第379話 ハッピーバレンタイン?
結局、ゲームワールドクラッシャーは解散。技術者の一部は、引き抜きでゲーム会社に。その他は、警察に捕まったり裁判沙汰になったり。最終的に、路頭に迷うことになった。悪評のせいで、就職すらもままならないそうだ。こうして、平和が戻った。
そして、平和な時間が過ぎて行きバレンタイン。
雪音は、放課後にチョコを持ってドキドキ待機。今年で3年なので、気持ちを伝えないと一生後悔すると思ったからだ。深呼吸して、瑠衣が居るのを確認してドキドキしながら近づく。言わなきゃと思う。
「瑠衣君、バレンタインイベント一緒にやってくれないかしら。その、なかなか決まらなくて…。」
すると、絵の下書きをしていた瑠衣は頷く。
「いいよ。なら、噴水広場で待ち合わせね。」
瑠衣は、誰も居ないし笑顔で言う。
「それと、瑠衣君…」
「ん?」
黙り込む雪音に、瑠衣は天然な雰囲気でキョトンとした表情である。勇気を出して、言葉にする。
「私は、貴方の事が大好きです!付き合ってください!そ、その…返事は今じゃなくて良いわ。その、考えといてくれないかしら。それだけだから!」
そう言って、全力ダッシュで教室を出て行った。
「へ?」
一瞬だけ遅れて、意味を理解して赤面する瑠衣。そして、チョコを大切に鞄に入れる。これは、集中は無理そうだと苦笑して帰る準備をするのだった。
バレンタイン特別フィールドにて…
セツナは、減りすぎた耐久値を治すために急いでいた。しかし、そこでパートナー探し中のプレイヤーに捕まってしまう。ユンゼが、助けに入るが一人ではどうにも出来ず。誰かが通報したのか、蒼夜と鬼崎が深いため息を吐き出して現れるのだった。
「蒼夜さん、早く決着つけて!」
ユンゼは、チャットを見てから慌てた雰囲気。
「それは、分かっているが…。」
「違う!このままだと、不味いんです!」
ユンゼの慌て様に、プレイヤー達の視線が集まる。
「私の彼氏と、彼女の彼氏が向かってるんです!」
すると、蒼夜は素早く理解する。ユンゼの彼氏が、グレンなのは有名だ。そして、グレンと一緒に行動する人物はバレンタインでは少ない…。
「よし、お前らイベント参加禁止な。それと、壊した装備の弁償と慰謝料はしっかり払えよ?じゃないと、恐ろしくてこれ以上は言えん事になるぞ。」
ルイスとグレンを、目視して遠い目で言う。
「はぁ?何で、俺達が払うんだよ!だいたい、そんな装備を来てるんだ値段も大した事ないんだろ?レベルも低いし、彼氏だって雑魚に決まってる!だから、変わってあげようと思っただけじゃんか!」
「あ、どうも雑魚でーす!」
「呼びました?雑魚ですよ!」
次の瞬間、土下座する一部のプレイヤー。
「馬鹿たれ!最強コンビじゃねーかよ!」
動揺する、ウザ絡みプレイヤー達。
「ユンゼ、遅くなってすまん。怪我はないか?」
グレンは、心配そうな雰囲気で言う。
「セツナさん、大丈夫ですか?」
「ごめんなさい…。装備が壊れて、今回のバレンタインイベントは参加が出来ない。ごめんなさい。」
悔しそうに、泣きながら震えた声で言う。
「取り敢えず、お茶とお菓子を出すので落ち着くまで待ってください。ユンゼさん、少し頼みます。」
優しく落ち着いた雰囲気で、ハンカチを渡して落ち着く声音でふわりと微笑む。そして、ユンゼにセツナを頼むとゆっくり歩き出す。グレンも、歩く。
「ええ、任せてルイスさん。」
後ろから、ユンゼの力強い声音がする。
「それで、僕の彼女を泣かせたクズは誰ですか?」
「俺の彼女に、手を出したゴミはどいつだ?」
先程の甘い優しさは、綺麗さっぱり消え失せて殺伐とした冷たい微笑みである。グレンも、獰猛な笑みで威圧する様なギラギラした雰囲気を纏っている。
「僕達を雑魚扱いですか。さぞ、お強いんでしょうね。では、全力でぶん殴っても大丈夫ですね☆」
「いいんじゃね、自信がある様だしな。」
