第331話 帰宅
遊び尽くした瑠衣達は、昼に空港へ向かう。そしてから、帰るための空の旅である。
空港では、春都と神崎の親達が待っていた。
親に歩き出した2人を、無言で優しく見送り瑠衣も時間を確認して、空港の出口へ歩き出す。瑠衣は、気づいていなかったが、ちゃんと母親は来ていたのだ。時矢達は、苦笑して瑠衣を引き止める。
「瑠衣、お迎え来てるぞ。」
「え?」
母親は、気まずそうな雰囲気である。
「あれ、お仕事では?」
瑠衣は、キョトンとして首を傾げる。
「そ、その…」
「言えば良いじゃん、サボりましたって。」
大河が、母親の後ろからニヤニヤと言う。
「へ?仕事命なのに、大丈夫なの…」
真顔で心配する瑠衣に、何かが突き刺さった雰囲気の母親。瑠衣は、至って真面目に心配している。あの仕事人間が、仕事を休んでまで迎えに来るとは、本心から有り得ないと思っていたからだ。
「現実、こんだけ信用ないんだぞ…母親なのに。」
大河が小さく言えば、母親は苦笑して頷く。瑠衣はキョトンとする。母親は、拳を握ると覚悟を決めた雰囲気である。そして、小さな声ではっきりと…
「仕事、減らそうかしら。」
「まったく、安請け合いし過ぎなんだよ。頼まれたら、断れなくて無理して頑張って、体調を崩しても黙って。部屋に、引きこもってたと思ったら。」
大河は、ゆっくりと瑠衣を見てため息。
「本当、そういう所は母親に似てるよな瑠衣も。」
「そう?僕は、無理なら無理と言うけど。」
瑠衣は、キョトンと呟く。
「おう、出来る限りの無茶振りをした後にな。」
大河は、素晴らしい笑顔である。瑠衣は、無言で視線を逸らす。神崎達は、既に帰った。大人3人は、楽しそうにやり取りを見ている。時矢からすれば、炎天では馴染みのある見慣れた光景。牧田からすれば、瑠衣が勝てない雰囲気に笑う。アーサーは、珍しい瑠衣の姿に少しだけ驚きつつ見ている。
「大河、そこまでにしとけ。瑠衣が、もたん。」
時矢は、思わず笑いながら言う。
「仕方ない、ここ迄にするか。」
大河は、深いため息を吐き出して言う。少しだけ、瑠衣と母親の距離が近づく。しかし、瑠衣の警戒心と不信感は綺麗には消えてはくれないのだった。
ログイン…
すると、プロメア達がやってくる。
「パパ、お帰りなさい!」
「マスター、お帰り。」
ルイスは、座ってゆっくり子供達の話に耳を傾けてみる。相談や悩みや憤り、悲しみや楽しみを時に楽しそうに時に真剣に語る子供達。ルイスは、しっかり聞いた後に頷いてアドバイスやコメントする。
暫くして、5人は納品して来ると出掛けた。
ルイスは、グレンから連絡が来ている事に気づく。どうやら、きょうはログインが出来ないそう。ルイスは、ゆっくり家族団欒を楽しんでと送る。
ルイスは、ソファーにゴロンと倒れる。
はしたないが、子供達の前では絶対に見せない姿なので、住民メンバーはやれやれと放置する。
ログインして来た、トキヤに声をかけられる。すると、素早く起き上がり身嗜みを整えて座り直すルイス。そのタイミングで、キリアがお茶菓子をランコルが紅茶を置く。ルイスは、嬉しそうに礼を言う。
「それで、お前はログインしてて良いのか?」
「はい。実は、あの後に親が寝込んでしまい。暫くは、安静にしないとダメみたいです。暫く寝るそうですし、ログインして来たという訳ですね。」
ルイスは、落ち着いた雰囲気で微笑む。
「そっか。そうだ、次のイベントはどうする。」
トキヤは、のんびりと聞く。
「同盟推奨なので、かなりの高ランクプレイヤー向けなのでしょう。初心者は勿論、中級や上級者でも厳しいと思われます。更にいやらしいのが、初心者を編成に入れると得をするって事です。1つのクランに、1人だけ初心者枠がある様です。ふむ…」
ルイスは、思い出す雰囲気で紅茶を持ちながら、考える雰囲気で紅茶を一口飲む。そして、紅茶の美味しさに笑顔。そして、トキヤを見てみる。
「弱体化されたし、余り美味しいとは思えんがな。追加された、レイドボス特攻と種族キラーがどんなもんかだな。それ次第では、ゴミ武器では無くなるし。けど、条件が厳しいし良い武器だと予想。」
報酬について、トキヤは考える雰囲気で言う。ルーカスから、今日はログインが出来ないと連絡。どうやら、約束の動画を編集したいみたいです。
「確かに。ですが、やるなら初心者を勧誘する必要が有ります。既に、掲示板では入れてくださいコールが鳴り止まないのだとか。僕も、囲まれるのが嫌なので、冒険者ギルドにも行けないですね。」
ルイスは、ため息を吐き出す。
「ルイス、好きな人がまだ初心者だよな。」
「!?」
ルイスは、吹き出しそうなのを堪えて、ゆっくりと口の中の紅茶を飲み込んだ。そして、トキヤを見て赤面した表情で固まる。トキヤは、ニヤニヤ。
「鎌かけたのに、こんな簡単に引っ掛かるとは。」
「え?え?あっ…」
ルイスは、恥ずかしさにソファーに倒れてしまう。
「若いな、羨ましい限りだ。」
「トキヤさん、酷いのですよ…」
いじけた雰囲気で、ルイスが座り直せばトキヤは笑いながら謝るのだった。それから、プロメア達が帰って来るまで、ルイスの機嫌は直らないのだった。
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