第378話 ルール何でもあり!ただし…

ルイスは、いつも通りログインしていた。全員が、戦闘準備で慌ただしい中に、無言で目を閉じて考えている。ランコルは、紅茶を出して何処かへ行く。


「ルールは、簡単。何でも有りだ。勝利条件は、敵のリーダーを倒す事。ただし…、ゲームの利用規約に引っ掛かる事は駄目だ。まあ、俺達からすれば別にやっても良いけどって感じだが。運営が、厳しく監視してるしせいぜい覚悟してからすると良い。」


トキヤは、軽い雰囲気で気負う様子もなくケラケラ笑っている。相手に緊張を与えない、正々堂々と戦おうとする純粋なプレイヤーの鏡な雰囲気である。


まあ、そう見えるだけであるのだが。


「OK!OK!楽しもうじゃねーか!」


こちらも、煽られてる事に気づくもフレンドリーに笑っている。お互い、笑顔で沈黙してしまう。


「それでは、これより運営がしきりますルール何でもありの総力戦を開始します。勝手ながら、制限時間をつけさせて貰います。3時間で、相手のリーダーを倒してください。では、総力戦……開始!」


トキヤは、落ち着いた雰囲気でマッキーと指示を出している。かなりの、防衛戦だ。現在ルイスはログアウトしている。しかし、マッキーが配信しているのでリアルで応援している。トキヤは、苦笑する。


「ルイス、他人事じゃないんだぞ?」


すると、コメント欄にルイスが居る事に騒めく視聴者達。素知らぬ振りして、同調コメントを打つルイスに笑うマッキー。ルーカスも、配信を確認して思わずプルプル震える。ちなみに、配信中である。


「まあ、お前を信じてるからな?」


笑いながらも、何とか言葉を出すマッキー。


「出来れば、残り1時間くらいは粘りたいっす。」


気合いを入れて、大鎌を構えるルーカス。


「さぁーて、早速だがチート使ってんなぁ…」


トキヤは、深いため息を吐き出すと悩む振り。相手達が、ニヤニヤと笑っている。けれど忘れてないだろうか?これは、何でもありだと言う事を。


「運営さん、よろしくお願いします。」


トキヤが、ふざけた雰囲気で言う。


「は?何でも有りがルールだろうが!」


「チートは、利用規約違反だぞ。」


運営は、素早くチートを解除する。トキヤは、防戦一方で不屈の鉄壁を築いている。1時間経過し、海外メンバーが合流。更に、固くなる防御。


さて、残り1時間である。


「さて、巻き返すか…」


全員が、苦戦しながらも押し返して行く。しかし、負けそうになるとサーバー攻撃を開始する。


所謂、外からの攻撃である。


「きつい…。」


「トキヤ!」


マッキーは、驚いて思わず叫ぶ。


次の瞬間、いきなり敵が現れてトキヤが襲われる。透明チートと瞬間移動チートである。トキヤは、思わず呻くが…。次の瞬間に、ニヤリと笑う。


トキヤから、リーダーの証が消える。


リーダー以外は、死んでも直ぐに生き返る。全員が驚いて、トキヤの隣に立つルイスを見る。


「トキヤさん、ありがとうございました。さて、残り55分。楽しんで、勝ちに行きましょうか。」


ルイスが言うと、味方からハイテンションの歓声が聞こえる。ルイスは、敵を見てから明るく微笑む。


次の瞬間、敵から寝返り希望が多数現れる。


「駄目ですよ。君達、散々邪魔しておいて許されるとでも?これでも僕、とても激怒しているんですからね。1週間も、凍結状態だったんですから。」


潜り込んだ味方が、撤退済みなのは確認済みだ。つまり、今ここで敵対している奴らは雇われとゲームワールドクラッシャーの仲間であるという事。


「何故、僕が来る前に寝返らなかったのやら。」


それで、敵は悟ってしまう。


今まで、手加減されていたのだと。本当は、簡単に潰せるけど遊ばれていただけなのだと。ルイスが来るまでが、最後の見逃しチャンスだったのだと。


「さあ、決着をつけましょうか?」


ルイスは、聖域を展開する。


「お前、ふざけんなぁ!邪魔しやがって!」


「いやはや、同感ですね。僕の平穏を壊してくださって。僕も、邪魔だと思ってたんですよ。なら、お互い様ですね。じゃあ、潰し合いましょうか。」


短刀を抜いて、冷たい微笑みを浮かべる。


「ルイスが何か怖い!」


グレンの言葉に、思わず仲間は笑ってしまう。


「勝ったら、お前の個人情報を貰うからな!」


「時間稼ぎに、付き合う気は無いのですよ。総員戦闘準備、手加減は要りません。全力でどうぞ!」


ルイスは、無視して突撃させる。


「くそっ、全部読まれてやがる…。」


「チートが、使えない!どうなってやがる!」


すると、マッキーは呆れた雰囲気である。


「おい、ルイスが来た途端に本気出すなよ赤猫。」


その言葉に、仲間からまた笑う声がする。


「いや、ワンチャン観察対象のためにリゼアか?」


トキヤは、考える雰囲気である。一応、ここまでの流れは打ち合わせ通りである。トキヤの言葉に、ルイスは寒気を感じて思わず身を震わせる。


「トキヤさん、やめてください。」


「これは、リゼアだな。」


うんうんと、頷くトキヤ。


「トキヤさん!?」


ルイスは、やめてくれと悲鳴の様に名前を呼ぶ。いつもの雰囲気に、嬉しくなってはしゃぎだす同盟メンバー。周りも、雰囲気にのまれて楽しくなる。


「ルイス、回復ください。」


マッキーの言葉に、ハッとして回復をかける。


「いけません、集中しなければ。まあ、多少ミスしても皆さんが取り戻してくれますよね。」


ルイスは、少しお茶目に笑って謝ってから言う。


「おうおう、任せろ!」


ガルムが、豪快に笑う。


「おっけー!やってやる!」


セロンも、笑いながら剣を振るう。


「お姉さんに、任せなさい!」


シャルムは、ウィンクして言う。


仲間達も、任せろという雰囲気が伝わってくる。彼らは今、とてもとても楽しいのだ。楽しい日常を取り戻すため?ルイスの力になる為?違う違う、彼らはゲーマーなのだから戦う理由はこうでなければ。


楽しいから!


建前や戯言は、ひとまず置いておいて楽しむべきだろう。ルイスは、理解してるからこそ盛り上げる。


そうすれば、もっと心強い味方になるからだ。


使命感より、大切なものを忘れない様に。尚且つ、勝って喜びを分かち合える様に。


これは、ゲームなのだから。


「では、今から皆さん大好き無敵のお時間です。」


ルイスは、ドヤ顔でいうと『待ってました!』とか『はよやれ!』とか笑いながら言っている。


「そんな、急がさないでくださいな。」


とか言いつつ、無敵発動。一気に、ノリと勢いとこの熱いテンションを利用して畳み掛ける。


そんな熱量に負け、勝敗は簡単につくのだった。

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