちょ、ちょっと待ってくれ! 俺だって生きたい! 婆さん、あんたは十分に生きただろ? 俺には幼い子供もいる。頼む、俺を生かしてくれ!」

 「わ、私だって、子供どころか、孫だっているんだい。孫の成長を見るまでは死ねないね!」


 予想していた通り、お互いを罵り合う岸渡さんと鎌谷さん。人間とは、こんなにも醜いのかと思うほどに、僕は心底引いていた。


 「そうだ! 死神様。私はお金なら多少の都合が出来ます。ですから、私を生かしてください」

 「……あ、き、汚ねえぞ」


 「地獄の沙汰も金次第――。と言いますが、あれは人間の言葉でごさいまして、私達死神にはお金は無価値にございます」

 「……そ、そんな……」

 「あっはははは。残念だったなババア!」

 「……」


 最早、収集のつかない状況となり、僕はこの場を久慈さんはがどう治めるのかと、期待を胸にしていましたが、久慈さんは思わぬ事を口にしました。


 「これでは、話が先に進みませんね。有坂様にも、ご意見を伺うとしましょう」

 「……え!?」


 その瞬間、二人の視線が僕に向けられた。

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