第388話 罠に嵌められて

さて、ダンジョンに入ろうと思うと数人が来る。エノクは、怯えた雰囲気で葛葉の後ろに隠れる。


「さてさて、どうしたものでしょうね。」


「葛葉、逃げよう?逃げようよ!」


オロオロと、慌てた雰囲気である。


「落ち着け、エノク。」


ハルトは、真剣な雰囲気である。グレン達は、無言で見守っている。シュゼは、心配そうである。


「無視します。さて、急ぎましょうか。」


全員で、足早にダンジョンに入る。暫く歩くと戦闘に。その途中に、追跡者がエノクを勢いよく突き飛ばした。隠し部屋に落ちて行くエノクを、躊躇う事なく追いかけて落ちて行く葛葉とハルト。


「まったく、困った相棒だぜ。」


グレンは、呟きながら消えかけの隠し部屋に走る。無言で、後ろを走って着いてくるシュゼ。ユウユウとトモも、素早く反応して追いつく。そして、滑り込むとそのまま落ちて行った。追跡者は、驚いた表情で躊躇いなく落ちて行った葛葉達を見ていた。


戦闘中に、ターゲットが消えたのだ。魔物のターゲットは、当然だが追跡者達に移る。魔物は、ゾロゾロと追跡者に迫る。そして、ダンジョン内に悲鳴が響き渡るのだった。光となって消える追跡者達。




葛葉は、深いため息を吐き出してエノクを見る。落ちるのが怖いのか、悲鳴をあげている。ハルトは、盾を出して受け身の体勢をする。ウィンドを開き、アバターチェンジ。龍人になると、落下を加速させる。そして、エノクを抱えると空歩を発動。勢いを殺して、衝撃なくふわりと着地する。隣に落ちるハルト。それを見て、エノクを座らせハルトを回復。


「え?」


「ごめんなさい、判断を間違えました。」


葛葉に戻ると、素早く巨大狐になってグレン達を受け止める。そして、意味を正しく理解するエノク。


「えっと、皆んな来てくれたの?」


「はぁ…、判断ミスしました。ごめんなさい。」


落ち込んだ雰囲気で、謝る葛葉に全員が笑う。耳がぺたんとなり、尻尾が下がってしまっている


「大丈夫、ハルト以外はノーダメージだし。」


エノクは、元気よく言う。


「葛葉、この先って裏ボス部屋だよな。」


通路を見て、真顔で葛葉を見るグレン。


「裏ボス部屋?」


グレンの言葉に、キョトンとするエノク。


「隠し部屋から行ける、隠しエリアのボスを裏ボスって言うんだったよな。どの隠し部屋から、行けるかはランダムで決まるから普通は簡単には行けないけどさぁ…。ここに、幸運の狐さん居るからな。」


ハルトの言葉に、エノク以外が納得の表情をして頷く。葛葉は、思わずサァーっと青ざめる。


「わ、私ですか?確かに、幸運は高いですけど。」


「さて、上に行くには裏ボス倒さないとだぞ。」


グレンの言葉に、全員が真剣になる。


「すまない、ここの裏ボスってなんだ?」


シュゼは、考える雰囲気だ。


「ケルベロスだ。シュゼ、楽師だよな?」


「眠らせろと?無茶を言う、レベルが足りない。」


シュゼは、苦笑している。


「ケルベロスは、楽師が眠らせないと負けイベントだぞ。それ以外、攻略方法が見つかってない。」


トモは、そう言うとどうするかなと考える雰囲気。


「それと、回復役がいない!」


ユウユウは、元気よく笑うと言う。


「それなんだよな…」


グレンの言葉に、エノクは葛葉を見る。それで、シュゼ以外の全員がどうやって助かったのか察した。


「葛葉、どうする?」


「シュゼさんは、私の秘密を守れますか?」


全員が、シュゼを見る。


「それは、勿論だが。」


葛葉は、ウィンドを開きルイスになる。目を丸くして、固まるシュゼにエノクはもう一度ルイスを見つめる。指輪を掛けて、人の姿になるルイス。


「シュゼさん、内緒ですよ?」


シュゼは、無言でうんうんと頷く。


「葛葉…じゃなくて、何て呼べばいいの?」


エノクは、キョトンとしながら聞く。


「僕の時は、ルイスと呼んでくださいな。」


ルイスは、ノホホーンと笑う。取り敢えず、裏ボス部屋前に行く事になる。敵は、居ないので走る。




ルイス達は、ランタンを置いて座る。


「さて、どうするかなぁ。」


全員が、無言で考えるのだった。

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