第380話 取り敢えずイベントへ

ルイスは、謝りながらも歩く。グレンは、やれやれと笑いユンゼは思わず微笑む。むすっとしていたセツナだが、入り口で立ち止まる。ウィンドが現れ、難易度を聞いてきたからである。


チョコ、義理チョコ、友チョコ、親友チョコ、本命


☆1〜☆5迄の難易度で、考える女子2人。ルイス達には出てないので、ゆっくりと待っている。


「これ、難易度?なのよね。」


「気持ちの問題よ。貴方が、隣の彼にどのチョコを送りたいかで決めろって事でしょ?その気持ちがあれば、高いハードルも関係ないよねの雰囲気がするわ。気持ちに正直に行きましょう。まあ、何にせよ…苦労するのは、彼達になりそうだけど。」


そう言うと、ユンゼは本命を押す。セツナは、ドキドキしながらも隣をチラリと見る。ルイスは、キョトンとしてから優しく微笑む。どうやら、見えてない様である。本当に、気がきかない運営である。


本命を押して、進んで行く。


「難易度、一番難しいのにしたから。」


「おう、頑張る!任せろ!」


隣で、そんな会話が聞こえる。


「その、私…弱いけど一番難しいのにしたわ。」


「そこは、気にしないでください。一緒に、頑張りましょう。僕も頑張りますし、気負う必要は無いですよ。こういうのは、楽しんだ者勝ちなのです。」


ルイスが、ノホホーンと微笑むとホッとするセツナ


「うん。」


嬉しそうに、笑うセツナ。それを見て、ニヤニヤするグレンとユンゼ。ルイスは、気づいてるが無視。反応したら、負けだと理解しているからである。


「さてと、最初のクエストだな。」


グレンは、考える雰囲気である。


「えっと、採取クエストですね。『隠された採取ポイントを探し、バレンタインチョコの素材を集めよう。』ですか。戦闘はなしみたいですね。」


図鑑機能が、追加されました。ここで、個数を確認出来ます。鑑定機能が、追加されました。


ルイスは、思わず苦笑する。


「なるほどな…。」


グレンも、理解したのかため息混じりに言う。


「これって、鑑定すれば図鑑にのるのかしら?」


「採取した時点で、登録されるぞ。さて、ここで鑑定機能を追加する意味を考えてみようか。」


ユンゼの言葉に、グレンは明るい雰囲気で言う。


「うーん、品質とか?」


ユンゼは、キョトンと言う。


「品質は、採取スキルで決まります。僕達は、採取のレベルをMAXにしてるので最高品質で収穫する事が可能ですし。まず、その事に必要ないです。」


ルイスは、暢気に笑って言う。


「見えない物を見る為?」


「うん、取り敢えず正解。試しに、鑑定しながら見渡してみようか。それと、精霊獣も鑑定しよう。」


木と木の間に、鑑定が反応する。行ってみると、宝箱が見つかるのだ。素材や調理器具などが出る。


レアリティは、ラック数値で変動する。


精霊獣は、アイテムをあげると手伝ったりヒントをくれる。それと、鑑定で見ると担当素材について出てくる。親交度を高めると、いい事があるかも?