ルイスは、思い出した様に振り向く。
「お2人とも、装備の事は気にしなくて良いですからね?予定通り、バレンタインイベントします。」
グレンも、うんうんと頷いている。
「でっ、でも…」
困惑して、ルイス達を見るセツナ達。
「こんなくだらない事で、初デートを邪魔されるのはとても癪なのです。本当に、腹が立つ。」
「まったくだぜ。」
ルイスは、不機嫌そうに言えばため息混じりに同意するグレン。そして、課金アイテムで昨日発売されたギフトマジックの1つ《変身》とミラーコーデを取り出す。これには、運営もびっくりする。
ギフトマジック《変身》 780円
自分が持っている装備を、設定して相手に送る事が出来る。相手に届くと、自動的に装備される。相手が受け取るボタンを押すと相手の物になる。際どい装備や、相手を陥れる装備は送れない。自動装備事に、相手が設定したエフェクトが発動する。
自分に使う事も出来て、魔法少女やスーパーヒーローの変身のように使う事も可能である。
しかも、消耗品では無いのでこのお値段である。
ミラーコーデ 550円
最大、500のコーディネートを保存できる衣装箱の上位アイテム。お気に入りを、5個設定できて検索機能もあり装備したいコーデを押すだけで装備変更が出来る。いちいち、ポチポチと装備を変える手間が省ける。ここで、コーディネートした装備をギフトマジックに登録する事も可能である。また、普通に鏡としても使えるので有能アイテムである。
「「ギフトマジック!」」
紫の薔薇と星のエフェクトが、ユンゼを包みバレンタイン魔女のエプロンドレスコーデが装備される。
赤い薔薇とハートのエフェクトが、セツナを包みバレンタイン聖女のエプロンドレスアーマーコーデが装備される。ちなみに、エプロンは取り外し可能で装備としてもかなりの機能を持ち合わせている。
鏡で、装備を確認する女子2人。
「か、可愛い…。」
「まったく、ぶっ飛んでるわね。」
どちらも、バレンタインイベント前夜祭の最高難易度クエスト報酬やボスの素材が必要な装備である。そして、シャルムのハンドメイドという事で更に強化されている。かなり、価値のある装備である。
「だって、可愛い子は着飾りたいですから。」
「妥協はしない。最高な物を、用意したぜ!」
クスクスと、穏やかに笑うルイスとはっちゃけた雰囲気で明るく笑うグレン。ユンゼは、やれやれと笑いセツナは可愛いと言われて赤面するのだった。
「これで、大丈夫ですよね?」
「予定通り、イベント行こう!」
ルイス達の言葉に、嬉しそうに笑うのだった。
「その前に、お片付けが先ですけど。」
「だよな。」
すると、名も無き同盟や知り合い同盟が集まる。
「あー…、激怒中に申し訳ないですが。暫くイベント参加禁止にするので、怒りを収めてくれないでしょうか?運営として、そういう争いは困ります。」
鬼崎は、困った雰囲気で言う。
「……仕方ありませんか。」
ルイスは、感情を押し込んでそう言う。
「ちゃんと、対応してくれよな!」
グレンも、不服そうだがため息を吐き出して言う。
「さて、そろそろ行きましょうか。」
「で、でも…こんな良い装備は貰えない。」
ユンゼは、いつもの事なので受け入れている。
「なるほど、取り敢えずパートナー申請します。」
セツナは、パートナー申請を確認してOKを押す。しかし、重なって開いていた装備の受け取りボタンも押してしまう。実は、この申請は綺麗にOKボタンが重なる様になっており、OKを押すと下の受け取りボタンまで押されてしまうのである。
「あ…」
「ふふっ、プレゼント成功です。」
ルイスの言葉に、『何してくれるのよ。』とポカポカ殴るセツナ。どう見ても、イチャコラしている様にしか見えない。運営は、ホッとして撤退した。
そして、のんびり移動するのだった。
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