第327話 お泊まり

瑠衣は、ログアウトした後に急いで階段を降りる。


「兄さん、頼み事が有るのですが。」


申し訳ない雰囲気で、お願いのジェスチャー。


「ん?まあ、良いけど。」


大河は、キョトンとして頷く。


「母さんに、僕が感謝してたって伝えてください。兄さんが、教えた時間に電話しても出ないので。」


瑠衣は、苦笑して出掛ける準備を始める。


「瑠衣、すまんな。だけど、勘違いしないでくれ。ちゃんと、瑠衣の事も両親ともに大好きだから。その、ちゃんと向き合えてないだけだし。」


大河は、真剣な雰囲気で言う。


「分かってます。では、行って来ますね。」


瑠衣は、疑心を隠して出掛けて行った。




さてと、ここで時矢さんと待ち合わせです。ちなみに、隣で神崎君と春都君がふざけ合ってます。


「お前ら、こんばんは。」


車を止めて、手を振る時矢に笑う瑠衣達。


「あ、時矢さん。こんばんは。」


瑠衣は、ニコニコと駆け寄る。2人も、歩き出す。


「じゃあ、まっちゃんの家に行くか。」


車の中で、更新内容と実装状況について、また性能やメリットとデメリットについて話す。


「あの機能、要らねーよな。」


神崎は、苦笑すれば瑠衣はうんうんと頷く。


「絶対、意地悪だろ!あれ、罠すぎる…」


春都も、被害にあったのか感情がこもる。時矢は、それを聞いて笑う。ちゃんと、下調べすれば回避できるのだ。現に、ルイスとトキヤは回避済み。


なので、瑠衣は最新情報サイトを教える。


炎天神楽時代から、お世話になっている検証班のサイトで、炎天神楽も情報提供していた。


言わば、協力関係にある別クランのサイトである。


ちなみに、それが烏丸さんなのは誰もが知っているが、言わないお約束である。忍者で、検証班のお兄さんは内緒が大好きなのである。皆んなも、ノリが良く嬉しそうな烏丸を、昔は微笑ましく見ていた。


「なるほど、これ良いな。」


「あ、でも他の人にはこのサイトな事は…」


瑠衣が言うと、2人は了解と頷く。そして、牧田の家にお邪魔する事に。瑠衣は、キッチンを借りて夕ご飯を作る。アーサーと牧田は、コラボ配信をしている。神崎達は、それを見学していた。


時矢は、無言でパソコンで仕事をしている。


「すまんな、友達が来てるから物音しても気にしないでくれ。それじゃあ、待たせたな…マッキーさんだぜ!今回は、コラボ配信って事で自己紹介。」


「どうも、ルーカスことアーサーです。」


いつもの口調を封印して、優しく笑うアーサー。


「ん?料理の音がする、彼女さんですか…。うん、違うな。俺に、彼女はおらん!断言する。」


コメントを読みながら、素っ気なく言う牧田。しかしながら、疑うコメントが流れていく。


トキヤは、ため息をついてから暢気に言う。


「友達なんだから、言えば良いのに。どうせ、顔見せするわけじゃないし。リスナーも、ガチ恋とか多いだろ?ここには、男しか居ないって言えば。」


それを、マイクが拾ったのか謝罪の嵐。


「トキヤ、お前なぁ…。絶対、見せねーよ。」


顔見たいのコメントに、強い声で返しながら言う。


「ここには、breezeメンバーでお泊まりに来てるっす。料理してるのは、ルイスの兄貴っす。グレン達は、配信見学中っすね。顔見せは、無理っす。もしも、顔バレしたら平凡な日常が送れなくなるっす。そんな事で、大切な学生時代を潰すのは、大人として配信者として許せないっすからね。」


アーサーは、口調を戻して真剣に言う。


「だから、理解してくれ。じゃないと、これから家に友達として呼べなくなってしまう。」


すると、理解のコメントが流れる。牧田は、ホッとした雰囲気。アーサーも、嬉しそうである。


「よし、じゃあ今回のアプデと新機能について、皆んなで語って行こうぜ。動画を見ていくぞ…」


牧田とアーサーの雑談は、楽しそうに終わった。


「え?ルイスの料理を、写して欲しい?」


トキヤは、振り向くと瑠衣はキョトンとする。ちょうど、配信も終わると思い呼びに来たのだ。


「えっと、ミュートにして聞いても…」


「別に、構わないのですよ。牧田さん、一時的に別の部屋に居るので、終わったら声かけてください。グレン達も、撤退しますよ。トキヤさんもです。」


ミュートする前に、わざとルイスの声で言う。ちなみに、ルイスの声は瑠衣の声より少し高い。基本的に、ありのままで気持ちがたかぶっているから。


瑠衣の予想通り、まだ疑っていた人達も納得したコメントをしていた。トキヤは、やれやれと苦笑。


「すまんな、俺の為に…」


「ルイスの兄貴…。まあグレンとの会話も、マイク拾ってたっすし。取り敢えず、アーカイブは残さない形にするっす。牧田も、そうするべきっす。」


そして、ご飯を移して戻って来て配信を切った。


「切り抜きは、出来ない様にしとけ。」


トキヤは、素っ気なく言う。


「録画とか、されてる可能性もあるし、暫く所属事務所に動画サイトを監視させとく。配信会社にも、手回しするかな。悪意あるのは、徹底的にやる。」


「俺も、手伝うっす。」


そう言うと、素早く動くアーサーと牧田。


ちなみに、動画投稿サイトが協力してくれたので、世に出回る事は無かった。逆に、アーカイブを消された事で害悪リスナーへのヘイトが高まった。


常識を問われ、糾弾されてそういう人は消えた。


それを知るのは、大人組だけである。まあ、瑠衣はいつもキャラを変えているので、余り気にしていなかったが。神崎達に、話す暇なく部屋から追い出した立ち回りに大人組は拍手するのだった。


その後、ご飯を食べてお風呂に入りねるのだった。

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