精霊獣は、図鑑を埋めたいけど見つからない!って時に役立つ案内役でもあるのだ。仲良くしよう。


「グレン、図鑑の詳細の鑑定をしました?」


ルイスは、クスクスと笑って言う。


「ん?これは…、性格が悪くないか?」


「こんな、隠し要素があるとは…面白いですね。」


精霊獣猫 苺担当


猫じゃらしで、遊ぶと親交度が上がりやすい。


ここから、鑑定結果


この精霊は、罠を素通り出来ます。紳士ならば、ちゃんと守ってあげてくださいね。女性には、この鑑定結果は出ません。頑張って乗り切りましょう。


※戦闘は有りませんが、罠はあります。

※女性はラック数値、男性は、全ステータス低下。


「グレン、罠はイベント鑑定では見つけられない仕様の様です。そして、こういうパートナーに秘密系の会話は音が消えてあちらには聞こえないです。」


「なるほど、危ねぇーな…。了解だぜ。」


ルイスの言葉に、グレンはヒヤヒヤしている。


「ちょっ、こら!そっちはダメだ!」


グレンが、全力で走って行った。ルイスは、困った笑いを浮かべデコイを投げて罠を誤発動させる。発動した罠は30秒後に復活するので移動する。


「これ、守り切れるか?」


「やらなきゃ、彼女達が生産スキルを使えなくなりますよ。料理は、ラックあってのものですから。それに、この後は戦闘が無いとは書いてません。全ステータスを、下げられるのは割と厄介ですよ。」


ルイスの言葉に、頭を抱えるグレンである。ルイスも、内心はどうしようかと苦笑してしまう。


最高難易度のバレンタインイベントなのだ。


運営さんは、リア充に厳しいのだった。是非とも、クリアして爆発して欲しいと願って作られたのだから。末長く永遠になぁ…。銃や爆弾ではなく、ミサイルや火炎放射器を装備したイメージとだけ。


悲鳴を上げつつ、何とかデバフを受けずクリア。


予想通り、中ボス《チョコくれー》と戦う。弱い敵であり、女性プレイヤーしか襲わないのでブチギレたグレンに燃やされてしまうのだった。その際、さりげなく無言でルイスは全力バフを盛りに盛って限界突破にしていた。常に、ニコニコしたまま。


歩いていると、カゴを持って困った表情のピンクリボンの白クマさんがいる。ここで、食材図鑑コンプリートボーナスクエスト。エプロンをつけていて、スノウという名前がついている。


『クマッ、クゥーマ!』


ルイス達を見て、助けを求める様に両手を上に上げてテクテク来る。そして、セツナに抱きついた。


「「「「か、可愛い…」」」」


4人で、同時に思わず言ってしまう。


次の瞬間、クエストが表示されて我に帰る4人。


「僕達は、この子のパートナーの救出ですね。」


ルイスの言葉に、グレンは真剣な雰囲気だ。


「私達は、この子が逃げる時に落とした素材を拾って来る事みたい。リボンと箱と包装紙とシール。」


ユンゼの言葉に、セツナはうんうんと頷く。


「グレン、速攻で終わらせましょう。おそらく、罠だと思うので。ルートを確認したら、近くなのですよね。これ、男性プレイヤーが何か起きたらカバーする前提だと思うんです。どう思いますか?」


ルイスは、考える雰囲気で言う。


「同感だ。取り敢えず、リボンと箱は一緒に行けるルートだな。そっからは、全力ダッシュからの速攻救出で最短ルートで合流だな。出し惜しみなし!」


グレンも、真剣な雰囲気である。そして、分かれ道になり全力ダッシュ。クマを《失恋の乙女》から、救い出して全力ダッシュである。手強い相手に、思わず苦戦してしまいかなり焦って合流する。


スノウは、助け出したチョッコンと抱き合う。


その可愛いらしさに、思わず癒されるが2人は戦闘中である。やはり、女性特効を持っているのかダメージが酷い。ルイスは、素早く回復をしてグレンは攻撃を受け止めて壁になってあげる。回復完了したルイスが、バフを3人にかけてここから本番だ。


苦戦したが、何とかクリア。そして、これはボーナスステージである。報酬が、たっくさぁーん!


大量の経験値に、セツナが目を丸くしている。


「最高難易度のボーナスステージだろ?寧ろ、少ない方だぜ。まあ、損はしてないけどな。」


「さあ、次に行っちゃいましょう!」


ルイスの励ます声に、元気良く返事する3人…と、頑張って右手を上げて返事する2匹。可愛い…。


全ての図鑑コンプリートで、またボーナスステージが来るがレイドだった。人数が揃い、レイド開始だが…。ルイス達以外、デバフに毒されていて苦戦。イベントの罠で、受けてしまったデバフは宝箱から稀にドロップする薬でしか癒せないからだ。


