第352話 息抜きにクエストを…5

ルイス達は、森を歩く。ルイスは、追加されたクエストを見て苦笑する。そして、疲れた雰囲気だ。


「やはり、そう簡単には逃してはくれませんか。」


「まあ、そうだろうな。」


グレンも、頷く。ガサガサ音がして、傷ついた精霊が現れる。ルイスは、薬師にジョブチェンジする。


「ありがとう、親切な人の子達。」


クエスト12 精霊護衛


「仕方ないですね、取り敢えず怪我の理由を…」


ルイスが話している途中、茂みの中から魔物が。


「た、助けて!」


精霊は、悲鳴をあげて怯える。


「シャドーウォーカーか?」


落ち着いて、暢気に呟くグレン。


「後ろのは、シャドーチェイサーだな。」


トモも、キョトンと頷く。すると、周りからもゾロゾロ出てくる。青ざめるルイスと、叫ぶハルト。


「この数は、気持ち悪るい!」


「ていうか、何体居るんだよ!」


ユウユウは、武器を構える。ルイスは、素早く精霊を抱えると走り出す。グレンとトモが、それにいち早く気づいて動く。ハルトとユウユウも、後に続いて走り出した。囲まれるのは、かなりまずい。


「取り敢えず、森を抜けましょう。シャドー系は、日の光を嫌います。ここは、茂っていてじめじめした森のせいか、彼らのバフ領域となってます。」


ルイスは、素早く森を抜けて陽だまりの休憩所に入る。ここは、バルモアという精霊獣が支配する聖域である。ちなみに、バルモアはゲームオリジナルのキャラクター。プレイヤーに、力を授ける獣だ。


最近、追加されていてルイス達も貰っている。


「バルモア、お邪魔しますよ。」


『おおっ、久しいなルイスよ。して、何用か?』


休ませていた体を起こし、優しい声音で問う。バルモアは、大きな牡鹿で森の案内人でもある。


「隣の森で、シャドー系の魔物が大量に来て。」


ルイスが、困った雰囲気で笑う。


『ふむ、異常には気がついていた。しかし、われの領域に入らん限りは何も出来ん。すまないが。』


「大丈夫です。少しだけ、休憩させてください。」


ルイスの言葉に、バルモアは優しく頷く。


「取り敢えず、何で狙われてるんだ?」


「私達が、林檎を奪ったから。」


ここで、ストーリーが流れる。


女神ヘラ達が、この世界に来たイベント。その、被害者達の話である。とても、悲しい物語。


フレメル辺境伯は、女神進行で増えた魔物の影響にて、途轍もない被害に遭っていた。辺境伯は、自らも出陣し魔物を倒していたのだが。林檎が、落ちる事に気がついたのである。これが、悲劇の始まり。


当時は、魔物が畑を食い荒らし食糧困難で、肉ばかりの生活を強いられていた。当然、栄養バランスで体調を崩す人が続出してしまったのだ。


辺境伯は、皆んなに林檎を分け与えた。勿論、食べなかった人もいる。魔物から、出たものだから。


すると、皆んなが元気になったのだ。見た感じ、話した感じではだが。彼は、奥さんと息子にも食べさせた。早く、元気になって欲しかったから。


しかし、奥さんは気づいてしまった。


これは、食べ続けてはいけないものだと。そして、息子には食べられる野花や草を食べさせた。


そして、全ての戦いが終わりヘラ達は帰った。


林檎が出なくなったのだ。しかし、倉庫には腐れる事もない林檎の在庫が。辺境伯は、ひたすら林檎を食べさ続けた。それを見ていた、8歳の息子は母親からあれは食べては駄目だと言われる。


そして、林檎に執着する辺境伯。


甘えたいのに、甘えられない息子はこっそりと林檎を手に取り森へ捨てに行った。これで、自分の事を見てくれる。相手してくれると、思っていた。


しかし、辺境伯は怒りに…息子を殺してしまった。


奥さんは、身の危険を感じ息子を守れなかった悔しさを抱えて、エルフの国に向かったのだった。


夫を正気に戻す、薬を探して…


それから、街の人たちは林檎の影響でシャドー系の魔物となり果ててしまった。精霊達は、友を正気に戻すために命がけで林檎を奪い逃げる。


しかし、その時には悪魔が辺境伯についていた。


ただの悪魔なら、精霊達の力を持ってすれば負けなしなのだが…相手が悪すぎた。大罪の悪魔…。


その中で2番目に偉い暴食の悪魔だったのだ。


結局は、暴食の悪魔に食われかつての友には殺されてしまった。そんな、悲しみの化身が少しずつ成長していた。暴食の悪魔は、楽しそうに笑う。


こうして、悲劇は続いていった。


そんなある日、林檎を食べる事を断った民の生き残りが、プレイヤーに手紙をたくす。


どうか、もう辺境伯を解放してくれと。

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