第383話 勇気

ルイス達は、獣王国に入ると大声でエノクの悪口をいう数人。葛葉は、無言で視線を向けると、黙る。興味をなくした様に、視線を外す葛葉。ハルトは、隣で怒りを堪えている。エノクは、怖がっている。


「所でエノク、君のレベルは?」


「えっと、葛葉達のお陰で213レベルだよ。」


驚いたが、正気に戻り質問に答える。その声が、震えていた事に気づいたけれど葛葉は無視する。


「なるほど。なら、彼らと戦っても余裕で勝てますね。彼ら、君の半分以下のステータスですよ。」


葛葉は、暢気に言えば固まるエノク。


「本当に、この世界での彼らが怖いですか?」


落ち着いた雰囲気で、首を傾げて聞いて来る。君が怖いのは、リアルの彼らでしょ?っと、優しく微笑む葛葉にハッとするエノク。ハルトも、笑い頷く。


「ね?怖くはないでしょう?」


笑い飛ばす葛葉に、思わずつられて笑うエノク。そして、深呼吸して悪口を言う人達を見てみる。


そして、勇気を出して言い放つ。


「そんなに、大声で言わなくても聞こえてるよ。」


すると、ギョっと驚く周り。


「喧嘩を売るなら、買うけど?」


そう言うと、大剣を取り出して構える。


「あの表情、兄弟ですね。」


葛葉は、やれやれと笑う。


「以外だな…。」


ハルトも、そう呟いてから見守る。そう言っている間にも、2人が光になって消えていく。大剣使いにしては、スピードが速いし安定した剣撃である。


「大剣は、スピードアタックには向かないのですがね。小柄な体格を活かして、最小限の動きと反射神経で器用にも実現してます。本当に強いですね。」


葛葉の飾らない言葉に、ハルトは驚きながらもエノクの動きを無言で観察する。ハルトは、タンクだからだ。エノクには、聞こえてない様である。


忘れてはいけない、彼はアメリカサーバー最強最高のクランの一員である事を。その戦闘センスは、兄にも劣らず耳さえ聞こえれば、大抵の敵は敵ではない事を。エノクは、楽しそうに大剣を振るう。


最早、一方的な戦いであった。


「さてと、今のうちに採取しちゃいましょう。」


「了解。」


暫くして、エノクが近づいて来る。


「随分と楽しそうでしたね。」


「うっ…。楽しくなって来ちゃって…。」


視線を外して、恥ずかしそうに言う。


「戦闘狂め。」


ハルトは、冗談っぽい雰囲気で言う。


「違うもーん!」


逃げるハルトを、追いかけながら言う。


「2人とも?納品に、そろそろ行きますよ?」


その言葉に、2人は戻って来るのだった。


「最初は、楽なんだな?」


「さて、どうでしょうね。納品までが、クエスト内容ですから。まだ、何か起こりうる可能性も。」


葛葉は、マップを確認してから立ち上がる。


「なるほど、気をつけないとだね。」


エノクは、頷いて言う。


「そうですね。」


そう言って、納品場所を目指す。2回の戦闘が、やはり存在しており、クリアして依頼主を助ける。


そして、首装備の秘伝書を貰い依頼達成。


次は、フランスサーバーなので、急いでサーバー移動する。そして、その音楽にエノクは感動する。


「これが、フランスサーバーのメイン楽曲。」


「とても、綺麗ですよね。さあ、行きましょう。」


葛葉の言葉に、2人は頷くのだった。

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