第24話 災厄級モンスターを殲滅させる

今のクラウンホワイトからは、さっきまでの威圧感や絶望感を感じなかった。

むしろ、クラウンホワイトが俺に対して恐怖感を抱き始めている事が分かる。

バレていないと思っているのか、はたまた気付いていないのかは分からないが、少しずつ後ずさりしていて、逃げようとしている。


災厄級モンスターすら、恐怖に陥れる。


それが聖剣。


ダリアの強化魔法で威力がかなり上がった大火災コンフラグレイションをモロに二発喰らった時ですら、クラウンホワイトはまだ俺に負ける気などさらさら無かっただろう。

その証拠に、抵抗しようという意志が明確に感じられた。

だが、聖剣を見た瞬間この有り様だ。


もしかして俺はとんでもない強運なのかもしれない。

勇者の血統でもないのに、聖剣に選ばれたのは。


そして、聖剣に選ばれた以上は、あの二人との約束を守らなくてはならない。


必ず、ダリアを次の女王にする。

それまでは俺が必ず守る。

……まあ、一度は諦めたけどな。

ダリアのことを守れる人間になる事を。

ダリアのことを守れる強さを得る事を。

ダリアの隣に居続ける事を。

だけど、今の俺ならそれが出来る。


……アザレンカと約束なんてしていたか?

何も覚えてないな。

まあ、良いや。


聖剣が言っていたように、アザレンカも俺が守ってやればいい。

アザレンカが勇者として認められない不安があるというのなら、俺が一緒に新しい聖剣をアザレンカの為に見つけてやればいい。

勇者のパーティーメンバーとして、ダリアと俺でイーグリットの人間にアザレンカが勇者として認められるようサポートすればいい。


それを叶える為には、まずこのクラウンホワイトを倒して、あの二人の元へと戻らなくてはならない。


一気に勝負を付けてやるよ。


音速ソニック!」


悪いな、クラウンホワイト。

何かしようとしていたみたいだが、そんなんじゃ遅いぜ?

高速移動魔法と聖剣を使い、全てを終わらせた。


「グァ!? ガァ!? グァァァァァガァァァァァ!!!!!」


ドーーーーーン!!!!!


喉に大火災コンフラグレイションをモロに喰らったせいで、声が出なくなっていたクラウンホワイトは、大型モンスターとは思えないほどのまるで普通の人間程度が叫ぶような声の大きさの断末魔の叫びを上げて地面に倒れ込み、倒れ込んだ際の音が洞窟内に響く。


まあ、当然だろう。


クラウンホワイトは、俺の手によって四本の足を一瞬にして斬られて失ったのだから。


……てか、聖剣切れ味凄すぎ。


クラウンホワイトのあの太い足が、スパスパ切れちゃったよ。


しかし、しぶといな。

四本の足全てを斬り落とされて、地に這いつくばっているというのに、クラウンホワイトはまだ絶命に至っていない。

むしろ、体をバタバタさせ俺が近付けないように抵抗しているようにも見える。


またも、大口を開けて氷のブレスを出そうともしている。

体の内部を魔法で焼かれた事も忘れ必死に口を開ける。


追い詰められた者ほど怖いものはない。

これはお袋に教えて貰った言葉だ。

心置き無くトドメを刺させて貰おう。


覚えているはずだ。

先代の勇者、マルクが強大な敵に止めを刺す時に使うんだと教えてくれたあの技を。


「聖剣よ、俺に力を与えろ! 聖なる火を以て、俺に仇なす愚か者を焼き尽くせ! 連天滅火スカイ・バーンアウト!」


「グァァァァァ!!!!! ガァァァァァ!!!!!」

聖剣から出た聖なる火は、洞窟の天井を突き破るのでは無いかと思ってしまうくらい高く上がり、クラウンホワイトの体を焼き尽くしていく。

クラウンホワイトは、断末魔の叫びを上げ続ける。


だが、それも長くは続かなかった。

そして、クラウンホワイトの体が、完全に跡形も無く灰になった時、消してもいないのに火は勝手に消えた。

骨すら残っていなかった。


……クラウンホワイトの牙なんて、売ったら凄く高く売れただろうに勿体無かったな。

全て、ただの灰と化してしまった。


災厄級モンスターを倒したという喜びより、俺は骨や牙すらも全てただの灰に帰してしまう、聖火の威力にただただ畏怖し、アザレンカが凍死させまくったホワイトウルフの牙と皮を剥いで、急いでダリアとアザレンカを探しに、洞窟を出た。


ダリアに拘束魔法掛けたままだから、早く見つけてやらないと。


……ホワイトウルフ数十匹分の牙と皮を袋に入れて持ったまま探すとか、マジで罰ゲーム過ぎる。



数十分ほど来た道を戻りつつ辺りを探したが、ダリアとアザレンカはいない。

もしかしたら、もっと先に行ってるのか?


