第2話
死神――。
死を司る神――。
ファンタジーでは、定番の死神――。
それが、僕の前に現れたらしい。
「死神って、あの死神?」
「いかにもで、ございます」
「何を言っているのかな?」
「ですから、私が死神なのでございます。突然、目の前に現れて、信じられないかもしれませんが、事実でございます」
どうやら、僕は頭のイカれた男に関わってしまった様だ。コミュ障ではないが、人との関わりを極力避けて来た僕には、この手の人間の対処法が解らない。
とりあえず、あまり刺激しないようにしよう。
「えーと、死神さんは――」
「これはこれは、失礼しました。私は
「……はあ? 僕は――」
「
「な、何で僕の名前を……」
「勿論、知っていますよ。私、死神ですから」
死神には、個人情報保護法は適応されないらしく、僕の名前を知っている様である。
まあ、これから死ぬ僕には、どうでもいい事なのだが……。
「それで、有坂様。自殺をお考えのご様子ですが、ちょっと待っていただけませんか? 五十年程……」
「五十年? 死神さん――」
「クリードと。もしくは、スミスでも構いませんが」
「……久慈さん。五十年も待ったら、僕は人生の大半を過ごさなければならないでしょうが! それが嫌だから、自殺を考えているのでしょう」
「そう、申されましても……。有坂様に今死なれますと、色々と都合が悪いのですよ。死神的に」
死神的――って、随分とよく解らない事情だ。
それに、勝手な事を言っているのは、明らかに久慈さんの方なので、僕はかまう事なく強行する事にした。
「よく解りませんが、僕は今日この場所で死にたいのです。……最期に会った人間が、こんな変人で、やはり僕の考えは間違っていなかった様です」
「変人とは、随分な言いようで……」
「じぁ、さようなら」
僕は、久慈さんに構う事なく、ビルの屋上から飛び降りました。
これで、この退屈な人生とさようなら出来ると思っていたのですが、ここからが僕の不運の始まりです。
「ちょっと、話は終わっていませんよ」
「!?」
久慈さんは、背中からコウモリの様な羽を広げ、僕の身体を掴んでいました。
そのまま、僕を抱えてビルの屋上へと飛んだのでした。
「え、ええ! く、久慈さん。本当に、死神なの?」
「はい。私は、本当に死神なのですよ」
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