「流石に、MPが…暫く耐えてください!」


ルイスは、きつそうに呻く。周りも、迷惑をかけている自覚があるのか、申し訳ない雰囲気で頷く。


が、数人がログアウトボタンを押したのだ。


ルイスから、声にならない悲鳴が思わず溢れる。運営は、緊急でボスのステータスを調整する。


ログアウトした人には、害悪プレイをしたとしてイベント参加の制限とデスペナルティー発動させた。フィールドから、消えるのだから死んだと判定。


回復役をしながら、戦闘に入らないと行けないルイス。ボスのデータが入れ代わるまで、わずかだがラグがあるので辛そうに戦闘参加するしかないのだ。周りも協力して、負担を減らそうと全力で戦う。


そして、何とかギリギリ勝利。


来た人から順番に外に出される。遅れて入った人達は、前の人達に追いつかない様に暫く遅れたぶん待機になるのだ。ちゃんと配慮する、運営さん。


「ルイス、お疲れ様。大丈夫か?」


「幸いフィールドを出たら、ダメージも消えたので大丈夫そうです。精神的には、疲れましたけど。」


セツナは、心配そうにタオルを渡す。


「ありがとうございます。さあ、行きましょう。」


3人と2匹は、頷く。


クマさん、可愛いと笑うルイス。その笑みに、思わず釣られて同意する様に笑う3人だった。


辿り着いたのは、可愛らしいキッチン。チョッコンの案内で、ルイスとグレンは待機室に案内される。スノウに呼ばれ、慌ててキッチンにはいるセツナとユンゼ。さあ、此処からはお菓子作りの時間だ。


数時間後に、美味しそうなチョコ机に置かれる。多すぎるので、少しずつ食べる様に置いておいて、残りは分ける事に。ユンゼが、セツナにチョコの交換を申し出て。親友チョコと、キャッキャしている。


それを、チョコを食べながら微笑ましく見守るルイスとグレンであった。スノウが、自分のチョコを2人に渡して私も混ぜてとぴょんぴょんしている。


チョッコンは、チョコに夢中で気づいてない。


ルイスは、ちょんちょんとつついて我に帰るチョッコン。そして、楽しそうなスノウをみてふにゃりと嬉しそうに表情を緩める。そして、ルイス達をみるとぺこりと頭を下げる。最後の挨拶をする様に、膝に乗って感謝する様に抱きしめる。


そして、暫くしてチョッコンはスノウの手を取り、頭を下げると出口へと走って行った。ルイス達が出た時には、その姿は完全に居なくなっていた。


隠しクエスト

チョコクマの思い


報酬

チョコクマのバッチ

チョコクマのチョコ

イベント限定コンプレシピ

ラブリンクリボン

バレンタインポーションレシピセット

(※イベント限定デバフ解除薬のレシピと素材)


…その他は、詳細で確認出来ます。


「さて、そろそろ帰りましょうか。」


ルイスの言葉に、セツナとユンゼは頷く。2人とも所属が違うので、ここでお別れになってしまう。


「チョコ、とても美味しかったですよ。リアルもこちらのも、良い思い出になりました。」


ルイスの言葉に、セツナは赤面して逃げてしまう。


「そ、そう…。ありがとう。じゃあ、急ぐから!」


「え、あ…。ありゃ、失敗ですかね。うーん…、お菓子の感想はしっかり言うべきとアドバイスを貰ったのですが。もしや、何か失敗しました?」


ルイスは、混乱する様に考え込む。


「この、ド天然…。」


「確かにね。」


グレンの言葉に、愉快そうに笑うユンゼ。暫くしてから、正気に戻ったルイスは深いため息を吐き出して歩き出す。グレンも、ユンゼと挨拶して歩く。


「乙女心とは、難しいものですね。」


落ち込んだ雰囲気で、そう呟くルイス。


「それは、分かる。俺も、いまだに分からない事だらけだ。だから、気にしなくて良いと思うぞ。」


グレンの言葉に、ルイスは少しだけ苦笑した。

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