第351話 息抜きにクエストを…4

さて、招待状の貴族。フレメル辺境伯爵は、実は余り良い噂のない貴族で有名なのですよね。


黄金林檎を奪え…


「ルイス?」


「この依頼、何が何でも断らなくては…」


ルイスが言えば、4人はキョトンとする。すると、悲しそうな泣きながらの声が響く。ちなみに、全員に聞こえてます。ルイスは、真剣な雰囲気になる。


『それはそれは、救いようもない悲劇。もう、後戻りは出来ない運命。かのものは、食べてしまったから。傷つけてしまったから。奪ってしまったから。どうか、これ以上の罪を彼に重ねさせないで。』


その後に、複数の悲鳴が聞こえて声は消えた。


『かの者は、私達を裏切った。もう、人には戻れない。昔は、あんなにも優しく優秀な精霊魔術師であったのに。誓約は破られた、あの日の陽だまりにもう彼もその友人も、二度と戻る事は許されない。』


精霊王の声で、そう告げられる。


「なるほど、今までのはウォーミングアップって事かよ。ここから、本番が始まるらしい。」


グレンは、ニヤリと笑う。


「おそらく、かなりの胸糞展開が待ってるな。」


トモは、苦笑してルイスを見る。


「確実に。取り敢えず、依頼を断りましょう。」


ルイスは、言い切った言葉に身構える4人。お屋敷に行くと、執事の人に家主の部屋に案内される。


「やあ、手紙を見たよ。実は、お願いがある。」


「待ってください、僕達は手紙を渡しにきただけ。貴方のお願いを、受ける気は無いのですよ。」


ルイスは、真剣な雰囲気で遮りピシャリと跳ね除ける様な言い方をする。貴族の男は、考える仕草をしている。そして、優しく微笑みと言葉をいう。


なお、その微笑みを見てルイスは警戒心を上げる。


「まあ、話だけでも聞いてくれないか?」


「聞いて、強制されるとかならお断りします。」


無言の時間と視線での攻防戦。ルイスは、作った笑顔で本心を隠して相手を視線で射抜く。自分は、お前の本心が見えているんだぞ。やめとけ?と。


「なるほど、これは手強い。いやまあ、強制はしないよ。それにしても、冷静かつ策士的だな。」


「それは、僕がそういう役割だからです。僕は、友を仲間を守る為なら今ある全てを使って守り切ります。だって、彼らもそう思ってくれてますから。」


ルイスは、作り笑いを消して幸せそう笑う。後ろで4人が、嬉しそうに同意する様に頷く。すると、貴族の男に動揺が見える。しかし、一瞬だけだ。


けれど、ルイスにはその一瞬だけで充分である。


「貴方にも、居るはずでしょ?大切なお友達…」


「やめろ!それ以上、何も言うな!」


4人は、ビクッと無言で驚く。


「後ろの棚、飾られてるのは精霊の羽ですね。いったい、何人の精霊を殺したんです?」


拒絶をすり抜け、釘を打ち付ける様な言葉。


「違う!違うんだ!もう、良い。帰ってくれ。」


「まだ、貴方の話は聞いてませんが?」


ルイスは、小悪魔な微笑みで追撃する。そこで、男は落ち着く。ちなみに、4人は真剣に見守る。


「そう…だったな…。」


ルイスは、ニコニコしている。


「実は、屋敷で保存していた林檎を奪われてな。ここら辺の精霊は、最近は悪戯ばかりしてな。」


息を切らしながら、一気に説明する貴族の男。


「だから、林檎を奪い返して欲しい。」


「お断りします。」


ルイスが言うと、貴族の男は驚いて固まる。


「だって、帰って欲しいと言ったのは貴方です。僕は、興味本位で聞いただけですし。話だけは、ちゃんと聞きましたよ?だから、帰ります。」


「君、本当に良い性格してるよね。」


疲れた雰囲気で、机に突っ伏す貴族の男。


「褒め言葉と、受け取っておきます。じゃあ、帰りましょうか。では、お邪魔しました。」


ルイスは、4人を連れて外に出ててしまった。暫くして、男の隣に青年が現れる。そして、青年は無言で笑うと貴族の男に林檎を渡した。


「はい、どんどん食べてね。」


「おおっ、林檎!不死林檎!」


そう言うと、貴族の男は狂った笑みで林檎を食べ始める。それは、化け物の様な食らいつきだった。


「なるほど、あれがクリフォト様を満たした…。これは、油断したら僕もやばそうだなぁ。面倒…」


面倒という割に、楽しそうな雰囲気の青年。少しだけ考えて、貴族の男を見てからため息をつく。


「彼には、興味あるけどこれはもう壊れてる。一応は、悪魔らしい事をしないと怒られるからね。お仕事で来たつもりだけど、彼は思ったより黒と白が均衡してるね。天秤を傾けるのは、まず無理だね。うんうん、いいと思うよ。素晴らしい!ふふふっ。」


そう、楽しそうに笑う。


「楽しそうだな、グルトヌリー。」


「あれ、パレス。」


驚いた雰囲気で、パレスを見る青年。


「珍しい、怠惰を司る君が来るなんて。」


「今回は、ここで引け。クリフォト様の命令だ。」


すると、苦笑するグルトヌリー。


「やっぱり、彼に手を出すのはダメなんだ。」


すると、パレスは真剣な雰囲気になる。


「少なくとも、今は駄目だ。クリフォト様が、虚無になるまで手を出すのは危険過ぎる。」


すると、グルトヌリーは無言で頷く。


「まあ、彼は壊れちゃったし。後始末は、彼らに任せちゃおうかな。まさか、此処で終わるなんて思ってないよね。頑張ってね、プレイヤー諸君。」


心から楽しげに、笑いをニヤリと浮かべて消えた。パレスは、思わず鼻で笑い無言で姿を消した。

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