瞬間移動テレポーテーション


瞬間移動を使い、先程森に入る際に方角を決めた場所まで戻る。

しかし、いない。


「街へ戻ったのかな?瞬間移動」

今度は宿屋の受付近くへと移動した。


だが、二人の姿はない。


「あ! プライスお帰り! 何か血相を変えて二人が街に帰ってきたけど大丈夫だったの!? ていうか何で、第二王女がアザレンカのパーティーメンバーになっているの!? 後、その大きな袋何!?」

受付にいたキャロが俺に気付き、焦った様子で色々聞いてくる。


……ダリアの奴、何やってるんだ……。

何で、自分から正体を晒すような事を……。

どう誤魔化せば良いんだよ。


「た、ただいま。実はアザレンカの依頼を俺が協力していた所にダリアが視察に来たんだよ」

「視察?」

「ほ、ほら、ここ二ヶ月アザレンカが何もしていなかったから、本当に勇者として相応しいのか、ある程度魔法が使えるダリアが一緒に依頼を共にして見極めようって話になってたらしくてさ」


……ヤバい、滅茶苦茶下手な嘘をついたぞ俺。

流石にバレるか……?


「ああ……なるほどね。ここ二ヶ月王都に報告も何もしてなかったみたいだからね、アザレンカ。痺れを切らして第二王女が勇者として相応しいのか確認したくなるのも分かるわ」

キャロは普通に俺の嘘に対して納得していた。

……どんだけラウンドフォレスト内で信用無いんですかね? アザレンカは?


俺は溜め息を吐きながら、アザレンカのフォローをしてやることにした。

まあ、実際今日は大分活躍していたしなアザレンカ。


「そんなことないさ、これ見てくれよ」

「何それ……? ホワイトウルフの牙と皮……?」

「ああ、アザレンカがやったんだ全部。ただ、途中でちょっと強いモンスターと出会ってしまったからな、生憎アザレンカとそのモンスターとでは相性が最悪だったから、ダリアを連れて帰って貰ったんだよ」

「……本当にちょっと強いだけだったの? あの二人大分焦ってたわよ? それに第二王女は魔法で動けなくなっていて、アザレンカに担がれていたし」


……ダリア、まだ拘束魔法解けてなかったんだ。

まあ、あの時大分俺は焦っていたから、強目に拘束リストレイントを掛け過ぎたんだな。


「だって、ダリアを怪我させる訳にはいかないだろ?それなのに一緒に戦うって聞かないから、拘束魔法で動けなくしてアザレンカに無理矢理連れ帰らせたんだよ」

「なるほどね、大体は分かったわ」


……よし、何とかキャロを納得させられたな。


「そんなことより二人は?」

「……ラウンドフォレストの領主の家へ殴り込みに行ったわ。プライスが死ぬかもしれないから、領主命令でラウンドフォレストにいる騎士を全て集めて、助けに行くんだって」

「……何やってんだ、あの二人」

「本当にちょっと強いモンスターだったの?あの二人が大袈裟なだけ?」

「……今日の夜飯はいらん。アイツらを連れ戻しに領主の家に行ってくるわ、説教してやらないとな入念に」


また、女勇者バカ第二王女バカに説教しなければいけないことが一つ増えたのか。

本当に余計なことを……。


「プライス、領主の家に入れるの?通して貰えないんじゃ?」

「……騎士王と大賢者の間に産まれた息子で、勇者と第二王女とパーティーメンバー組んで依頼こなしているんだから余裕だろ」

「……何かこうやってタメ口で話していいのか戸惑ってしまうくらい今のプライスは凄い存在になっているわね」

「そもそも、俺は客なんだから、タメ口で話しているのがおかしいんだよなあ……とりあえず行ってくるよ」

「行ってらっしゃい、その大きな袋も持っていくの?」

「依頼が完了した証拠だからな」

「気をつけてね」

「ああ」


そういって俺はキャロと別れ、宿屋を出る。


やれやれ、災厄級のモンスターを倒した後だというのに、俺に休む時間は無かった。

でもまあ、あの二人が無事で良かった。


俺は笑顔でラウンドフォレストの領主の家へと向かった。

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